
2023.12.28
【竹田クニ】業務の分解とDX - アンバンドル→リバンドルでCX・EXを高める
竹田クニのインサイト8月に当協会のビアバッシュイベントで取り上げた「アンバンドル化」 飲食店の業務を一旦バラバラに分解(アンバンドル)して、顧客価値、従業員価値の両面から精査し、再構築(リバンドル)することを、接客業務の人気コンサルタント遠山氏と意見交換を行いました。

「アンバンドル化」とは何か?
アンバンドル…とは、切り離す、分解する、バラす、という意味。 業務のアンバンドル化というのは、今現在行われている業務を、分解して俯瞰してみる…という考え方になります。 人材不足・人件費高騰に対して、セルフオーダーや順番待ちシステム、キャッシュレス…既に多くの飲食店で活用が進んでいますが、業務を機械(テクノロジー)で「代替」するのみでは、根本的課題解決にならない…という場合も多いのではと考えています。
タブレットオーダーで客単価、顧客満足がダウンした焼肉店のケース
経緯は以下の通り。
全席(約60席うち個室3室12席)をタブレットオーダーに切り替え
スタッフの意識が低下
・客席への注意力が下がり、料理を運ぶことが仕事に
・顧客との会話が減少
・おすすめ力低下
例)〆の冷麺1人前を3名でシェアできるようお持ちしましょうか?客単価が低下、顧客満足度が低下
という流れでありました。 セルフオーダー導入で「お客様とのコミュニケーションが減るのでは?」という、経営者の懸念、心配、逡巡はまさにここにあるのではないでしょうか?
接客業務を「かたまり」で考えると「見えない」
確かにホール業務は、様々な業務の集合体であるし、臨機応変さが求められる仕事。ホスピタリティ溢れる接客と常連客とが生み出す「空気」「雰囲気」は繁盛店であるほど優れているものかと思います。 一般論として、ホールスタッフの業務は、「予約受け」→「来店」→ 「オーダー」→「提供」→「会計」→「退店」→「セットアップ」 という流れになるかと思われ、基本的な業務(マニュアル)が存在し、その合間合間にお客様との会話やイレギュラーの対応が含まれるといったものでしょう。マニュアルはその業務を適切に進めるためのノウハウであり、それそのものは正しい。しかし、繁忙やスタッフ習熟度、その他イレギュラー的に発生した状況によって一連の流れに「機能不全」が生じている(仮説)、生じるリスクがあるという考え方です。
アンバンドル化モデル
あくまでモデル→店ごとによって分け方、項目は異なる


この一連の接客業務をもっと粒度を細かくバラバラにする…というのがアンバンドル化の第一歩。 バラバラにしたのちに、業務の評価を行います。
第一の視点:CX(顧客体験価値)の評価
重要か重要でないか?MUSTかWANTか?
CX(顧客体験価値)にとって、最重要になる“外せない”サービスなのか? 出来ればやって欲しいサービスなのか?全部、全員が出来るのか?
本当に全部やり切れるのか?全員が出来るのか?という観点で評価することは必要。繁忙時でも出来るのか?
忙しい時にやり切れるのか?という視点も必要ですね。ベテラン(習熟度の)高い人なら概ねできるけど、経験浅い人で本当に全部出来るの?
第2の視点 EX(従業員体験価値)、業務負荷の視点
顧客の体験価値(CX)で見ることは、いわゆる「カスタマージャーニー」と類似です。他方、従業員体験価値に照らして、上記同様、各業務をMust、Want、重要度、全員ができるか?繁忙時は?と評価すると同時に、業務負荷、仕事の満足度・楽しさという観点で評価します。
重要な「第三者」の評価
できる限りこうした分析・評価は「第三者の目」を入れることがベターと思われます。自店のみでは、これまでの習慣もありますし、また先輩後輩で本音が言いづらいといったケースも考えられます。
アンバンドル→リバンドルへ
ここでテクノロジーという有効な手段が登場します。
「代替」だけでなく、「併用」「補助」「拡張」という発想
人がやらずして、デジタルで対応しても店の価値損失が起こらない
より優先度の高い業務への時間・パワー創出ができる
従業員の負荷軽減に効果が大きい
という考え方を基にテクノロジーを活用した新たな業務の体制・フローを設計します。
例えば…
オーダーテイク
セルフオーダー、初回オーダーのみ人、追加はセルフオーダー、追加ドリンクはセルフオーダー、映像、画像を積極活用したセルフオーダーシステム提供、バッシング
配膳ロボット活用、ステーションまでの併用、
テクノロジーで「代替」することで人がやるべき仕事へ集中できる「分業」だけでなく、人を補助、拡張するという「協業」によってサービスレベル向上、負荷軽減、時間効率UPという考え方が重要なのではないでしょうか?
まとめ:アンバンドル→リバンドルが目指すもの
外食産業が直面する経営環境は、食材、エネルギーコスト上昇、人材不足、顧客ニーズ・ウォンツの変化・多様化。その環境の中で、いかにサスティナブルな経営体質に変わっていくかということが問われていると思います。
サスティナブルな店舗運営にとって重要な取り組み
CXとEXには相関があると考えられ、従業員にとっては、お客様の満足に自分の努力、創意工夫が活かされる仕事は自己効力感、自己肯定感、成長感に繋がる。心のこもったホスピタリティは顧客にとって素晴らしい体験価値に繋がる。
顧客体験価値向上←→従業員体験価値向上という好循環は、人材不足の経営環境の中でサスティナブルな経営を実現する最重要の取り組みと言っても過言ではないでしょう。

また、年々深刻化する人材の需給GAP。これに対しては外国人、留学生、主婦、シニア、テンポラリースタッフ、ワーキッシュアクトetc、多様な労働力の活用が欠かせません。
進む労働力の多様化に向けて、対応力のある組織体制づくりという観点でも、人とテクノロジーの補完関係は重要です。
今、何とか凌いでいる店ほど…?
言っていることはわかるけど、「とりあえず今、ウチは何とかなっている…」という店・企業が一番危ないのかもしれません。
習熟度の高いスタッフがいて、今は問題なく運営できている店舗でも、誰かの退職や休職などで「回らなくなる」。そんな日は突然やってくるのかもしれません。
1990年代のイノベーションで見られた手法
アンバンドルの考え方は1990年代に経営V字回復を成し遂げた航空会社…顧客が企業と接する全ての接点を洗い出し、分解→評価→再構築…の事例にさかのぼります。
例えば、
マニュアルで定められていた機内アナウンスを、その場に合わせて自由にできるように
顧客に接しないバックヤードの荷物降ろしメンバーに、いかに早く荷物をターンテーブルに乗せるかのKPI設定
顧客に接しない管理部門への、理念浸透プログラムの実践
などなど、全ての「顧客に接する瞬間」でいかなる取り組みが顧客満足につながるか?を、分解、解析し、各々の「瞬間」に具体的な業務改善と顧客志向の意識向上を図ることによって、航空会社全体の顧客満足度向上を目指す…というものでありました。
この取り組みは短期で見事な成果に結実し、そのストーリーは歴史的名著として、今でも多くの経営者に読まれています。

竹田クニ
株式会社ケイノーツ
代表取締役
早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。










































