
2024.10.29
「人を大事にすること」に集中して、価値を生まないものには投資をしない
イベントレポート株式会社トリドールホールディングス(以下、トリドールHD。本社/東京都渋谷区、代表取締役社長兼CEO/粟田貴也)は、「食の感動体験」をミッションとして、「グローバルフードカンパニー」をビジョンに掲げる。
会社設立は1990年6月で、2000年11月に現在の主力事業となる讃岐うどん専門店「丸亀製麺」の1号店(兵庫県加古川市)をオープンして以来、同業態は会社の成長を推進し、また事業の多様化を進めていった。
現在は、約20の飲食ブランドを展開し、国内外で1951店舗(うち丸亀製麺840店舗)、海外861店舗となっている(2024年3月期)。

同社でCIO(最高情報責任者)とCTO(最高技術責任者)を務める磯村康典氏は、システムエンジニアとしてのキャリアを重ねてきて、投資会社でハンズオンによる経営再建やバリューアップに従事した経験を持つ。
2019年9月にトリドールHDの執行役員に就任して今日に至る。
このように経営のバランス感覚に長けた情報技術者の磯村氏は、「食の感動体験」と「グローバルフードカンパニー」に向けて、どのようにDXを役立てようと考えているであろうか。
執行役員に着任して3カ月で方針を固める
磯村氏がトリドールHDの執行役員に着任したミッションは、同社の「老朽化した業務システムを刷新すること」であった。
ここからDXの推進の取り組みがスタートした。

就任してすぐに2つのことに取り組んだ。
1つ目は、社内へのヒアリング。
現場の責任者、事業会社の幹部クラスに、既存の業務システムにどのような不満や要望があるかを聞いていった。
2つ目は、財務諸表の確認。
社内のITコストは、実際にどれくらいかかっているのかを把握した。
こうして同社が置かれている情報システムを取り巻く実態について、社員の温度感と、数字(=金額)の両方を把握することから着手していった。
ここで感じたことは、現場の人々は「既存の業務システムのままではやりにくいから、なんとかしてほしい」という感情があったこと。
これについてはトップをはじめ経営陣も強い危機感を抱いていたという。
「『グローバルフードカンパニー』になるというビジョンを掲げていながら、この高い目標を達成するためには、変化に対応して、成長スピードを上げる必要があるのでは。従来のやり方は、海外展開の足かせになるのではないか。
こうした認識を抱いていた」と、磯村氏は語る。
ここからの改革に、磯村氏が培ってきた経営のバランス感覚が生かされる。
「会社がスピーディに成長していくためには、自社でIT資産を持つのではなく、身軽な体制や仕組みの方がいいだろう」と考えた。
そこで打ち立てた方針が、次の2つ。
1つ目は、「オンプレミス」と呼ばれる自前のシステムを運用することを止めて、クラウド上で動作するソフトウエア「SaaS」の利用に切り替えている。
2つ目は、バックオフィスの定型業務は、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を活用する。
このような大筋のビジョンを描いて、2019年12月に「ITロードマップ」としてまとめた。
これが、同社のDX戦略「DXビジョン2022」の下地となった。
執行役員に就任してから3カ月で「業務システムの刷新」の方針を打ち立てた。
オペレーション機能と業務部門を配下に置く
磯村氏の行動にはスピード感が存在するが、それを可能にする仕組みや組織をつくった。
その一例を述べると、先に述べたバックオフィスの定型業務について、BPOを活用した背景はこうなっている。
トリドールHDでは、磯村氏がCIOに就任する前からすでに、ホールディングス(持株会社)からシェアードサービス会社(グループ内の複数企業に重複するコーポレート業務:経理、人事、コールセンター、情報システムなどを集約させ、その業務を担う)が切り出されて分社化されていた。
そこで磯村氏は、DXを推進するにあたって、このシェアードサービス会社の社長を自身が引き受けることにした。
CIOと同社の社長を兼務することで、トリドールHDのオペレーション機能の業務部門のすべてを磯村氏自身の配下とした。
こうすることで、シェアードサービス会社の社長としてBPO化を、CIOとしてSaaS化を、それぞれ推進しやすい立場となった。
次に、SaaS化への取り組みについて。
SaaSに移行する前段階として2019年12月から2020年4月の間に、次に3つのことに取り組んだ。
1つ目は、データセンターにあった自社のサーバーをクラウド(AWS=Amazon Web Service)上のサーバーに移して、IaaS化した。
要するに、自社システムはひとまずそのままであるが、データ関連の保管先をクラウドに置き換えた。
2つ目は、従来の財務会計システムを、クラウド対応のシステム(米国オラクル社のクラウドERP「ORACLE NetSuite」)に切り替えた。
ちなみに、以前のシステムは日本会計基準(J-GAAP)にしか対応していなかったので、国際会計基準(IFRS)や各国の会計基準に対応できるものを採用した。
3つ目は、マイクロソフトの「Office 365(現・Microsoft365)」を導入した。
このようにDXの推進を段階的に行った理由として、磯村氏は「社内的に、DXの推進に向けて『IT部門の意識が変わったな』という感覚を持ってほしかった」と語る。
コロナ禍でのリモートワークなどに役立つ
これらの取り組みを終えた2020年4月のタイミングは、コロナ禍の中で緊急事態宣言が出て、本社ではリモートワークや在宅勤務が中心となり、Web会議で「Teams」を使う機会が増えてきた。
そこで、結果的に「Office 365」の導入時期はタイムリーであったと振り返る。
磯村氏はこう語る。
「私の信条は、無駄なものはつくらない、自前で持たない、価値を生まないものには投資をしない、ということ。このような目線を持ってIT化やDXを行っていく。『トリドールグループは人を大事にするんだ』という想いが骨格にあり、これに集中するということを進めていく」
磯村氏のミッション「DXビジョン2022」は間もなく終えて、並行して「DXビジョン2028」が動き出している。
これらの展望と施策については、11月20日のセミナーで明らかにされる
セミナー申し込みはこちら
https://biz.q-pass.jp/f/9683/drftriw2024seminar/seminarregister?fid=0bvhjCtHE5lkn6T3&tag=11668
来場登録は下記より(無料):
https://www.foodtechjapan.jp/riw/ja-jp.html

千葉哲幸
フードサービスジャーナリスト/フードフォーラム代表
柴田書店『月刊食堂』編集長の後、ライバル誌の商業界『飲食店経営』編集長を務めるなど、フードサービス業界記者歴ほぼ40年。フードサービス業界の歴史を語り、最新の動向を探求する。2014年7月に独立。「Yahoo!ニュース エキスパート」をはじめ、さまざまな媒体で執筆、書籍プロデュースを行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社、2017年発行)









































