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2024.11.27

【飲食店最前線巡り #10】 ソウルの外食事情

飲食店最前線巡りⅡ

卒業旅行以来の20年ぶりに韓国へ行ってきました。周りの友人には年に何度も渡韓している人もいて、日本人にとっては気軽に行ける海外としてとても人気のエリアですよね。

20年前は物価も安くて、コンビニで買い物した時も日本の半分くらいの物価だった記憶があります。とにかくその安さに驚いた…うっすらとした記憶。さすがに20年も経てば世界は変わり、音楽シーンでは世界で活躍するアーティストを輩出したり、日本でも話題になるヒットドラマを制作したりと特にエンターテインメントの発展は言わずもがなですね。

今回ソウルに訪れた目的は、韓国のマーケティング事情を知るために現地の企業のマーケティング担当者や広告代理店の方との情報交換です。とはいえ、外食に携わることの多い私は、韓国の飲食店事情も知りたくて3泊4日で12軒の店舗を見てきました。

ソウルの飲食店の所感

まずは簡単に全体の印象を紹介します。
①オーダー端末の導入は日本と同じくらい。多言語対応できていて日本語もだいたいある。日本にいる時は日本語以外使わないから気付けていなかったが、これがあればオーダー端末の強みが発揮できる
②カフェはテーブルオーダーではなく、入口での端末注文のケースが多い。注文し、席に座り、呼ばれるのを待って取りに行く流れ。立って待つ時間が少ない。
③飲食店やコンビニの接客は東京よりもソウルの方が「温かみ」がある印象。両国ともにデジタル化を進んでいるが、日本は「人員不足によるデジタルでの作業代行」、ソウルは「人間による接客をより丁寧にするために一部をデジタルで代用」という差があるように感じた。
④食べ物の物価は日本と同じくらい。ただし明洞、梨泰院などの繁華街の値段であり、地方や原材料価格は不明。

特に③が印象的でした。旅行先の印象と日本での日常の印象を単純に比べるのは難しいです。ただ、日本では人手不足で本来必要な人員よりも少ないスタッフで営業を与儀なくされる中で、機械に代替えしてその分ホスピタリティが損なわれる傾向は強まっていると感じています。

海外だからこそ実体験。多言語オーダー端末は不可欠

日本語対応便利!という感想は日本以外に来た時にしか持てないことも実感。日本の飲食店はどうしているかまでチェックしていないけれど、特に観光地では多言語対応しているのとしていないのでは、外国人の満足度が雲泥の差です。

あるカフェの入り口にある端末です。言語を選択するだけで、価格以外は全て日本人向けの言い回しに切り替わります。当たり前ですがこれぞデジタル化による満足度向上のわかりやすい使い方ですね。ただ、お会計は別でした。注文して番号を発券。出来上がると呼ばれて商品受け取る際にお会計です。注文する機械とPOSの連動の難しさは日本同様にあるのですね。

デジタルの仕事と人間の仕事を分ける

韓国の飲食店におけるデジタルの考え方の象徴としてわかりやすお店がありました。こちらは東大門にある個人経営の焼肉店。地元の方に教わったお店で、繁華街から離れた場所にあり地元客でにぎわっているお店です。外国人観光客の姿はありませんでした。

テーブルオーダー制でしたが、韓国語以外の表記変更はできませんでした。かつ店員さんも英語は話せないようで、頼るべきはGoogle翻訳アプリ。文字を読み取って指定する言語に翻訳してくれます。ただ、焼肉メニューはうまく翻訳されず…何が出てくるかのお楽しみでした。これも旅行ならではの楽しみ方の一つですね。

で、なるほどと思ったのはスタッフの動き。オーダーは端末による注文で、アルコールはお客さんが自分で注文したものを冷蔵庫にセルフで取りに行きます。
一方でスタッフさんは客席の広さに対して3人いて、オペレーション上は十分。むしろ2人でもいいのでは?と思っていましたが、色んな席を回りながら会話をしたり肉の焼き方をアドバイスをしたりと「接客」に時間を使っていました。これが本来のデジタル活用の良いパターンだなと感じました。

体験を提供する場として

オンライン販売のみの食品メーカーがポップアップストアを出して「試食」でブランドとの接点を作る施策も増えましたよね。単純にポップアップストアでの売上だけみるとおそらく出店コストを打ち返せないと思いますが、そこでの体験から継続的に「購入客」になったり、美味しさを他の人に「推奨」したりすることでコンバージョン以外も価値として評価することが必要です。

そんな体験の場として良かったのは日本でも人気の辛ラーメン。明洞にお店を構えており、そこでは数あるフレーバーから好きなのを選び、無料のトッピングを付けて、席に座って実食をすることができるのです。

日本では見たことがない味もあり、好きな辛さに合わせてまずは味をセレクト。支払いをするとスタッフさんが開封して調理をしてくれます。ここではデジタルの要素は極めて少なく、商品との接触、ブランドスタッフとの接触で体験の深さにこだわっているようです。

ソウルで飲み食いした12軒のうち、また行きたい店はどこかと問われたら…。なぜかわらかないけど、辛ラーメンのお店もおすすめしたり再訪したくなると感じています。

ホスピタリティの高さ

日本の小売店、飲食店のサービスレベルは高いと思い込んでいる部分があります。海外の方からも日本人は親切だと言っていただけることも少なくありません。ただ、ここ10年くらいで人手不足が顕著になり、コロナ環境下で飲食店で働くことへのイメージダウンが拍車をかけて、「人手不足のため〇時で閉店します」や「スタッフが足りないため料理の提供が遅くなります」などの張り紙を見かけることも珍しくない昨今。

一方では、デジタル化が進み、注文、会計、予約、料理提供などが機械化されてきました。コストを減らして美味しいものを安く提供する風土は素晴らしいですが、接客についてはデジタル化の犠牲になっていることも強く感じます。デジタル化自体に問題があるのではなく、各サービスを機械がやるようになりスタッフたちは自分の仕事領域を狭めるようになってきました。機械ではなくても、お客様に袋詰めや下げ膳をしてもらうことも根付いてきました。

私自身もファミリーレストランの店長として働き、店内を歩きながら見るべきはお客様の表情とテーブルの上だと教わり、そして教えてきました。いつしか「呼ばれたら行けばいい」「おかわりはお客様が自分で頼む」「食べ終わった食器も頼まれたら取りに行く」という待ちの姿勢が強くなってきたのはデジタル化が間接的な原因と私は感じています。

一方の韓国。コンビニでも個人の飲食店でもこちらが日本人とわかると出来るだけ日本語を使おうとしてくれるのです。それも1店2店ではありません。お店の多くがそういう姿勢で驚きました。ありがとうございます。〇〇ウォンです。袋入りますか?カタコトですが、相手の言語に合わせるという気遣いがあるようです。

韓国で化粧品会社のCMOをする方にお話しを聞いたところ、人口の違いがあるそうです。詳しく話を聞いて心から納得しました。韓国の人口は5千万人ほど。日本の半分以下です。日本の規模があれば国内だけでもマーケットとして十分だが、韓国はマーケットが小さすぎるそう。そのため商品開発の段階から国内だけではなく、他の特定の国も対象に入れて流通を考えるそうです。サービスにおいても、国内のお客様だけでは成り立ちにくいので、観光や出張できた外国人のお客さんも大切に考えるそうです。ここは日本と大きく異なる考え方の気がしました。

IZAKAYAがトレンド

韓国では「IZAKAYA」がトレンドだそうです。日本の居酒屋のように色んな料理をあれこれ楽しめる業種は無かったようで、日本語がたくさん書かれたお店がありました。これらは日本人客を求めているわけではなく、日本文化が好きな韓国人、一つのお店で色んなものが食べたい人が集まるそうです。

文化の違い、言葉の違いはあるけれど、トータルで私が感じたのは「ほとんど日本と同じだ」でした。気温も風景も東京ととても似ています。他の国のような海外へ来た高揚感が良い意味でほとんど無いのです。
そういう面では日本の飲食業はソウルにもまだチャンスはあるのではないかと感じました。居酒屋のように日本の文化をリスペクトしてくれる空気もあります。

例えば下の画像。韓国ソウルにある大衆酒場、その名もラスベガス。どういう理由でこの名前を付けたんだ…想像するだけでかわくわくしてきませんか?

ちなみに韓国で一番おいしかったのは生マッコリです。製造してから賞味期限が15日しかなくて、日本でも流通量がとても少ないのだとか。

吉田啓介

カラビナハート株式会社

執行役員/シニアコンサルタント

カラビナハート株式会社のマーケティングコンサルタント。外食、メーカー、決済事業者など様々な業種のSNSなどを中心としたコミュニケーションを支援しています。2020年4月まではすかいらーくHDに在籍。ガスト、バーミヤンで店長を務めたのちにマーケティング本部へ異動し、広告宣伝、CRMや決済、ポイントプログラム、テーブルオーダーなど店舗内UIUXなどを担当。

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