
2024.02.27
【飲食店最前線巡り #4】飲食店で活躍するロボットの強みと弱みを考える
飲食店最前線巡りⅡ猫耳が付いたチャーミングな配膳ロボがテーブルまで料理を運んできてくれる。そんな光景は飲食店で当たり前になってきましたが、昨年秋には大阪王将が調理ロボットのテスト導入のニュースもありました。5年くらい前までは予想できなかったことが、コロナ環境や人手不足、最低賃金の上昇などで一気に広がってきました。
2020年春頃までは私自身がすかいらーくに在籍してマーケティング部門で働いていましたが、当時はまだ「ロボットが働く」ことは少し先の未来だったと記憶をしています。
2019年に中国出張で杭州市にあるFLY ZOO HOTELで見た、部屋までルームサービスを運んでくるロボットを思い出します。Alibaba(アリババ)が運営するFLY ZOO HOTELは、AIや様々な最先端技術を駆使して、利便性を追及した近未来型ホテルでした。フロアや部屋への入室は全て顔認証。バーではロボットがカクテルを作り、ルームサービスはこちらのロボットが運んでくれます。

その時は「いつか日本でもこういうサービスが当たり前になるのかな」とぼんやり思っていましたが、たった3年で身近な場所で展開されているとは。進化のスピードに驚いています。
炒め調理ロボットの実力はいかに?
2023年秋から炒め調理ロボットを実験導入しているのは大阪王将 西五反田店。まだこの1店舗のようですが、味はどうなのか、願わくば外見やオペレーションも見てみたく店舗に行ってみました。

リニューアルを行ったタイミングで今回の調理ロボットを入れたようで、町中華感をより強めた路面店に。赤いテーブル、赤い丸椅子が並び、THE町中華な印象を受けます。赤と黄色のコンビネーションはいつだって食欲を呼び覚ましますよね。
プレスリリースや発表情報によると炒め系を中心に20種類が調理ロボット「I-Robo」で調理可能となった様子。ちなみにテーブルオーダー式でした。

【出典】Impress Watch
https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1535601.html

人が調理したものとの違いはわからず
お邪魔したのは平日の20時ころで席はまばら。スタッフは3人ほどいて、オペレーション的には余裕がある時間帯でした。厨房は客席からも見える作りで、噂の調理ロボットも見えます。ただ、今何を作っているかまでは見られないため、人が調理したものか、ロボットが調理したものかの確実な判断は難しかったのをあらかじめお伝えしておきます。
注文したのはマーボー豆腐とチャーハン。もちろんビールも頼みました。前職のすかいらーくに入社してしばらくは中華レストランのバーミヤンの店舗に務めていました。マーボー豆腐の煮詰めや豆腐を壊さない調理の難しさと、チャーハンは中華の中でも火力、タイミング、炒めの技術を要することからその2品を選びました。

調理中はキッチンから聞こえる音に耳を澄ましておりましたが、どちらも音では「誰が作ったか」は判別できませんでした。結論からいうと、チャーハンもマーボー豆腐もいつもの品質だった印象です。いずれも若干熱さが足りない気がしましたが(温度計を持参していればよかった!)しっかり美味しかったです。
豆腐も崩れていませんし、チャーハンの玉子も攪拌され細かく炒められていました。実験的にとはいえ導入しているには何度も品質チェックをされていると思うので当然ですが、調理機器は得るもの、失うものの優先順で選択されることが多いので、提供スピードを速くすること、オペレーション負荷を下げることを優先するために、多少のクオリティダウンを容認せざるを得ない場合もあるものです。

念には念を。調理ロボット導入によりお客さんの好みによって野菜や量目がカスタマイズできるようになったのは、顧客側としてもメリットが大きいですね。こちらの「じぶん盛り野菜炒め」は入れる野菜や量などを細かくカスタマイズできるもの。炒め中の温度によって投入タイミングなどをロボットから人間に指示してくれるらしいです。

さすがにこちらは調理ロボットによる炒めと想像。もちろん、温度や野菜の食べ応え(柔らかすぎず固すぎず)も含めてちゃんと美味しい仕上がりでした。

調理ロボットは今後増えていくか
今回の大阪王将では、ロボットの稼働やどれくらい人の手が必要なのかまではわからないので、はっきりとは言い切れません。ただ今後増えていくのは間違いないと思います。特に中華料理は、ハンバーグやラーメンなどと違って、鍋肌の温度、食材の厚さ、温度などの影響を受けるため炒め時間をタイマー管理することができず、調理を身につけるまでの教育時間が長い業態です。トレーニング時間を短縮し、かつ人による品質のブレを抑えることができるのはチェーン店において非常に有効な手と感じました。
【考えられるメリット】
・スタッフの習熟度に影響を受けにくい安定した品質を提供できる
・作業負荷軽減と効率アップ
・人員不足を補う
・人件費の圧縮
【考えられるデメリット】
・熟練スタッフが作った時には品質が劣る可能性
・機械の故障時には対応できないメニューが発生するなどメンテナンスが必要
・導入コスト
ロボットを導入する理由は?人件費高騰と採用難の壁

そもそもなぜ配膳や調理ロボットの導入が必要なのでしょうか。大きな理由の一つとして人件費の高騰が背景にありそうです。下のグラフは2011年から2021年までの東京都の最低賃金の推移です。見事に右肩上がりで、10年間で204円も上昇しています。もちろん、賃金の上昇自体は、私たち生活者にとっては悪い話ではないですが、企業としては大きな経営インパクトです。
参考:https://ssl4.eir-parts.net/doc/3197/tdnet/2085010/00.pdf

例えば、スタッフが常時3人必要な飲食店を100店舗運営するチェーンがあり、営業時間が10時から22時とした時に
3人×204円(10年で上昇した最低賃金)×12時間(営業時間)×365日×100店舗でざっくりと計算すると、10年前から268,056千円の人件費増となります。実際には全員が最低賃金ではないし、営業時間前後の準備時間もあるのであくまで参考ですが、経営の影響が小さくないことは読み取れます。
すかいらーくの決算資料では導入成果が可視化されています。ひとえに生産性というお店側メリットだけではなく、テーブルの片付けやご案内への対応も早くでき、満席時のお待たせ時間短縮につながっているようです。

ロボットは飲食店に何をもたらすか
飲食店でアルバイトの経験がある方はご存知と思いますが、ホール業務はスタッフ自身でコントロールできない業務がほとんどです。テーブルの注文を受けている間に、別のお客さまがが会計にいらっしゃるなど、同時に対応すべき業務が偶発的に発生するのがこれまででした。
これからは、テーブルオーダー端末、料理配膳ロボがあることで、同時作業が発生するのを大きく減らせます。それにより、混雑状況によってスタッフ3名だと余るが、2名だと遅れが生じるという場合でも、1人で対応できる可能性があります。
また、調理は覚えることが多く、一人前になるにはトレーニング時間がかかりすぎます。調理工程のブレにより人による品質差が大きいのも課題の一つですが、調理ロボなら食材の状態や温度を踏まえながら安定したレベルを維持することができます。
飲食店で活躍するロボットたちは、人口減少により労働力の確保や最低賃金上昇により人件費高騰を解決する一手に。結果的には、お客さんにとってもメリットが少なくないと感じます。
固定費が大きく利益率が低い飲食業界は、一般的にコストを大きく減らすのが難しいと言われています。その中で、人件費を抑えるための大胆な工夫が調理ロボ、配膳ロボにはありました。この先は中小規模チェーンにも広がっていくことが想像されます。どんどん変革する飲食の現場から、目が離せません。
調理ロボットをテスト導入しているお店はこちら
◎大阪王将 西五反田店
東京都品川区西五反田1丁目24−4
https://www.osaka-ohsho.com/store/detail.php?area=tokyo&id=nishigotanda













































