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2024.04.02

【飲食店最前線巡り #5】日本のおもてなしはデジタル化で劣化するか

飲食店最前線巡りⅡ

オリンピックの東京開催が決まり、「お・も・て・な・し」が流行語大賞の選ばれたのは2013年でした。つい最近のことのような気がしていましたが、もう11年が経とうとしています。日本人の対応や、小売店や飲食店の接客が世界でも群を抜いてホスピタリティが高く、誰に対しても平等で「おもてなし」の精神に溢れている…当時はそんな所以から東京開催の後押しになった記憶があります。

あれから10年以上が経ち、コロナによる行動制限や新しい暮らし、日本では人口減少や働き手の不足によって外食企業も雰囲気も大きく変わりました。

写真はイメージです。

デジタル化による弊害か

飲食店では、機械化が進んでいます。入店すると人数を入力するご案内端末があり席を教えてくれます。注文はテーブル設置のタブレットやモバイルオーダー、料理はロボットが運んだり、お会計はセルフレジ。入店から退店まで、スタッフと一度も接しないで完結するお店もいまや少なくありませんよね。

私も15年以上飲食店に携わり、その内6年は店舗にて働いていました。当時の上司には、「良いお店を作りたいなら店長はキッチンに居てはだめだ。調理はスタッフにまかせて自分は客席でお客様のことを知り、お客様の過ごす時間をよりよいものにする」と何度も言われ、客席を歩きながらそれぞれのお客様の様子を把握して、アルコールのおかわりのお声掛けや食後のデザートの提供タイミングに気を使ったものでした。

写真はイメージです

働き手の不足があり、他にどうすることもできないのも現実。一方で、多くの飲食店、特にチェーン店では「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」などの感謝を伝える言葉が少なくなっていることを感じています。自分が出迎え無くても入口の機会が席を案内するし、注文の仕方がも席に書いてある。関わることが薄くなった分、自ら「困っていることはないだろうか」と様子を探る姿勢も薄れているのも間違いないでしょう。

日本の接客は今でも世界基準でみても「おもてなし」として高いレベルなのでしょうか?先日、外食市場規模がどんどん増え続けているタイへ行ってきたので、サービスの様子も見てきました。

外食市場規模は日本の1.7倍のタイ

タイは東南アジアに位置して歴史上、日本とも親交が深い国ですよね。物価は感覚では日本の3分の2ほどでした。タクシーや地下鉄などインフラが非常に安いので暮らしやすそうな印象です。

人口と外食業界の市場規模を比較してみました。人口は日本に対して57%しかいないにも関わらず、外食の市場規模は1.7倍です。自炊の文化が弱いなどもともとの生活の違いはありつつも、これだけ差があることにとても驚きました。

特にファストフードが人気のようで、「東南アジアの消費者の40%が週に4回以上ファストフードを消費している」そうです。

<出典>
日本の外食市場規模
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3075
タイの外食市場規模
https://www.mordorintelligence.com/ja/industry-reports/thailand-foodservice-market

バンコクの街を歩くと確かに飲食店が多いのは歴然です。良く見るグローバル企業のチェーンもあれば、道端にテーブルとイスだけ並んでいる露店、高級そうなレストランからカフェ、居酒屋…ありとあらゆる種類、タイプの飲食店があります。

基本的に年中気温が高いので、屋外でも食事ができるのも「外食」機会が多い特徴とも言えそうです。日本の冬には露店で食事をするのは現実的ではありません。

ジャンルによって金額の差が大きい

飲食店の食事の価格も全体の相場同様に、日本と比較して3分の2くらい。ただ、どれもこれもではなくて、グローバルチェーンのハンバーガーは日本と同程度だし、一方で地元の方がやっているお店は300円くらいでしっかり食事ができたりもする。

◎300円/食  個人経営のお店 

バンコク郊外のロードサイドのお店。マクドナルドやバーガーキングと同じエリアにあり、一番地元感があるのでここで食事をしました。自分の好きな具をカスタマイズできる仕組みで、2種類のカレーとコーラを注文して日本円で300円ほどでした。本当に安い。

微笑みの国とも呼ばれますが、タイの方々は人当たりが良いです。こちらのお店でも観光客が来ることが少なそうな場所で、お店の方も英語でのやりとりができなかったのですがそれでも一生懸命伝えようと工夫してくれたのを感じました。会計が終わった後も「スプーン使いなさい」とか「これは自由に食べていいやつだよ」などと丁寧に教えてくれました。

ただ、マクドナルドやバーガーキングはクレジットカード払いができますが、こういった個人店はほぼ現金のみ。しかも高額な札は受け付けてくれないのでご注意を。最初にまとめて両替すると1,000バーツ札が多くなりますが、セブンイレブンなどであらかじめ細かく崩しておくのがおすすめです。観光地の入場料、飲食店、屋台などでは細かいお金がたくさん必要です。

◎1,000円/食  グローバルチェーン

バーガーキングとマクドナルドがとても多いです。ハンバーガーは人気なのですね。ただ、他の飲食店と比較すると値段は高く、日本とも差はほとんどありません。店舗のレイアウト、オペレーション、メニュー構成も日本と変わりはないので、逆に店内にいるとタイにいることを忘れてしまうほどです。

英語が通じるのは便利ですが、接客は一般的なファストフード。日本と同じです。

◎3,000円/食 地元で人気の居酒屋

地元の人に教えてもらってきたタイ料理中心の居酒屋。平日夜にも関わらず、18時くらいからずっと満席で待つ列ができていました。おなかいっぱい食べて飲んで一人3,000円くらい。日本の感覚と比べると半分ほどなので、地場のお店や、地元の食材を使っているような飲食店は比較的安い傾向を感じます。

ここは英語が通じなくて苦労しましたがそれも旅行の楽しさの一つ。言葉は通じなくてもお互い察しようとすればなんとなく伝わるものです。スタッフさんがみなニコニコ明るくて、楽しんで働いているのがわかりました。年齢も様々でおばあちゃんから学生くらいの年代まで様々。

◎800円/食 海辺の露店

海の近くで観光客が多いスポットなので値段は高めに設定されているかもしれません。1バーツが4.4円ほどなので、ソーセージの串が20バーツ、88円ですね。日本よりわずかに安い印象です。

露店では英語が通じずタイ語のみ、もちろん現金のみの利用です。大きい金額の札はここでも断れるのでご注意を。いくつかテーブルとイスがおかれていて自由に座ってよいようです。あるいはそのまま砂浜あたりで座って食べている人もいました。

外国人観光客にとっての日本の飲食店は?

食べ物自体もお店の仕組みも総じて日本と近い印象でした。基本的にチップ制度もありません。地元の方に話を聞くと、飲食店の店員は他の仕事と比較しても給料は安い方のようですが、住む家自体も安いところも多いので飲食店の仕事だけでも生活はしていけるそう。

タイの飲食店はデジタル化は全く浸透していませんでした。一方でタクシーの配車予約やウーバーイーツ的なサービスはモバイルで使えるので、労働力が確保できるから、店内のオペレーションを機械で代替えする必要性がないのでしょう。

その分、商魂もたくましい印象で少しでもたくさん買ったり食べたりしてもらいたいという接し方を強く感じました。ただそれは嫌な印象ではありません。

「おもてなし」の国、ニッポン。海外からの旅行者数がコロナ前を越えてきました。旅行でいらしたみなさん、日本の飲食店はどうでしょうか。期待していたおもてなしができているでしょうか。デジタル化していくことは逃れられない道ですが、外食は「料理」を提供するだけではありません。場所だったり雰囲気だったり、心地よいホスピタリティだったり。それらを全部合わせて「外で食べる楽しさ」なので、いつまでも世界に誇れるサービス品質を維持していけるよう、私もできることをしたいと改めて思いました。

吉田啓介

カラビナハート株式会社

執行役員/シニアコンサルタント

カラビナハート株式会社のマーケティングコンサルタント。外食、メーカー、決済事業者など様々な業種のSNSなどを中心としたコミュニケーションを支援しています。2020年4月まではすかいらーくHDに在籍。ガスト、バーミヤンで店長を務めたのちにマーケティング本部へ異動し、広告宣伝、CRMや決済、ポイントプログラム、テーブルオーダーなど店舗内UIUXなどを担当。

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