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2024.07.29

DX活用によるマーケと商品力で激動する業界の勝ち組へ。ゴーストレストランの旗手「X kitchen」が描く未来<後編>

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2019年の創業から5年。2024年の6月時点で、提携店舗数が700を突破したゴーストレストランの雄が「X kitchen」だ。同業界は奇しくも、コロナ禍が大きなターニングポイントとなったのは周知の事実だろう。では、その現在地はどうなっていて、激動の業界内で同社が競り勝てた要因は何だったのか。また、課題感や今後の展望は? 大学生時代に起業した、株式会社X kitchenの山路健一郎代表に聞き、前・後編でお届けする。本稿はその後編。(前編はこちら

トレンドは韓国グルメとスイーツがアツい

着実に拡大し続けている「X kitchen」だが、フードデリバリーやゴーストレストランの最新トレンドはどうなっているのか。まずは食全体のトレンドから山路氏に聞いた。

「特にデリバリーで売れるジャンルですと、スイーツが狙い目だと感じています。また、これはスイーツに限らずですけど、韓国グルメが全体的なトレンドになっている気がします。

UberEATSでは購買者の年齢や性別をピックアップすることはできないのですが、これらを他の調査データと結び付けるに、コアユーザーは20~30歳の男女だと思いますね。加えて、韓国のトレンドはZ世代がSNSで広める形が主流ですので、この点に関しては注意深く動向を追っていきたいです」

トレンドのキャッチアップに関しては、同社の平均年齢が若いこともベネフィットだと語る。事実、山路氏自身もZ世代であり、友人からリアルな声を聞ける環境にもある。ただ韓国のスイーツトレンドに関しては、流行サイクルが早いという側面も。この点に関しては、どのように対応しているのだろうか。

「確かに、韓国グルメの中でもスイーツは特に入れ替わりが早いです。この点はもうシンプルに、最もホットなものを都度メニュー化していくしかないですし、クリックに対応できる組織を作りたいですね。ただ、韓国トレンドの中にはチュロスやアサイーボウルのように、日本でリバイバルヒットするものもありますから、ロングテールで流行る形もあるとみている部分もあります」

ビッグネームの参入は脅威だがチャンスも

近年のフードデリバリー市場は、大手企業や有名店の参入も見逃せないニュースである。この動きに関してはどうか。

「そうですね。大手コンビニがゴーストレストランを本腰入れて進めていくという話も出てきているので、当社でも加盟店同士の商圏がバッティングしないようになど、パートナー様を守っていきたいと考えています。ブランドのコントロールや運用に関しては、逆に有名ブランドさんとコラボレーションしながら、自分たちが広める役割を改めて突き詰めたいですね」

聞けば同社では、韓国チキンの有名ブランド「クリスピーチキンアンドトマト」とのコラボレーションが実現し、一部で販売もしているという。

「個人的には、有名ブランドが参入することで味やサービスもクオリティの高いものが残ると思っており、より業界全体が強くなると期待しています。当社でも、もちろん強いプレイヤーの参入はピンチでもあるのですが、応用できる方法はあると思いますし、この点は生き残りをかけて頑張るしかないですね」

では、業界が抱える課題にはどんなものがあるのか。ひとつは、同社の企業理念“新たな食文化をITの力で創造する”には伸びしろがある一方、言い換えればそれだけ困っている飲食店があることだと山路氏は指摘する。

「特に地方に関しては、デリバリーを事業化することで収益を改善できるケースはたくさんあると思っており、しかしノウハウがない、そもそも相談できるパイプがないという点に課題感を抱いています。これに関しては、テイクアウトや実店舗の業態転換をクイックにできるソリューションを、積極的に作りたいなと思いますね」

加えて食材費や燃料費の高騰、配送人材の枯渇などもあり、フードデリバリーに関してはメニューを運ぶ人的リソースも関連する。これらの課題に関してはどうか。

「確かに課題ではありますね。端的な解決策は値上げだったりするのですが、しかし当社は飲食店フレンドリーを追求しているので、慎重になりたいです。一方で物流の仕組みに関してはまだ最適解ではないと思っており、無駄を省いた流通のコスト削減はできるはず。解決の余地は断然あると考えています」

今夏は実店舗も出店。スイーツ特化ブランドに注力

最後に、直近のトピックスや今後の展望を聞いた。今、最も注力している事業はなんと実店舗。「Sugary」というスイーツ業態で、7月1日には京都に実店舗を出店した。

「メニューでいえば生ドーナツに注目しており、『Sugary』では生ドーナツ、アサイーボウル、グリークヨーグルトの3商品を名物に打ち出しました。このお店を成功事例に、スイーツ特化ブランドをつくれたらと思います」

当面の目標としては、2026年までに加盟数を2000店舗の規模に拡大したいと意気込む山路氏。その情熱を次のように語り、インタビューは幕を閉じた。

「外食のマーケットは可能性に満ちあふれており、できるだけ当社のサービスをより広め、前述したような課題を解決できる力を持った企業様ともタッグを組みたいと考えています。たとえば、外部ブランドを手掛けたり預かったり。これはデリバリーに限らずそれ以外のチャネルも含めて推進できるような形ですね。当社と組むことで互いにベネフィットが生まれ、業界全体が活性化できるような仕組みづくりを模索していきたいです」

中山秀明

フードライター/エディター/フードアナリスト

1980年東京生まれ、埼玉ローカル育ち、東京在住。グルメ、ファッション、カルチャー誌を得意とする編集プロダクションを経て独立し、フードアナリストの資格も取得。内食・外食のトレンドや酒類のカルチャーを得意とし、さまざまな雑誌やウェブメディアで編集と撮影を伴う取材執筆を行っている。そのほかTVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。

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