
2024.02.16
【後編】エクセルの手作業で行っていた飲食企業の売上管理分析を全自動化し標準化する
飲食DXリーダーズそれぞれ異なるPOSレジの計算式を解読
それぞれのPOSレジのデータフォーマットやトランザクションデータの計算式は、全く異なっている。飲食業界ではこれまで、このトランザクションデータを活用した集計ツールは見当たらなかった。たいていは日計や時間計の集計データをもとにしたデータしか活用できていなかった。それらが飲食業界のデータ分析を実現する上でボトルネックになっていた。

「TEAL BI」では、それらPOSレジメーカーごとに、全てのトランザクションの計算式の解読に成功し、全てのPOSレジで、日計集計とトランザクションデータの集計値を一致させることに成功した。
飲食業界の中堅から大手企業で行われている管理会計でのKPI管理指標は、どの企業でも、おおむね同じような集計を行っている。しかしながら、それらを標準化したSaaSツールとする開発は誰も行ってこなかった。
これまで業界で使われてきた売上を集計管理するツールでは、企業ごとにカスタマイズが多く行われた。その結果、1社ごとのカスタマイズコストもメンテナンスコストも高く、さらに時代の変化に沿ったアップグレードが行われることなく、システムの陳腐化が生じていた。
「管理会計の標準化は難しい」という声は、よく聞かれながらも、その必要性が求められることは少なかった。しかしながら、斉田氏は飲食業界のある動向からヒントを得た。
「インフォマートは飲食業界の仕入業務を標準化し、それによって業界の仕入業務の水準が大きく向上した。この実例を見れば、管理会計をSaaSによって標準化することで経営の水準を向上させることができるはず」と。しかしそれには、飲食企業経営を深く理解し、かつデータアナリストとしての知見、システム開発の知見も必要だった。
こうして、2020年4月にティールテクノロジーズが立ち上がり、同年10月から飲食業界初のSaaS型多店舗管理BIツール「TEAL BI」の正式提供を開始した。
膨大なデータを分析し定量的に把握する

『TEAL BI』の機能について、「店長ダッシュボード」「売上分析BI」「ABC分析」のカテゴリーでまとめておこう。
(1)店長ダッシュボード
毎日の速報値として、月次売上累計、着地見込み、人件費率推移、発注原価率、理論原価率推移、などをグラフで一覧表示。これらを毎日「速報値」で確認できるので、毎日改善のPDCAを回すことができるようになる。
(2)売上分析BI
タブレット上で、指先だけで売上を深掘りして分析することが出来る。店舗別、業態別、全社で、様々な売上指標を多角度で切り出すことができ、日次、週次、月次の推移数字、累積表示、トータル表示等を選ぶことが出来る。営業会議で「あの角度で分析してみてくれ」という急な振りにも、その場で対応できるようになる。これまでグラフをエクセルでつくっていたのが、BIツールによって無限のさまざまな比較グラフを瞬時に見ることが出来る。
(3)ABC分析
メニューごとの出数と売上の変動や累積、期間合計など、さまざまな角度での分析が可能。メニューの売れ行きの変化が時系列でグラフ化することが出来て、日次、週次、月次と選ぶことが出来る。
こうして、短期的変化から長期的変化まで、普段なかなか気付きにくい変化に気付くことが出来るようになる。エクセルの手作業では分析することが出来ない膨大なデータを簡単に分析できるようになる。
このようなデータを組み合わせることによって、本部が店舗の現状を定量的に把握できるようになる。
例えば、店舗から本部に「人が足りません!」「すごく忙しいです!」と訴えがあったとしよう。この感覚的な訴えだけでは「何が」「どの程度」なのか本部に伝わりにくい。
これが「TEAL BI」の分析軸を組み合わせると、それぞれの折れ線グラフに通常とは異なる変化が現れて、このような現象を可視化することが出来る。
それらの変化の様子は、一例としてこのように表記されることになる。
売上の当月推移(過去年度比、予算比)→売上が大幅に上振れ
人時売上、日別(棒グラフ)、当月累積(折れ線グラフ)→人時売上が異常値
当月人件費進捗(%設定予算比)→人件費が下振れ
このように、「人が足りません!」と訴える定性的な要件は、「TEAL BI」では定量的に表現され可視化できる。本部では現場で生じている問題の度合いを把握して、その対策に早急に取り組むことが出来る。
「さっと見る」ことで変化に気付くことがポイント

現状「TEAL BI」と連携しているPOSとの接続状況は上記にまとめた通りで、この1月末の段階で、グラフや表の数が577個となっている。
この数について、斉田氏は「分析軸は理論上無数につくることができるが、ここで重要なポイントは『状況把握のために意味のあるグラフを定義して表示すること』である」という。例えば「売上」には「単店舗」「多店舗間」「業態別」「全社売上」があり、「坪売上」「平均売上」「来客数」など、といった分析軸となっている。さらに、時間軸では「時間帯別」「曜日別」「週別」「月別」という具合に、一つの事象に関連する分析軸は広がっていく。
これらを組み合わせることによって、問題点の解決方法が見えやすくなっている。前段の「人が足りません!」に対する「TEAL BI」のグラフ表示は、その一例である。
この点について、斉田氏は「一人が、これらのグラフの一つひとつを全部チェックするということではなく、何気に斜め読みしている、ということが大切だ」と語る。それぞれのグラフから「変化」を感じとることが重要であり、そこからPDCAのきっかけが生まれる。
さらに、社内の担当者それぞれには、自分の立場でしっかりと見ておくべきグラフが存在する。マーケティングの担当者はマーケティングの視点で、経理の担当者は経理の視点でグラフを選び出して詳しく分析する、という具合である。
店舗では、店舗責任者がバックヤードにいて、これらのグラフや表をパソコンに向かって見ているのではなく、仕事の合間や移動中、自宅でゆっくり落ち着いているときに「さっと見る」ことがポイントだ。ここで折れ線グラフが変化していることに気付き、その「問題点とは何か」とじっくりと考え、PDCAを素早く回すことが出来る。

斉田氏はこう語る。
「飲食企業でこのツールが導入されれば、店舗責任者は現場のオペレーションにこれまで以上集中することが出来て、スタッフと向き合うことが出来るようになる。私は、人が好き、料理が好き、サービスが好きでたまらないという飲食業の人たちが、もっと輝く現場にしたい。この業界で長く働く人がもっと増えて、飲食業がさらに発展して欲しいと願っている」
「TEAL BI」は、飲食業において「人」が担うべきヒューマンな部分をより充実させて、飲食業の価値を高めるというDXの役割を十二分に果たしている。これは、これを開発した会社の母体が、テーブルサービスのレストランを展開していることもそのファクターとなっているのではないだろうか。

千葉哲幸
フードサービスジャーナリスト/フードフォーラム代表
柴田書店『月刊食堂』編集長の後、ライバル誌の商業界『飲食店経営』編集長を務めるなど、フードサービス業界記者歴ほぼ40年。フードサービス業界の歴史を語り、最新の動向を探求する。2014年7月に独立。「Yahoo!ニュース エキスパート」をはじめ、さまざまな媒体で執筆、書籍プロデュースを行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社、2017年発行)













































