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2024.10.18

飲食店に著しく速く普及している「配膳ロボット」の真の魅力をまとめた

国内飲食DXニュース

今日、ファミリーレストランや大箱の焼肉店等で「配膳ロボット」が稼働している様子は日常的なシーンとなっている。これが導入されるようになったのは2021年のことで、わずか3年の間に著しく速く普及している。この背景にあるのは「人手不足」を解決することであるが、この速さは、これにプラス、それに拍車をかける要因がありそうだ。

そこでわが国における配膳ロボットのパイオニアとされる株式会社DFA Robotics(本社/東京都港区、代表/松林 大悟、以下DFA)の執行役員兼Frontier Development Directorを務める山本雄士氏に、これらの動向と展望について解説をしていただき記事をまとめた。

DFA Robotics執行役員兼Frontier Development Directorの山本雄士氏

コロナ前に「人手不足」の中国で誕生

配膳ロボットが誕生したのはコロナ前の当時、中国福建省深圳にあるテクノロジーのスタートアップのメーカーからであった。これが開発された背景には、冒頭で述べたとおり「人手不足」がある。人口13億人の中国国内に1000万店が存在している中国料理店での人手不足は、特に深刻な問題であった。山本氏はこう語る。

「その背景にあるのは、中国国内の賃金格差が存在しています。中国料理店は日常的な飲食店でありながら、賃金が低いことから不人気業種なのです。ここで人手が不足しているということから配膳ロボットが普及するようになった。これが2020年に入ってからです」

DFAでは中国でのこのような動向を察知して、これらを輸入して日本の飲食店をはじめとした労働負荷が多い職場で普及させようと画策するなかで、外食大手の株式会社すかいらーくホールディングス(以下すかいらーく)への協業提案を東芝テックから依頼された。すかいらーくでは、この配膳ロボットが持つ人手不足をはじめとした店内環境のさまざまな課題を解決することに着眼し、すかいらーくの約2100店に及ぶ店舗で、それぞれ1台ないし2台の導入を決めた。これが2021から2022年のことである。

DFAが設立したのは2017年9月。「世界中に存在する、世の中のためになるものを日本に持ってきて、日本の社会で実装させるビジネスモデル」(山本氏)をミッションとした。2017年に「ドローン」を、2018年には「宅配ロボット」を導入して、日本国内での普及を図ったが、ドローンは飛行許可が必要となり、宅配ロボットの屋外配送が認められたのが2023年4月という具合に、それぞれが大きく普及するチャンスに恵まれてこなかった。

このような過程で中国発の配膳ロボットと出合い、すかいらーくでの導入が進められるようになってから、同社は日本における配膳ロボットのパイオニアとして、この分野における絶大なノウハウを培うようになった。これまで同社が全国の飲食店に導入した配膳ロボットは3500台にのぼっている。これは国内に存在する配膳ロボット全体の約半数とされている。

山本氏は、飲食店にとっての配膳ロボットの存在を「導入しない理由はない、というほどのメリットが存在する」と語る

飲食店従業員の「肉体労働」を軽減する

配膳ロボットを導入している店舗は、50坪ないし60坪の規模で1台、それ以上の規模となると2台となっている。

配膳ロボット1台のメーカー小売価格は概ね300万円弱。一般的には5年リースを組んでもらい、保守費用を含めて月額7万円ないし8万円で、現場では10時間労働で換算して時給200円に相当する。こういう部分では、配膳ロボットは「人手不足」を解消することに加えて「人件費削減」に役立つ存在である。

このような経済効果に加えて、配膳ロボットの存在は「店内環境」を大きく改善している。

まず、一般的にロボットの導入を検討する前提として、「感情労働とテクノロジー」の関係性が論じられる。

「感情労働」とはアメリカの社会学者A・R・ホックシールド氏が提唱した概念で、「肉体労働」「頭脳労働」に並ぶ労働のカテゴリーのこと。「相手(=顧客)の精神を特別な状態に導くために、自分の感情を誘発、または抑制することを職務とする、精神と感情の協調が必要な労働のこと」を示している。サービス業、営業、教師、医療、介護といった「感情」を使って人に接する仕事の分野を指している(『カオナビ人事用語集』を参照)。飲食業の接客や調理の仕事はまさに「感情労働」である。

「感情労働」は、コミュニケーションが大好きで、感情が豊かな人が選びやすい職業とされている。そこでここに労働の他の二つのカテゴリーである「肉体労働」と「頭脳労働」が絡み合うと、ストレスをためてバーンアウト(燃え尽き症候群)になりがちとなる。

筆者がÐFAが公開する事業内容の資料を読み込んでいくうちに、配膳ロボットの存在は「感情労働」である飲食店の接客や調理の仕事にとって、従来宿命のように付きまとっていたストレスから解放してくれる存在であると感じ取った。

配膳ロボットがない当時に、飲食店の接客業務では、お客様と接する以上に配膳や下げ膳で重い皿を持って、厨房と客席を何度も行き来することが当然のように強いられた。従業員は、お客様とコミュニケーションを取ることが好きとは言ってもストレスが増していく。配膳ロボットの存在は、人が厨房と客席を行き来する概ね4~5往復を1往復で済ませることができる。つまり、これまで強いられた「肉体労働」という負荷の部分を軽減する役割を果たしている。

配膳ロボットは、従来人間が厨房と客席を4~5往復していたものを1往復で済ませることが出来る

導入した飲食店従業員の「86%」が「満足」と回答

DFAでは、配膳ロボットと一緒に働いている飲食店のホールスタッフ101人にアンケート調査を実施した。

これらのQ&Aからピックアップした象徴的なアンケート結果を紹介しておきたい。

Q その①:配膳ロボットを導入する前に、どのような不安がありましたか。(複数回答)

  • ロボットに任せるよりも自分でやった方が速いのではないか:57.8%

  • ロボットを使いこなすことができるか:51.6%

  • ロボットが正確に作業を行うことができるか:43.8%

  • サービスの質を担保できるか:35.9%

  • ロボットの故障やトラブルに対応できるか:26.6%

  • うまく業務分担ができるのか:25.0%

  • その他:0.0%

Q その②:配膳ロボットが導入されたことで変わったことがあれば教えてください。

(複数回答)

  • 配膳・下げ膳作業の負担が減った:66,3%

  • 接客、飲み物の補充など、ほかの業務に時間を使うことが出来るようになった:49.5%

  • 作業効率が向上した:38.6%

  • ロボットがいることで楽しい雰囲気になった:33.7%

  • お客様との会話に時間を使うことが出来るようになった:15.8%

  • 残業することが減った:6.9%

  • 健康的に働くことができるようになった:4.0%

  • その他:1.0%

  • 特にない:5.0%

  • 分からない/答えられない:3.0%

Q その③:どれくらい負担が減ったと感じますか。

  • 100%:3.0%

  • 80%以上:10.4%

  • 60~80%:16.4%

  • 40~60%:28.4%

  • ~20%:13.4%

  • 分からない/答えられない:4.5%

Q その④:配膳ロボットと一緒に働いてみての満足度を教えてください。

  • とても満足している:24.7%

  • やや満足している:61.4%

  • あまり満足していない:5.0%

  • 全く満足していない:5.0%

  • 分からない/答えられない:4.0%

上記、その①の「配膳ロボットを導入する前のイメージ」は、半数以上が懐疑的だったの対して、その②の「導入しての印象」は、「負担が減った」「ほかの業務ができるようになった」「お客様と会話ができるようになった」という回答が多く、とても好意的である。このように配膳ロボットを導入したことで「感情労働」の真価を発揮できるようになった、と言えるだろう。

配膳ロボットは、いまや飲食店のシーンの中に違和感なく溶け込んでいる

機体に不具合があったときの修理を俊敏に行う

DFAは日本国内における配膳ロボットのパイオニアであると述べた。これまで3500台を納入した実績から蓄積しているノウハウは大きい。

まず同社は、大手メーカーの傘下にある組織ではない。テクノロジーを支援するベンチャーである。そこで、上部組織の制約に縛られることなく、自社で配膳ロボットを普及させるためのさまざまなことを試行錯誤してきた。

これらによって、同社は配膳ロボットの導入を検討している店舗にコンサルティングが出来る。まず、同社の営業担当者が、対象店舗の平面プランを見て、配膳ロボットの動線の提案が出来る。

配膳ロボットを導入している店舗の不安要素を理解していることから、保守サポートを丁寧に行なっている。

配膳ロボットに不具合があった際に修理を行う最も簡単な方法は、その機体を預かって、メーカーに送り届けて不具合を直してもらうことだ。しかしながら、この方法は機体が戻って来るまでに1週間ないし2週間の時間を要する。飲食店では配膳ロボットありきでシフトを組み立てていることから、この方法ではシフトに穴が開くことになる。

DFAの場合は、顧客から修理相談があった場合、メーカーを介すことなく遠隔での修理もしくは訪問し修理を行うことが可能だ。このような、配膳ロボットの保守の俊敏なサービスが、顧客からの信頼感を高めている。

飲食店に配膳ロボットが普及して3年間が経過した今日、その存在が日常的なシーンとなっている。多くの飲食店では、これを導入することの検討を一度は行っているはずだ。例えば、配膳ロボットが客間に居るシーンはふさわしくないと考える「店の方針」を持つところがあるだろう。それ以外の飲食店にとって、配膳ロボットを「導入しない理由はない」というほどのメリットが存在する。

千葉哲幸

フードサービスジャーナリスト/フードフォーラム代表

柴田書店『月刊食堂』編集長の後、ライバル誌の商業界『飲食店経営』編集長を務めるなど、フードサービス業界記者歴ほぼ40年。フードサービス業界の歴史を語り、最新の動向を探求する。2014年7月に独立。「Yahoo!ニュース エキスパート」をはじめ、さまざまな媒体で執筆、書籍プロデュースを行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社、2017年発行)

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