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2023.11.28

【竹田クニ】外食産業の未来を予測:マーケティングとテクノロジーの視点から

竹田クニのインサイト

この度、FoodDeployにコラムを執筆することになった竹田クニです。

外食マーケティング・コンサルタントとして活動しておりますが、主にマーケティングとテクノロジーの接点から、いま私たちが考えるべき業界の進化・発展について様々な論点・ファクトをお話しできればと考えております。

第一回の今回は序章として、我々が持つべき時代認識と、いかなるアジェンダを持つべきなのかについて総論的なお話をさせていただき、第2回以降では個別テーマでお話を続けていきたいと考えております。

時代の変遷と外食産業

時代変遷とともに発展してきた外食産業

日本の外食産業の歴史を紐解くと、各年代で登場した成長企業・ヒット業態、トレンド、出来事は、それぞれ当時の経済情勢と並び、人口構成、消費の中心世代が持つ価値観などの影響を色濃く受けていることがわかります。

1970~90年代に生まれ成長した大手チェーンの多くは、“ヒット業態”の店舗フォーマットを出店拡大することによって業容を拡大。現場での労働集約的業務をアルバイト・パートという安価な労働力供給と業務のマニュアル化が支え、それは当時の経済動向、労働市場の中でスピーディに成長する戦略にマッチしていたと言えるでしょう。

20世紀とは真逆の経営環境

経済情勢、トレンドが変わる中…それでも、外食産業は「何とかやってきた…」。これは先人たちの素晴らしい努力の賜物であります。

しかしながら、“ゆでガエル”のごとく変わり続けた経営環境は、気づけば“20世紀とは真逆”となってしまっている。

過去の成功体験は通用しないorサステナブルではない=20世紀の成功モデルは機能不全が確定しているのだ。

コロナ禍から脱し、市場はようやく以前の活況を取り戻しつつある…今改めて時代の変化、社会の変化と共に外食業界がもともと抱えていた課題に向き合い、“創造的な取り組み”で乗り越えていくことは求められている。

環境変化はコロナ禍のずっと前から

コロナ禍という未曽有の危機は、時代が10年早まった…などと言われるが、経済のサービス化、人口減少(一方で世界は人口爆発)、高齢化、労働人口減少、所得減少…という現在の経営環境はずっと以前からわかっていたはずです。

日経ビジネス記者鷲尾龍一氏の著書「外食を救うのは誰か」の装丁には“コロナの前から瀬戸際だった”とあります。

外食経営者の発言の引用で、”コロナによって新たに起きた問題は一つもなく、すべてコロナの前から起こっていた”ともあります。

コロナ前から指摘されてきた課題

下図は、私が2017年に作成した、いわゆるPEST分析です。手前味噌ながら、コロナ禍後に議論・提言されているテーマとほぼ合致するのではないでしょうか?

マーケティングが改めて問われる

これだけの環境変化は、20世紀の成功体験を過去のものにしてしまう可能性が高い。

であるとすれば、これからの外食産業がこれからの日本の主役産業の一つとして新たな魅力をまとい、再考するためにはトレンド、業態論(それも必要ではありますが)、や、人材不足を補うためのテクノロジー活用といった対処療法ではなく、日本市場、グローバル市場、世の中の価値観、社会の在り方…といったテーマを改めてマーケティング視点で捉え直し、産業を再構築する姿勢と考え方が重要になるのではないかと考えております。

初回の今回は、今喫緊の課題としての2030年問題について、我々が持つべき論点をご紹介します。

論点1「量の不足」~供給の「制限」とテクノロジー~

今年に入ってから、「2024年問題」(物流に関わる人材・労働時間制限が招く労働力不足による物流の機能不全・コスト上昇)が盛んに報道されています。

外食業界にとっては、2024年問題もさることながら、2030年問題、2040年予測はさらに深刻な問題です。

パーソルグループのパーソル総合研究所が発表した予測によると、2030年の労働力不足は644万人に上るとされています。

出典:パーソル総合研究所

労働市場の未来推計2030-パーソル総合研究所
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/spe/roudou2030/

株式会社リクルートワークス研究所が発表した「未来予測2040」では、将来的に需給GAPがどんどん広がるシミュレーションとなっており、悲観的ストーリーながら現在の労働力供給のままではこの産業が機能不全に陥ることが確定的です。

未来予測2040
https://www.works-i.com/research/works-report/item/forecast2040.pdf

需給GAPは「数」だけでは対応不可能?

リクルートワークス研究所がこのレポートで発表している労働力需給GAPのシミュレーションを基に考えてみましょう。

出典:株式会社リクルートワークス研究所

この人材不足に対しては、外国人(特定技能・留学生)、主婦、シニア、スキマバイトetc.が当然考えられます。

現在既に、こうした労働力の調達が盛んに行われようとしていますが、そのいずれも“決め手”とはなり得ない可能性が高いです。

ベテランの不足

そしてさらに、問題は「数」だけではなく、業務習熟度の高い「ベテラン」の不足も深刻になるでしょう。

現実に物流や旅客交通の現場での不足がニュース等でも流れてきていますが、飲食店の現場でも、調理、ホール、本部…それぞれの現場で起きることが予想されます。

現場の労働力の「量」的不足だけでなく、「質」的不足が起きれば、これによるQSCの低下→顧客満足の低下も懸念されるわけです。

論点2「質の変革」~労働の「質」「あり方」の変革~

労働力の不足を「量的に」補う努力だけでは、この圧倒的な需給GAPに対応することは難しそうです。

論点の2つ目は、“労働のあり方をどう変えていくか?”です。

前述の図表に書き加えてみると、上段の需要のあり方を変えていくアプローチ(青い線・文字)が大変重要な議論であり、レストランテック=デジタル技術の活用の意味・有効性がまさにここにあると言ってよいでしょう。

出典:株式会社リクルートワークス研究所「未来予測2040」資料に筆者が追記

労働の「代替」ではなく「補完」「拡張」

飲食店業務のデジタル化は、確かに労働集約的業務をテクノロジーが代替&効率化に寄与します。

ただそれは「代替」であって、業務そのものの変革ではありません。

前述のロイヤルホールディングス会長、菊地唯夫氏は、最近の講演で以下のように述べています。

  • 「現在進行中のデジタル技術による第四次産業革命は、人の労働をテクノロジーが『補完』『拡張』するもの。」

  • 「サービス業にとってメリットが大きい。」

出典:ロイヤルホールディングス株式会社 菊地唯夫氏講演資料より

そして、過去の産業革命の歴史は、人の労働を「肉体」労働→「頭脳」労働→「感情」労働へと価値をシフトさせてきたといいます。

出典:ロイヤルホールディングス株式会社 菊地唯夫氏講演資料より

テクノロジーを提供する側が持つべき視点~「価値」の進化に寄り添う~

このような考え方、特に「論点➁」において、テクノロジーの提供側=ベンダー、コンサルタントが飲食店を支援していくことが、これからの外食産業には必要です。

これからの外食産業は、どんな『価値』を消費者&就業者に提供することによって反映していくのか?

5年、10年と継続できる飲食店経営とは?

こうした「価値」の議論が重要です。

この問いに対する指針・解決策を飲食店と共に考え、デジタル技術を手段として支援していく…という思想と行動が求められると考えます。

マーケティングとテクノロジーの接点

例を挙げると…

  • サービスの対価性(換金性)向上
    料理・ドリンクだけでなく、サービスの対価をどう市場に根付かせるか?

    ※空間、接客、ストーリーにいかに対価性を持たせるか?

    ※日本流のチップ制度はあり得るのか?

  • ダイナミックプライシング
    繁忙期、需要期に価格が上昇するモデルは成立するのか?
    ※航空機、宿泊、レジャー産業では当たり前化している

  • デジタル技術を活用した教育
    現場業務で物理的に時間を取られてしまう飲食業で、従業員体験価値を向上させられる取り組み

  • 高次元のマーケティング機能
    来客予測、顧客分析、販売促進、自動発注etc.デジタル技術を活用した高次元のマーケティング活動

  • 高次元の顧客体験価値創造
    食のパーソナライズ、エンターテイメント技術の融合(プロジェクションマッピングなど)、イミ消費・SDGs的体験価値の創造

一部ではすでに意欲的な取り組みが始まっているものもありますが、テクノロジー提供側は、こうした新しい外食の取り組みを実らせていくために、目的を共有しながら支援・伴走していくことが重要だと考えています。

第2回以降は、個別のテーマを絞って展開します! 初回の今回は、次回以降に展開するテーマを総論的にご紹介しましたが、 第2回目以降は、テーマを絞って、事例研究やオピニオン発信を行っていきたいと思っています。

ご覧になられた感想、ご意見、こんなテーマをやってほしいといったご要望など、いただければ幸いです。 皆さま、どうぞよろしくお願いいたします!

<竹田クニプロフィール>

株式会社ケイノーツ 代表取締役
一般社団法人レストランテック協会 顧問
ホットペッパーグルメ外食総研 研究員
日本フードサービス学会 会員
日本フードビジネスコンサルタント協会 専務理事
早稲田大学校友会料飲稲門会 常任理事
公益法人全国焼肉協会 賛助会員
一般社団法人日本居酒屋協会 賛助会員
一般社団法人居酒屋甲子園 サポーター

早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。

著書:「外食マーケティングの極意」増補改訂版2019.12言視舎

著書:「食品業界のしくみとビジネスがしっかりわかる教科書」(共著)技術評論社

竹田クニ

株式会社ケイノーツ

代表取締役

早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。

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