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2026.01.21

2026年以降の骨太トレンド デジタル技術が寄与する感情労働のアップグレード 

竹田クニのインサイト

外食トレンドを占う記事は多く見られますが、本コラムでは「次は○○居酒屋が来る!」「新たな映えスイーツは?」といった短期のブームや流行ではなく、世の中の変化やテクノロジー進化によって生まれる「市場の変化と業界の対応」についてまとめたいと考えます。

2026年以降の市場を取り巻く「4つの不可逆的な変化」

以下はもはや“言わずもがな”ではありますが、近年の変化は不可逆的であり、20世紀の成功体験にその解を求めることは出来ない。新たな市場に対する01(ゼロイチ)的な起業・事業創造が求められる。

例えば労働力の枯渇では外国人や休眠労働力、スポットワーカー活用、また物価高に対しては価値相応の適正な対価獲得・・・といった課題設定があるが、本コラムでは省力する(過去に詳述したコラムをご参照いただきたい)。

テクノロジー活用の潮流・・・「肉体労働」「頭脳労働」「感情労働」の在り方、行方

以上の環境変化に対して、やはり最有力の取り組みはでテクノロジー活用である。

肉体労働はロボティクスが、頭脳労働はバックヤードシステムの進化、シームレス化が進み、更にAiによって飛躍的にパフォーマンスが向上。そして感情労働は「ヒトのチカラ」を活かす労働として、テクノロジーによって補完・拡張を受けながら進化してゆく。

外食産業は、こうした取り組みによって労働集約的業務の集中から脱し、ホスピタリティ産業へと再興・深化してゆく・・・これが現在語られているDXの方向性だ。

感情労働の「進化した形」とは?

上図は非常にわかり易い概念整理であるが、もう少し具体的に考えてみる。

テクノロジーが補完・拡張する感情労働の姿とはどのようなものになるのだろうか?

  1. 時間創出によるもの

    →オーダーテイクやバックヤード業務から解放され時間創出できたホールスタッフは顧客のテーブルに伺って料理・食べ方説明、おすすめメニューやドリンクペアリングの提案、その他会話

     厨房では、より手の込んだ調理法や盛付、顧客の好みを反映した個別対応など

  2. 情報力アップによるレベルアップ

    →来店履歴、注文履歴を接客に生かす

     より詳細な顧客プロフィールの管理(来店目的、家族構成、好み/苦手食材など)

感情労働は進化しながら、新たな時代が求める「価値」を創造してゆく、これが今外食には求められている。
その新たな時代の価値概念が「ウェルビーイング」である。

ウェルビーイング「SDGs」から「SWGs」へ!

筆者は2017年頃より「モノ消費」⇒「コト消費」⇒「イミ消費」を提唱し、ソーシャルグッドな消費価値観について発信してきましたが、近年ではこのイミ消費も含む次世代の消費価値観の概念として「ウェルビーイング」が提唱されはじめている。

ウェルビーイングとは
身体的・精神的・社会的に満たされ、幸せを感じる良好な状態を指す概念。
単に病気でない状態(健康)を超え、人生の意義や充実感、自己実現、良好な人間関係、環境との調和など、多角的な要素を含み、近年は企業経営やSDGs(持続可能な開発目標)でも重視されています。 

主な要素
身体的健康(Physical Health): 病気がないだけでなく、活力があり、心身が健やかな状態
精神的健康(Mental Health):ポジティブな感情、ストレスへの対処能力、心の安定
社会的つながり(Social Connection):他者との良好な関係性、コミュニティへの所属感
人生の意義・目的(Meaning/Purpose):自分の人生に価値や意味を見出せること
達成・成長(Accomplishment/Growth):目標に向かって努力し、成長を実感できること

SDGsが平等や公正、脱貧困などソーシャルグッド的な持続可能な目標を提示しているのに対し、ウェルビーイングはSDGsを進めた結果人々が抱く持続的な健康や幸福が言及されていることが特徴。
近年ではこのウェルビーイングがSDGsに続く次世代概念として取り入れられ、また採用する企業が増えてきました。

SWGs(Sustainable Well-being Goals)
「人・社会・地球の持続可能なウェルビーイング(幸福・豊かさ)」を目指す目標群

例えば外食産業においては、これまでも健康や安全、環境保全、他者支援などは価値のキーワードでありましたが、SWGsではより進化、踏み込んだ考え方として…

など、こうした要素が店の価値&企業価値として重視されるようになる。

ホスピタリティ・カンブリア爆発では何が起きるのか?

お気づきの通り、「インテグリティ」はSWGs=次世代の持続可能概念の中でも重視されている。

DXと裏腹?

市場の一部から聞こえてくる、DX推進における課題があります。

デジタル化が進み、労働集約的な業務から解放される一方で、スタッフの受動的な業務態度、集中力の欠如を課題として指摘する経営者・有識者は多い。

  • スマホオーダーを導入したところ、スタッフのホールへの注意力が下がり、“料理を運ぶ仕事”感が強くなった

  • お客様との会話やおススメなどをもっと行ってほしいが、あまり自発的にやろうとしてくれない

こうした声は皆さまの近くの経営者、お店でも聞かれるケースはあるのではないだろうか?

著名な接客コンサルタントの遠山啓之氏(株式会社WARA‐L 代表取締役)はこう話す。

 ♪スマホ/タブレットオーダーを導入して顧客満足度が下がるのは、顧客満足を獲得できるような接客が“もともと”出来ていない。

もともと出来ていなかった理由は時間が無いからではなく、そういう接客を教えられていないし、やろうとも思っていない・・・

であるとすれば、時間が出来たからと言って「やる」とはならないのは必然。

今後感情労働のレベルアップによって進化するためには、スタッフの仕事観、働く目的・意義、具体的なスキル・・・こうしたものを育む取り組みが必要になってきそうだ。

インテグリティを「育む」取り組み

「ヒト」でしか実現できない「おもてなし」「気配り」「心を通わせる会話」は、スタッフの「真摯さ」「誠実さ」「本気度」によって自発的にとりくまれるもの。
それを育むためには以下の取り組みが重要と考えます。

学びは優れた中小企業にあり

こうしてみていくと、企業の「本気度」「真摯さ」「誠実さ」が伝わり、従業員の「心」を動かしていくことが、従業員のインテグリティを育み、「感情労働」を進化させるこつながると感じます。

「インテグリティ」を実際に言葉として理念、MVVに採用している外食企業は多くはありませんが、概念に非常に近い取り組みは中小企業に多く存在します。
写真は居酒屋甲子園で全国大会に出場する店舗の「ミッションステイトメント」「バイブル」「クレド」など。

こうした店舗では、抽象度の高い理念やMVVが上滑りすることなく、具体的な日々の行動に落とし込まれ、現場で活き活きと活用されています。

学びはこうした優れた店舗の取り組みにあり、大手チェーン等も参考にすべき素晴らしい内容がそこにあります。

竹田クニ

株式会社ケイノーツ

代表取締役

早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。

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