
2025.10.17
「第五の消費」って何だ?~次世代の外食産業の軸となるコンセプト~
竹田クニのインサイト消費における価値観変化は進んでおり、本コラムでも「第一の消費〜第四の消費」へ「モノ→コト→イミ消費」など、特にミレニアル世代、Z世代が消費の主役世代となる現代の消費価値観について論じてきました。
今回は、環境変動、激動の経済、国際紛争の中、次代に向けて生まれつつある消費の概念として、著名なマーケターである三浦展氏が提唱される「第五の消費」について紹介し、外食にも非常に影響が大きい消費価値観の変遷について考えてまいります。
消費価値観変化と外食業界の動向
下図は筆者が作成した消費価値観変化を年表形式でまとめたもの。

<1970年代>
高度経済成長期には、まだ「モノ」が充足され切っておらず、増える人口と所得を背景に、モノが大量に作られ消費される。
人々の生活は「洋式化」が進み、チェーンストア理論の上陸によって欧米式のレストランが増加。
<1980年代>
経済成長により日本のGDPは世界2位。バブル経済と呼ばれる空前の好景気に沸く。
人々は「モノ」で差別化することに充実感を感じ、高級車、ブランド品、トレンディなイタメシなどが流行した。
<バブル崩壊以降>
長引く景況低迷は消費を大きく減退させ、「モノを売るのではなく体験を売れ!」といった「コト消費」の重要性が叫ばれる。
<世界的な経済減退→ソーシャルグッドへ>
世界的景気減退を招いたリーマンショック(2008年)、ちょうどその頃から日本は人口減少へ移行。
2011年の東日本大震災を機に他者支援や環境配慮など、道徳、道義、倫理を重んじる消費価値観が高まり、多様性尊重、弱者の支援、環境保全などSDGsの概念と共に高まるソーシャルグッドは、消費の在り方を問う「イミ消費」として人々に定着しつつある。
モノ消費→コト消費→イミ消費の変遷と「第一→第四の消費」の変遷は一致する
「第四の消費」は、著名なマーケター三浦 展(みうらあつし)氏が2012年に発表した消費価値観の変遷に関する概念です。

要点をまとめると…
第一の消費──明治~戦前 富国強兵 ~急速な近代化と国家の発展~
第二の消費──戦後復興~高度経済成長、オイルショック 〜大量生産・大量消費~
第三の消費──低成長~内需拡大~バブル~小泉改革 ~格差拡大・成熟経済~
第四の消費──小泉改革~現在 ~多様化とソーシャルグッド〜

こうしてみると、筆者が提唱するモノ→コト→イミ消費の変遷と一致点が非常に多い。
第五の消費
「第五の消費」は近年三浦氏が新たに提唱した概念。
「第五の消費」=“豊かさ=モノの量”から、“心身の充足・つながり・持続可能性”へ重心が移った次世代の消費
精神的な満足感や体験を重視→場、コミュニティ、参加型イベント、に金を払う
孤独からの解放→デジタルによる利便性、多様化の一方で進む「孤独」から解放する
ウェルビーイングの重視→安心、やさしさで心身の健康や幸福感を追求
地域に根差した消費や、働き方を重視→身近で小さい、心地よい、顔の見える関係
街づくりへの関心→地域への想い、街での交流、コミュニティ
<背景>
核家族化・単身世帯化→近隣関係の希薄化
多様性尊重、個性重視が進み他者との関係資本が減少
デジタル化による弱く・緩い結びつき
モノが充足した後に残る、心の空洞が生活満足度を下げる
コスパ、タイパ、職場分散で生活リズムが多種多様に
※三浦展氏の著書・記事等から筆者がまとめた
これからの外食産業への示唆が大きい「第五の消費」
「第五の消費」の詳細は書籍等の発売を待ちたいが、現時点で氏の他著書、記事等から見える「第五の消費」概念は以上のような考え方だ。
こうした考え方は近年外食業界でリーダーシップをとっている繁盛店の取り組みと合致する点が多く、驚かされる。
近年、飲食店の「顧客体験価値」として重視され、多くの繁盛店に見られる要素を列挙すると・・・
地産地消・フードロス削減が見える透明な店づくり、生産者の顔・ストーリーを可視化したメニュー
小ポーション/少量多皿、空間価値(居心地・音・照明)
コミュニティ食堂/子ども食堂など社会参加型
地域資源を活用した食器・什器
第三の居場所化:長居OKの設計、相席テーブル、読書会・朝活・子連れ時間帯の設定
“人 with テクノロジー”:テック活用の一方で、ヒューマンな接客重視
そして、こうした経営においてはKPIも変化すると考えられる
常連率/再来店感覚の短縮、イベント参加者数、滞在満足度
会話発生数(スタッフ→客、客同士)、名前呼び率、コミュニティ投稿量
一人来店の居心地評価(単身利用者の滞在時間・再訪)など
居酒屋甲子園との共通点
居酒屋甲子園は全国からエントリーがあるが、地域の飲食店に「第五の消費」的な優れた取り組みが見られる。
居酒屋甲子園のスローガンは・・・
居酒屋から日本を、世界を元気にする!
共に学び、共に成長し、共に勝つ!
特に地方では、飲食店=地域の食の最終ランナーとしてのビジョンを強く意識した店が多く見られ、自分たち飲食店が地域の資源を新たな価値に変換・増幅し、お客様に素晴らしい体験価値を提供する考え方がプレゼンされる。
一例をあげると
特攻チキン野郎(鹿児島)
茶ブリ、黒豚、岩ガキ・・・鹿児島を満喫するメニューのこだわり

特攻チキン野郎(鹿児島中央/居酒屋)<ネット予約可> | ホットペッパーグルメ
鳥もん米もんうまいもん(鹿児島)
地域活性企業を標榜し、子ども達から憧れられる飲食人を目指す

鳥門米門うまいもん。谷山店(谷山/居酒屋)<ネット予約可> | ホットペッパーグルメ
燕三条Bit(新潟)
食材、カトラリー、調度品もMade in 新潟にこだわり、新たな価値を創造する

Tsubamesanjo Bit 燕三条本店(燕三条駅周辺/イタリアン・フレンチ)<ネット予約可> | ホットペッパーグルメ
ほんの一例ではありますが、こうした店に見られるのは、地域の資源・魅力を飲食店が発掘・最編集・魅力化=新たな価値として創造し、地域を代表する企業として存在しようとする「志」だ。
また、孤食への対応、子ども食堂への取り組み、そして“人withテクノロジー”でデジタル機器を活用した体験価値向上など、次代のテーマにクリエイティブに取り組む飲食店ベストプラクティスを数多く見ることが出来ます。
「第五の消費」を見据えた構造改革と新たな産業づくりへの参画
現在の経営環境は非常に厳しく、人材不足やコスト高騰に対するテクノロジーへの役割と期待は大きい。
ベンダーはそのソリューションにおけるパートナーとして貢献するのはもちろん大切。
さらに踏み込んで言えば、ベンダーが次世代に向けた外食産業、食産業の産業構造改革・新たな産業づくりの主役のひとりとなる「志」を持ちたい。
「第五の消費」はその大いなるヒントになると考えます。

竹田クニ
株式会社ケイノーツ
代表取締役
早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。










































