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2026.01.15

それ、インテグリティ不足です!「標準」以上、「突き抜け」未満への処方箋 

竹田クニのインサイト

近年、「インテグリティ」という言葉が注目されています。
「真摯さ」「誠実さ」「高潔さ」などと訳されるこの言葉は、コンプライアンスを超えた倫理観として企業ガバナンス・マネジメントの世界で言われてきましたが、外食DXそしてDXを支援するプレイヤーにとって改めて重要な概念になってきています。

インテグリティとは何か?

インテグリティとコンプライアンス

「インテグリティ(誠実さ・真摯さ)」をビジネスの文脈で提唱した主な人物は、経営学者のピーター・ドラッカーと投資家のウォーレン・バフェット。
ドラッカーは「真摯さの欠如は組織を腐敗させる」と述べ、マネジメント層に不可欠な資質として重視し、バフェットは「高潔さ(インテグリティ)」が知性や活力以上に重要と説いています。

ビジネスにおいてはコンプライアンスと対比がよく用いられますが、コンプライアンスが明確かつ他律的なルール遵守の考え方であるのに対し、インテグリティは抽象的かつ自律的・能動的な考え方であり、それがサスティナブルな企業価値向上に有効と考えられています。
つまり明確な規則・ルールが無くとも組織に浸透した理念や文化で個々人が自律的に考え適切な行動がとれる・・・という考え方であります。

インテグリティとは〜企業の変化対応力を高める組織文化づくり〜 株式会社ヒューマン・バリュー

企業の理念、思想を問う概念としての近年の解釈

日本では、日経BP社が2020年より毎年「ESGブランド調査」を発表、その中で「ESG(環境・社会・ガバナンス)と「インテグリティ(誠実さ)」において優れた取り組みを行っている企業をランキングしています。

ESGブランドランキング’25 | 日経ESG

インテグリティを謳う外食企業

外食企業においてインテグリティを明確に表現している企業には、日本マクドナルドやスターバックス・コーヒー・ジャパンがあり、企業価値観や行動規範におい明文化され、コンプライアンスを超えた「正しさ」が定義されています。

またインテグリティという言葉そのものは明示していないが、同様の考え方を積極的に提示している企業としては…

・デニーズジャパン(旧セブン&アイ・フードシステムズ)・・・「信頼と誠実」

・モスフードサービス(モスバーガー)・・・「誠実と奉仕」

・アレフ(びっくりドンキー)・・・「正直な商売」「安全・安心」

などがあります。

中堅企業においても、(株)ファイブグループ(「働きがいのある企業ランキング」「ストレスフリーカンパニー」など受賞多数)がMVVの中で明示をしており、インテグリティの考え方は外食企業に浸透しつつある。

私たちの存在意義 | 会社を知る | 日本マクドナルド株式会社
5IVE GROUP|“楽しい”でつながる世界をつくる飲食カンパニー  株式会社ファイブグループ

「感情労働」の価値向上に向けて

従来ヒトが担ってきた肉体労働、頭脳労働をテクノロジーが「代替&拡張」し、これからの外食産業がホスピタリティ産業として進化発展するためには、「感情労働」での価値向上が益々重要となる・・・このことは多くの外食経営者が共感するところ。

現場での「感情労働」において、マニュアル、コンプライアンス遵守だけではなく、従業員が状況に応じて自律的・能動的に考え、臨機応変に適切な対応によって顧客体験価値を高めることは、ホスピタリティ産業の進化のためのより重要なテーマとなってくるでしょう。

ベンダーにとっての「インテグリティ」とは?

インテグリティ=「真摯さ」「誠実さ」「本気度」・・・は外食DXを支援するベンダーにとっても非常に大切な考え方になっていると考えます。

ベンダーが提供するプロダクトは、各社で考え抜かれた性能(現場で十二分に性能を発揮するであろう機能)を持っており、各社それぞれに成功事例を持っていますが、営業活動によって導入実績に差が生まれるのはなぜか?
そこに企業そして個々人の顧客接点における「インテグリティ」の課題があるように思います。

「標準」以上、「突き抜け」未満

以下のようなケースはないだろうか?

顧客接点において・・・

  • 基本的に真面目でミスもないが、成果が充分出ない

  • 標準的な行動は出来、特に問題は無いが、業績が芳しくない

  • KPI、目標指標に対して真面目に取り組んでいるが、営業成績は期待値以下

正しい行動の一方で、成果に結実しない・・・行動/成果のコンバージョン不全は顧客接点現場で交わされる「会話の質」に原因があります。

  • 商品の機能やとおり一遍の効率化の説明ばかりで、店の理解が不足

  • 他社事例を話すも、規模や業態、課題の性質が異なるがゆえに相手に響かない

  • 担当者の業界知識が不足し、相手に親近感を持たれない

    (話題の店の情報、店の当たり前と現実への理解、業界用語の理解、共通の知り合いなど)

  • 自分の専門領域外の飲食店の話題を知らない、関心が薄い

こうした印象を相手にもたれてしまった場合、印象・記憶にも残らず、数多く訪れる営業のOne of Themとしかならない。

一方、多彩な現場に顔を出し、自身も楽しみながらネットワークを広げ、営業機会を獲得。突き抜けた業績をたたき出す人が少なからず居ます。
彼らは新店や話題の店に特に仕事・用事が無くても訪問して人気の秘密を肌で感じたり、業界団体の懇親会などに積極的に参加することで自身の知識・見識を高め、時には外食経営者と個人的で下世話な会話を楽しみ、そして何より自身が外食が大好き・・・そんな行動が共通しています。

こうした彼らが、営業機会で話す内容には、相手(飲食店)が聞いてみたいと思わせる“利他的な”情報があり、立場や大変さを理解してくれている安心感がそもそもにじみ出ます。

「業界の中の人」「自分達の業界の仲間のひとり」そんな認識が生まれれば、機会は一期一会ではなく、雪だるま式に厚みを増してくるのは当然で、彼らの行動は高い業績・・・「突き抜け」に繋がります。
これこそが、ベンダーにとって必要かつ重要な「インテグリティ」なのです。

営業効率、営業コスパの課題はどこに?

ベンダーの経営者にとって、目指す成果に対して営業リソースを何にどう使うか?どのくらい投資するか?は悩ましいところ。
セミナーや展示会出展でのリード獲得は明確に数値が分かり、内容の改善PDCAの解像度も上げやすいが、顧客接点のパフォーマンスについては、量的観点は見ることが出来ても質的観点は可視化&課題フォーカスがやり難い。
実はこの「質的」部分に「効率」「コスト対成果」の重要なカギがあると筆者は考えています。

一見、前述の“外食大好きさん”の日常は、ピュアセールスタイムだけでない無駄だらけの時間を過ごしているように見えるかもしれません。しかしながらそこで得た、太らせた知識・見識は、顧客接点の「質」を大きく左右するものと考えられ、それは時に「量的指標」・・・リード獲得数やアポイント数といった指標を大きく凌駕する要素となり得ます。

そして考えるべきは、こうした行動の「遅効性」であります。
“外食大好きさん”の行動は、行動単一や短期で見ると直接的に商談と関連していると思えないものも多く、効率は良いと感じません。しかしながら中期・長期ではそれが「顧客関係性資産」を形成し、その後の効率を大きく向上させるという構造になります。

「よそ者」「わか者」「バカ者」

昔からよく言われるイノベーションを引き起こす人材要件の例え。
外食産業にとってテクノロジー提供者は必要な「よそ者」でありますが、「バカ者」がまだまだ足りない。
必要な「バカ者」はFOOL、STUPIDのことではなく、Enthusiast、Mania、オタクの種類。

「よそ者」・・・業界慣習や過去の経験にとらわれずに考え、行動することが出来る
「わか者」・・・未来志向で新しいものに躊躇なく取り組める
「バカ者」・・・顧客愛、業界愛が強く、自分の損得ではなく自律的・利他的に行動できる

こう解釈するのであれば、これら3つの性質を備えることが業界変革・進化発展のためには大切な要素となります。

テクノロジーは確かにこの業界を変えていく。
しかしながらテクノロジー提供者側の論理・推論で自社プロダクトのセールス活動を行い、深い顧客&業界課題への理解、“我が事”としての姿勢&思考・行動が伴わずに行動すれば、それはむしろ「FOOL」「STUPID」になってしまうのかもしれません。

外食DXを提案するベンダーにとって「インテグリティ」は業界深耕のために不可欠であり、一人一人の行動の積み重ねが業界内での企業ブランドを左右し、継続的な業績拡大にもっとも重要な土台を形成してゆくものだと考えます。

竹田クニ

株式会社ケイノーツ

代表取締役

早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。

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