
2024.11.22
パーシャル・デジタルの可能性 ~顧客に寄り添うデジタル活用の在り方~
竹田クニのインサイト飲食DXを推進する人々にとって「未来」の解像度はかなり上げってきていますが、デジタルに強い「IT脳」のひとが描く「未来」と、現場が目指す「ありたい姿」にはまだまだGAPがあるようにも思います。
そのGAPの着地点としてパーシャル=部分的活用が、実は現場の「今」にとって最適解だったりする・・・。
今回はそんな視点から、パーシャル=部分的デジタル活用の事例を見てみたいと思います。
デジタル化の現実
㈱リクルート ホットペッパーグルメ外食総研が毎年調査している「DX調査」では、飲食店のデジタル化の現実が垣間見える。

出典:㈱リクルート ホットペッパーグルメ外食総研
飲食店経営者のDXに対する興味・関心と導入状況の実態調査(2024年3月調査)
2030年問題に象徴される年々厳しさを増す人材採用難。食材、エネルギー上昇、社保適用拡大、賃上げによるコスト上昇・・・などなど「供給サイド」の逼迫に対して、DXは最重要施策であることは言うまでもない。しかしながらこうした調査結果とは乖離があるようにも見える。
筆者の考えでは、このGAPこそがDXという潮流と、飲食店が目指す「ありたい姿」のGAPに思えるのです。
スマホオーダーシステム→スタッフによる入力目標50%の意味
先に行われた第17回居酒屋甲子園 全国大会入賞店舗である「渋DRA」(株式会社DREAM ON)では、スマホオーダーシステムを活用しながら「スタッフによる入力率50%」を設定している。
この理由は、スタッフが出来る時には極力スタッフがお客様とコミュニケーションを取りながらオーダーを取る…であり、人?かデジタルか?という○or✕の二択ではない。
繁忙時や遠隔席、追加ドリンクなど、スマホオーダーの利便性、強みを生かしつつも、同店が持つ「接客の強み」も充分に発揮できるというハイブリッド運用だ。

第17回居酒屋甲子園 全国大会 「渋DRA」のプレゼンの様子
お客様の手書き伝票→お客様の入力へ進化中のサイゼリヤ
サイゼリヤでは近年、各テーブルにセットされた「紙伝票」にお客様がメニューブックを見ながら商品番号を自ら記入し、スタッフに渡す・・・というアナログな発注方法が採用されてきた。

ファミレス各社がタブレットオーダー、スマホオーダーを続々と導入する中、なぜサイゼリヤはこの方式を採用するのか?
大変不躾ながら、ファミレス業態に特別際立った接客価値を求める人は多くはないだろうし、呼び出しベルで呼ばれてスタッフがテーブルまで赴き注文を確認する工程は、従業員負荷軽減に取り組む昨今の大型店の取り組みとは逆にも見えた。
最近では、お客様個人のスマホへオーダーシステムを表示させ、そこへメニューブックから商品コードを入力するスタイルへと進化しているが、「紙」のメニューブックとの“併用”スタイルは依然として健在である。

サイゼリヤの顧客接点DXの歩みは、むしろ同社の「顧客ファースト」が故であると推察いたします。
店側の省力化・省人化に効果的であったとしても、顧客体験価値が下がってしまうというマイナスは避けたい。
これがまさに経営者・店長がデジタル導入に逡巡するポイントであり、DXを推進する事業者の理想と、現場の現実のGAPかと思われる。
―パーシャル=部分的なデジタル化が最適解である可能性
こうして考えてみると、業態や規模によって様々に事情が異なる外食産業において、冒頭にご紹介したデジタル活用比率は必ずしも「低い」わけではないかもしれない。
大きな時間軸で考えれば「デジタル化率」は上昇していくことは間違いないだろう。
しかしながらそのためには、逡巡する経営者・店長に寄り添い、「人orテック」ではなく、部分的にデジタルを活用する“着地”=最適解を提案することが必要かつ重要なはず。
デジタル活用は、「省力化・省人化」「データの一元化」「一覧化」「課題の可視化」etc.など様々なメリットを飲食店にもたらすことは間違いないが、飲食店にとって最重要である顧客接点を担う取り組みとして、“○か✕か“ではなく、最適な「部分的活用=パーシャル・デジタル化」を提案できることは、外食産業にとって大変有効かつ進化を促すものになると考えます。

竹田クニ
株式会社ケイノーツ
代表取締役
早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。










































