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2025.04.23

【竹田クニ】人口は減るけど“おひとりさま”は減少しない!? デジタルが変える“おひとりさま”市場の動向

竹田クニのインサイト

50.26%――これは東京都内の世帯数のうち、「単身世帯」と呼ばれる“ひとり暮らし世帯”の比率。
日本全国でも単身世帯率は約37%と高く、しかも年々増加するトレンドにあります。
この単身世帯増加トレンドは、全体の人口減少に対して遅れて進行しているため、人口は減少していても“おひとりさま”は増加するという現象が、特に都市部では今後15~20年ほど続くと考えられています。
では、この市場の変化に対して外食産業はどのような対応や商機を見いだすのでしょうか?

連日大行列のうどんチェーンにみる「おひとりさま」の堅実市場

すかいらーくグループが新たに関東へ展開する「資さんうどん」。
ニュースで取り上げられ、連日大行列と盛況だということで、筆者もさっそく訪れてみました。
水曜日の14:00過ぎ、行列は20名ほど…と思ったら、店内のウェイティング席にも20名ほど。回転が早いようで、約20分ほどで着席できました。

半分くらいが一人客!?

最初に気づいたのは、一人客が多いこと。しかもシニアの一人客が目立つ印象でした。
考えてみれば「うどん」は家でも手軽に作れますが、天ぷらや肉などバリエーション豊富なトッピング付きのうどんは、内食ではなかなか実現が難しく、むしろ割高になる場合もあります。
日本人のソウルフードの一つとしての「うどん」――その市場の厚みを改めて感じるエピソードでした。

ひとりめし市場の実態

(株)リクルート ホットペッパーグルメ外食総研の「外食市場調査」によれば、夕食(夕方以降の食事)の22.5%がおひとりさまで、しかも年々増加傾向にあるといいます。
この調査では「タウン別」という商圏概念を用いて分析しており、具体例を挙げると…

  • 中野・高円寺……41.9%

  • 秋葉原・神田・お茶の水……32.4%

  • 武蔵小杉……36.0%

と、一人暮らしが多いエリアや、居住者は少なくても勤務者・来訪者が多いエリアでは、非常に高い数値を示しています。
さらに、リモートワークの浸透や会社宴会の減少傾向、食の外部化率の高値維持など、都市部のライフスタイル変化がこの「ひとりめし」増加を加速していると考えられます。
ひとりめし市場推移※(株)リクルート ホットペッパーグルメ外食総研

東京都の単身世帯数は半数を超える!(東京新聞記事)
 https://www.tokyo-np.co.jp/article/186879

全国的に単身世帯数は増加(日本福祉大学)
 https://www.fukushi-shinsho.com/2018/11/000093.html

新たな客層へのチャレンジ:デニーズ「めざせソロデニマスター」

デニーズが非常に興味深いキャンペーンを展開中です。
ファミレスは幅広い客層をターゲットにしているがゆえに、戦略が全方位的になりがちという難しさがありますよね。
筆者としては、以前から…

  • 女性ひとりや高齢者ひとりでも気軽に入れるのが、ファミリーレストラン(FR)の強み

  • ひとり客とひと口に言っても、ターゲットや利用シーンをより細かく分類して対応することが有効

    …と、さまざまな場で提言してきましたが、今回のキャンペーンはまさに、きめ細かなマーケティングの実践例といえそうです。

リリースには、同社執行役員の「今までにないアプローチで新たなお客さまを増やしていくことにチャレンジする」というコメントがあり、その意気込みが伝わってきます。

デニーズ めざせ、ソロデニマスター

ペルソナ&シーンが具体的に描かれている!

本キャンペーンでは、ペルソナを明確に設定し、「こんなシーンで、こんな気分で、こんな使い方を…」というように、食事だけでなく過ごし方や体験の提案が打ち出されています。
単なる商品キャンペーンではなく、利用シーンを具体的に提案する外食チェーンの事例は珍しいかもしれませんね。デニーズの“本気度”がうかがえ、今後の展開に注目です!

ひとりめしに対応した商品企画、UI、体験価値の工夫を

ひとりめしには特有の体験価値があり、それを支援する取り組みが重要だと考えます。例えば…

  • カウンター席や2名掛けの小テーブル、視線が交錯しにくいレイアウト

  • ハーフサイズ・もう一品・トッピング・小ポーションなど、おひとり様ならではの満足感を高めるメニュー設計

  • 追加オーダーや調味料・ソースの追加をスムーズに行える仕組み

  • 選びやすい画面設計を取り入れたモバイルオーダーやタブレットオーダー

  • セルフ会計

デジタルツールを提供するベンダー側も、こうした市場背景とUI上の配慮を理解しながら開発していくことが必要でしょう。

M&A案件に見る「食事業態」へのシフト

2024年に行われた外食業界のM&Aを一覧化した情報が公開されていますが、それを見ていると、飲酒業態を中心に展開してきた企業が「食事業態」を獲得するケースが目立つように思います。
飲酒シーンの縮小やアルコールダイバーシティによる業態の世代交代、そして前述のうどんチェーンに代表される「食事需要」の厚み。
人材・労働力不足やコスト高騰といった経営課題を抱える中、これらの動向を後押しするためにも、デジタル活用の進化は欠かせません。

レストランテックが外食業界の再興に寄与できることは、単にツールを提供するだけにとどまりません。市場を正しく理解し、消費者の体験価値を高める優れた知見をベンダー側がもち、クライアント(=飲食店)と共創していくことが重要だと考えます。

竹田クニ

株式会社ケイノーツ

代表取締役

早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。

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