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2024.04.15

JUICERによる飲食店の価格革命:顧客満足を維持しながら実現するダイナミックプライシング

海外飲食DXニュース

値上げをしつつ、客数を減らしたくない…このような絶妙なバランスを取った価格調整の実現に取り組んでいるのがJUICER(ジューサー)です。

2024年4月9日、スタートアップのJUICERがシードラウンドにおいて530万ドル(約8億1054万円)の資金を調達したと発表しました。

JUICERは、飲食店向けにダイナミックプライシング(変動料金制)と、収益管理のソリューションを提供しており、調達した資金でツールとデータ開発を加速する計画です。

需要に合わせて価格を変えるダイナミックプライシングの導入は、アメリカの飲食業界でも波紋を呼び、慎重な対応が求められています。

インフレにより飲食店も値上げが当たり前になっているものの、一歩間違えば常連を失うリスクがあるからです。

理想的な値上げは、利益を確保しつつ、顧客満足度が下がらない価格にすることでしょう。

このような絶妙な感覚を伴った値決めは、経験や勘に頼りながら手探りで取り組むしかありませんでした。

対してJUICERは、データとAIによるアプローチでダイナミックプライシングを進めています。

JUICERのダイナミックプライシングはデータ主導のハッピーアワー

ダイナミックプライシングはデータ主導のハッピーアワー

JUICERは、提供しているダイナミックプライシング(変動料金制)をデータ主導型の「ハッピーアワー」のようなものと説明しています。

このダイナミックプライシングは、AIが過去の売上データから飲食店のメニュー価格を時間帯ごとに自動調整します。

ただし、調整された価格は、顧客が予測可能な値段にしているのが特徴的です。

そのため、顧客はピークタイムとアイドルタイムの価格差を認識しつつ、どちらの料金で食べるか決めることができます。

言い換えると、ピークタイムとアイドルタイム、どちらの価格も顧客が納得できる範囲に調整しているといえるでしょう。

この価格の透明性により、価格調整に対する批判を避けることができ、5~10%の売上増加が期待できるとJUICERは説明しています。

まとめるとJUICERのダイナミックプライシングは、店舗と顧客双方にとってマイルドな割増料金と割引料金を提供する仕組みといえるでしょう。

このアプローチは、すでに一定の評価を得ています。

2024年1月には、スタートアップ「ItsaCheckmate(イツァ・チェックメイト)」がプラットフォーム強化のために、JUICERと提携してダイナミックプライシング機能を実装しました。

今後、さらに多くの飲食店やプラットフォームでJUICERのダイナミックプライシングが受け入れられたら、収益構造に大きな変化をもたらすかもしれません。

対応を間違えると非難殺到のダイナミックプライシング

非難殺到のダイナミックプライシング

一般的にダイナミックプライシングは、ピークタイムには割増料金、アイドルタイムは割引料金が適用されることが多いです。

身近なところでは、ホテルの宿泊料金や航空券であり、料金は需要や時期に応じて変わります。

しかし、飲食業界ではダイナミックプライシングの導入にあまり前向きではありません。

2月27日、ダイナミックプライシングの試験運用の計画を発表していたハンバーガーチェーンのWendy's(ウェンディーズ)は、SNSを中心に非難が集中したため、同計画を撤回しました。

アメリカにおいても、ダイナミックプライシングの導入はデリケートな問題といえるでしょう。

それでも、前述したようにJUICERは価格の透明性を保つことで、顧客からクレームや非難を避けることができると主張しています。

ダイナミックプライシングは身近な存在

ダイナミックプライシングは身近な存在

飲食店でのダイナミックプライシング導入は、ハードルが高いと考えるのは不思議ではありません。

しかし、すでに私たちは多くの場面でダイナミックプライシングを経験しており、利用しています。

前述したホテル業界や航空業界だけでなく、プロ野球やサッカーJリーグの観戦チケットもダイナミックプライシングが導入されています。

他にも、東京湾の横断する有料道路「東京湾アクアライン」では、通行料を時間帯によって変える制度の試験導入を実施しました。

ETCの深夜割引も時間に応じて料金を変えています。

さらに身近な例では、スーパーマーケットのタイムセールも一種のダイナミックプライシングといえるでしょう。

私たちは、割引価格に関しては喜ぶものの、割増料金になると批判的な対応をしがちです。

しかし、紹介したように、需要や時間に応じて料金が変わる制度が多くの業界に存在します。

つまり、意識していないだけでダイナミックプライシングは身近にあります。

こう考えると、飲食業界だけダイナミックプライシングが普及していないほうが不自然かもしれません。

資金調達でJUICERがダイナミックプライシングの開発を加速

資金調達でJUICERがダイナミックプライシングの開発を加速

4月9日、ダイナミックプライシングを手がけるスタートアップ「JUICER」は、シードラウンドで530万ドルの資金を確保しました。

ダイナミックプライシングは、需要に応じて価格を変動させる仕組みですが、飲食業界では馴染みがないため、大手でも導入には慎重な対応が求められています。

JUICERは、顧客が予想できる価格に調整することで納得感を高めて、批判を浴びないダイナミックプライシングを提供しています。

これまで飲食店は、原価や競合店との比較で価格を決めていました。

それに対してJUICERは、需要に応じて価格は変えるべきと考えています。

そのため、蓄積した売上データとAIを活用し、需要に合わせてメニュー価格を調整する仕組みを提供しています。

今回の資金調達でJUICERのソリューション開発が進み、ダイナミックプライシングが普及すれば、アメリカの飲食業界の料金体系が変化するかもしれません。

そうなれば、店舗と顧客双方にとって理想的な価格調整が自動的にできるようになるでしょう。

参考サイト

JUICER Lands $5.3M to Revolutionize Restaurant Revenue Management

Dynamic pricing startup Juicer raises $5.3M

前田淳一郎

グラフィック制作カタパルト

代表

1983年岐阜県生まれ。プログラマー、整備士、物流と転職し、日本橋で寿司職人の世界に入り、立ち食い寿司屋の店長になる。原価の高いをいわれる寿司で、原価調整と材料管理を徹底し、原価を平均25~30%に抑える。その後カナダで移民に挑戦し、現地の海上コンテナのフォワーダー企業に勤める。帰国後に外資系に勤務。
2020年より、Webライターをしながら世界の新しい「食の常識」を発信中。

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