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2025.07.16

レストランテックの進化に必須の HR の知見 カギは「従業員体験価値」にあり

竹田クニのインサイト

人材不足がさらに激甚化していくことが確実な日本において、生産性向上のカギとなるテクノロジーは CX(顧客体験価値)を高めると同時に、EX(従業員体験価値)を高めることが必須。
テクノロジー活用を提案する側の人々が HRM(Human Resource Management)の重要性を理解し、多様な人々がいきいきと輝いて働く会社・組織・店……の解像度を高めていくことが極めて重要と考えています。

人が辞めない会社=人が採れる会社=ホスピタリティの高い会社

図表は、 CX と EX の相関を表したもの。
従業員の「基礎的な体験価値」は給与、就業環境、人間関係で決まり、「付加的な体験価値」は働くことによって得られる自己肯定感、自己効力感、成長感によって決まる。

「付加的な価値」が高い組織は……
・人が働き続けたいと思う、もっと頑張ろうと思う ⇒ 人が辞めない
・そういう職場で働きたい、働いている人がいきいきしている ⇒ 採用に強い、リファラルで採れる

これは近年よく言われていることです。

CX との相関

そしてその「付加的な体験価値」は、マニュアルで画一化された労働ではなく、各人の創意工夫、臨機応変なパフォーマンス、心を込めた仕事……などによる顧客評価や仲間意識によって醸成される。
こうした画一的でない仕事は、図表左側の CX 側の「付加的な価値」に相関しており、ホスピタリティあふれる仕事は顧客に大きな満足、感動をもたらす。
そして従業員はその手ごたえ、ありがとうの言葉、仲間からの評価によってますます体験価値が高まる……そういう関係であります。

緊急課題、重要課題

確かに、「今、人が足りない!」「なんとかしなきゃ!」という緊急事態にある店は、 HRM、組織改革……“それどころじゃない!”わけで、目先の人員確保が「緊急」で精いっぱいという店も少なくない。
しかしながら、 HRM 改革を同時に行っていくのは「緊急かつ重要」。
これまでのやり方を見直し、悪循環を是正し、厳しい経営環境でも人が採用でき、人が育ち、人が働き続ける経営を確立せねばならないのです。

20 世紀の組織と、現在&これから目指す組織の在り方

安価な労働力が潤沢に存在し、市場も拡大期にあった 20 世紀では、現場のやることをマニュアル化等で画一化し、店舗数を拡大していくことが事業成長に向いていた。

人が辞めても“代わりの人”が見つかるから、現場はできるだけシンプルで労働集約的な仕事も任せればよい。
しかしながら、この「20 世紀の成功体験」は、市場成長鈍化⇒低成長の中で次第に歪みをもたらし、売上低迷⇒コストダウン⇒QSC 低下⇒顧客満足低下という負のスパイラルを引き起こした(特にチェーン店)。

現在、これからはテクノロジーで労働集約的業務負荷を軽減しながら、“人でこそやるべき”「付加的な体験価値」に相当する業務を重視。
そして、外国人、シニア、主婦、スポットワーカー……さまざまな働く目的や価値観、習慣の多様な人々が、一つの経営理念、店のビジョンに共感し、それぞれがいきいきと輝く組織を創り上げねばならない!

言うは易し……に聞こえるかもしれません。
しかしながら、今から「目指す」「具体的に始める」ことが重要なのです。

ベンダー(テクノロジーを提案する側)が視野に置くべき HRM 改革

タブレットオーダーで失われた CX

とある飲食店での実話です。
・タブレットオーダーを導入
・スタッフの仕事が「運ぶだけの仕事」になり意識が低下
・客席への注意力低下、追加オーダー減少
・業績悪化

これは現実にどの店でも起きうる話だと思われます。
お気づきのとおり、「では人がオーダーを取らない分、スタッフは何をするのか?」「自分たちの仕事はお客様に何を提供するのか」「何のための仕事なのか?」……こうした現場への教育が必須のはず。
テクノロジー導入は効率化・省力化と同時に、現場で働く者への意識改革、教育を同時に行わなければならないものだと考えられます。

ハイプサイクル的導入見立ても重要

ハイプサイクルとは、新たな概念導入の普及・成熟の時間的推移を表す概念。
新たな技術やオペレーションの導入当初では、現場の混乱やネガティブ反応が予想されます。
導入初期に「期待ほどうまくいっていない…」としても、起きる変化を予測・準備し、必要な教育・研修を行う計画的な見立てもテクノロジー導入には大切になるでしょう。

中小だからこそ取り組める HRM 改革

HRM について話をすると、「それは大手の話?」「ウチは中小だから…」という反応が時折あります。
断言できるのは、むしろ中小だからこそ大きく変われるのです。
下記は、いつの間にか増えてしまった中小外食企業のクレド、バイブル、評価シート、コンセプトシート……
中小だからこそ、現場視点で効果的な取り組みができていると感心します。
外食産業の HRM 変革のベストプラクティスは中小にこそ存在すると実感します。

テクノロジーは「現場を変えます」
その現場の変化・イノベーションの傍らには必ず従業員への意識向上、新たな体験価値理解、役割理解などが存在します。
テックを提案するプレイヤーは、こうした一連の改革の支援者、伴走者となることが必要で、そのための情報収集と知見獲得が欠かせません。

竹田クニ

株式会社ケイノーツ

代表取締役

早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。

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