
2025.09.24
ベンダーの営業に必要な 「ペライチ力」とは何か?
竹田クニのインサイト先日、なんとも悩ましい体験をしました。
筆者は今、某省庁主催の「外食産業の業界課題対策」を議論する委員をやっているのですが、その委員会で“外食DXの好事例を集める”こととなり、いくつかのベンダーにお願いしたところ、「非常に時間がかかる」「資料が多すぎる」「趣旨とは異なる事例」といったケースが少なくありませんでした。
今だからこそ(いや、昔からずっと)大切だと思われる顧客接点における行動について考えてみたいと思います。
出来事は・・・
某省庁主催の「外食産業の課題対応 対策会議」なる委員会。最新の外食DX取り組み事例(ベストプラクティス)を集めるべく、各委員から候補を提出することになりました。
カテゴリはスマホオーダー、経営管理、シフト管理/人事管理、オペレーション管理、原価マネジメント、人材育成など多岐にわたります。
複数社のベンダーへ候補事例提供をお願いして快諾をいただくものの、下記の状況がいくつか発生しました。
時間がかかる
1社は即日、2社は3日以内にご送付いただきましたが、1週間以上を要した企業が数社ありました。

趣旨が違う
“中小の事例”とお願いしたのですが、届いたのは大手チェーンの事例であったり、「事例」ではなく、プロダクトを利用したお客様の“感想”が中心で、具体的な取り組みや成果の情報が不足しているものがありました。

too much
1週間以上を要したあるベンダーからご送付いただいたのは、ベンダーの会社紹介に始まり、詳細なプロダクト説明を含む、全45ページに及ぶ壮大な資料でした。

※イラストはイメージです
日ごろお付き合いのあるベンダーさんで、ご厚意で協力いただき、また実際の顧客に対する営業行動ではないため、悪く申し上げるつもりはないのですが、老婆心ながら、営業・顧客接点における課題を感じた会社がいくつかありました。
「なぜ“そうなる”のか?」の考察
社員が若い、社員がエンジニア中心、少人数など、事情は企業によってそれぞれかと思いますが、いずれにしても営業経験・スキルが不足する傾向があるように思えました。 今般起きた「時間がかかる」「趣旨が違う」「too much」はなぜ起こるのか?少し分析的に見てみると、次のような原因・理由があると思われます。
ターゲット別、課題別のベストプラクティスが整理できていない
顧客の規模、業種、抱えている課題別に、営業で活用できる事例が整理されていない。
・依頼: 事例をお願いした・ベンダー: 事例を用意しようとするものの、手元にまとまった資料がないため、依頼を受けてから一からパワーポイントを作成した
といった状況です。
顧客が知りたいこと、求められている資料の理解・イメージ不足
・一次機能による「効果」…省力化、時間短縮、集客など
・課題解決という「成果」…顧客体験価値向上、従業員体験価値向上と売上/利益UP、生産性向上などプロダクトの活用の「効果」や感想だけでなく、課題解決の「成果」に関する理解不足やキャッチアップ不足が原因です。
自信(のなさ)
自社や自社プロダクトの知名度、信頼性に自信がないため、資料のページ数が増えてしまう。会社概要や経営者略歴、取引実績など、本来必要な情報以外を盛り込みすぎてしまうのは、自信のない営業担当者が商品について話しすぎてしまう状況に似ているかもしれません。作り手と使い手の違い
賢明な皆さんはお気づきのことかと思いますが、
・作り手(ベンダー)…自社のプロダクトの機能・性能、信頼感を知ってほしい
・使い手(クライアント)…そのプロダクトでどんな成果が出るのかを知りたい
この視点の違いが、顧客のニーズに合わない資料作成の原因になります。有名な「ドリルと穴」の話で言えば、使う側としては、そのドリルを使うとどんな穴が、どのくらいきれいに、短時間で、簡単に、いくらで、できるのか?が知りたいわけで、さらに言えば、その穴が、どんな後工程とつながり、制作者が意図するどんなモノとして完成するのか?を理解する必要があります。
作り手は、そりゃ努力して作っている「ドリル」の詳しい話をしたくなるのは当然ですが、細かすぎるドリルの話を置いておいて、「穴」や「穴の先」の話が重要になります。
「ペライチ力」(ぺらいちりょく)とは?
ここでいう「ペライチ」とは、簡潔にまとまった資料のことで、必ずしも“一枚”という意味ではありません。
相手が興味関心を持つと思われる情報の要点が、簡潔に見やすくまとめられている状態のことを意味しています。
ペライチ力=優秀な「ペライチ」を創る力は、
その資料が必要な趣旨
顧客理解、提出先の仕事理解
表現力(要約力、文章力、デザイン・レイアウト
の総合的なものです。 そして、ソリューション営業におけるペライチでは、
プロダクトによる改善効果…端的で説得力のある数字
操作性…操作のしやすさやUIの特徴
費用感…概算でどのくらいか?費用対効果はどうか?
これらが見やすく、具体的に表現されていることが重要です。

じゃあ、どういう「ペライチ」が良いのか?
テーマや商談場面、相手の理解度などによって変わるため、「こうすればOK!」というテンプレート的なものを例示することは難しいのですが、以下の要諦があると思われます。
<フライヤーとして使用するもの>
いわゆるフライヤー的なもの、つまり相手が初見で目にするものであれば、
主要な機能がビジュアルでわかりやすいこと
費用や実績社数
効果の具体的な指数の例示
標準的な費用
などが簡潔にまとめられているものが望ましいでしょう。
<提案資料>
提案概要
期待成果
導入段取り・スケジュール
費用
あたりが簡潔にまとまっていることが、“見る側”にとっては見やすく、商品の細かな特徴や詳細説明、事例などはAppendixとする方がまとまりは良くなるはずです。
エレベータートークと同じ
エレベーターに乗っているくらいの短時間で、簡潔にわかりやすく物事を伝え、かつ、印象に残る。
アメリカのシリコンバレー草創期に生まれた、ベンチャー経営者が“狙っている”投資家にエレベーター内でアポイントを取り付ける話のように、「ペライチ力」はエレベータートークの意味するところと似ています。
「ペライチ力」=コミュニケーション力+情報力
昔からよく言われる話ですが、「デキる営業は資料が少ない」
確かに、優秀な営業パーソンは簡潔&スピーディーであることが多い気がします。
スピード&説得力があるのは「コミュニケーション力」+「情報力」の賜物
デキる営業は、当意即妙で簡潔、かつ的確な資料をスピーディーに届けることができます。 これは、
相手をよく理解し、深い洞察力で課題を察し、相手に伝わりやすい簡潔な資料 →コミュニケーション力
相手の課題や事情に合わせた事例やデータ →情報力
があるから可能になると考えられます。

お客様にぴったりの事例や資料を、豊富なストック(=ナレッジの蓄積)の中から引き出し、スピーディーに提供することができる力、それが「ペライチ力」=コミュニケーション力+情報力です。
WEB、セミナー、展示会など多様な顧客接点からリード獲得を期待できる世の中だからこそ、「ペライチ力」が営業初動において顧客の期待値や理解度を左右する重要な要素になるかもしれません。
企業として「ペライチ力」を磨くことを進めてみませんか?

竹田クニ
株式会社ケイノーツ
代表取締役
早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。










































