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2024.10.16

【竹田クニ】「パクリ」は是か非か?イノベーション推進に大切な「時代」の理解

竹田クニのインサイト

人手不足、人件費・食材・エネルギーコスト増、円安/物価高・・・外食産業が大きく成長した「20世紀」とは全く異なる経営環境の中“20世紀の成功体験からの脱却”が叫ばれて久しい。

私たちは「先人たちが築き上げた20世紀」の何を学び、何を改めなければならないのか?改めて考えてみたい。 

模倣→同質化→合理化→QSC低下
リーマンショックを機に回りだしたマイナススパイラル

成功している店舗の商品・やり方を真似る・・・いわゆる「パクる」は悪ではない。成功事例に学びそこから得られた知見を自社に取り込むことは一般的には有効なはずだ。

2008年 リーマンショックを機に急降下した景況によって外食は勿論、様々な産業が業績不振に苦しんだ。

「パクる」自体は必ずしも悪いことではないのだが、21世紀初頭に起こった景気の急減速は、日本の外食産業、特にカジュアルな飲食業で下記のマイナススパイラルを引き起こしたと考えられる。

景況の悪化から伸び悩む集客に対し、繁盛店を模倣することが結果的に同質化と価格競争を招き、競争に抗するための合理化がQSC低下を招くというマイナススパイラルに陥った・・・これは多くの有識者が指摘するものだ。

業績を上げようとする努力が深刻な業界課題に繫がった?

また、当時の様々な合理化・効率化が現在にまで尾を引く業界課題の原因となったという指摘もある。

飽和or減速する市場の中で売上利益を上げようとする努力=生産性公式の「分母」側=経営資源のinputで行われた「システム化」「機会化」「外注化」「マニュアル化」という策が、多店舗展開による売上拡大、価格競争に対応するためのコストダウンに向かってしまった結果、「顧客価値」=商品のクオリティや接客価値etc.、現在で言う顧客体験価値を削ってしまったのではないか?
ということが指摘されている。

そして、行き過ぎた合理化は、産地偽装や異物混入、長時間労働問題やマニュアル化の弊害といった事件・事象の引き金を引いてしまったのではないか。

現在のデジタルツール導入に潜む“同様の問題”

人手不足、コスト高騰という現在の厳しい経営環境の中、デジタルツールによる省力化・省人化は必須。

「テクノロジーで出来ることはテクノロジーに任せて、人は人にしかできない(人手こそやるべき)業務に集中する」は間違いなく外食産業の重要テーマであります。

しかしながら、テクノロジー活用は、「生産性の公式における分母側」へのアプローチであることに変りは無く、導入の目的が曖昧であれば2000年代初頭と同じ過ちを繰り返す可能性は無いだろうか?

だからこそ、飲食店、そしてテクノロジーを提案するベンダー各社も含め、自社店舗の提供価値と目指す姿を明確に描くことが欠かせないわけだ。

目指すべき“ゴーイングコンサーン”=継続的発展への誓いは?

少し大げさに聞こえるかもしれないが、外食産業が継続的に発展するために目指す考え方は以下のものと思われます。

多様化する消費者のニーズ・ウォンツに対し、ターゲットを明確に定め、そこに高い顧客体験価値を提供し、ふさわしい対価をいただく。それによって生産性、収益性を担保し、継続的に活動・発展する魅力的な産業を再興する。

これが外食産業に関わる人々が等しく目指すべき姿ではないかと思います。

 また、人でなければ生み出せない、人手こそやるべき仕事は、従業員にとって、いわゆる“やりがい”に繋がる体験価値の高い業務である相関性がある。

調理、接客の技術と心=感情労働としての価値、これは飲食店で働く魅力として創造的に高めていうことが極めて重要だ。

新たなデジタル“ベストプラクティス”を広め「パクる」

デジタル技術が20世紀の轍を踏まないために大切なことは、テクノロジーが人の役割を「代替」するのではなく、「補完・拡張」するものであるという理解。
飲食店は、日常の食事から大切な人との会食、冠婚葬祭、ビジネスの交渉・・・様々な人生のシーンで使われる“メディア”であると思います。

そのメディアである飲食店がいま問われているのは、単に安い、おいしい、儲かるでなく、そこで過ごす顧客体験価値を高め、ふさわしい対価をいただける産業となる事。そして従業員にとっても魅力的な産業となる事。

そのためには、「テクノロジー」と「人」のタッグの組み方が重要となってきます。
20世紀の成功体験から脱却し、新たなテクノロジー活用のベストプラクティスを数多く「生み出し」「広める」・・・
これが今、飲食店とベンダーが果たすべき役割であり、
こうしたベストプラクティスは大いに「パクる」べきなのだと思います。

竹田クニ

株式会社ケイノーツ

代表取締役

早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。

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