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2024.10.11

【竹田クニ】 ”一物二価”の是非②

竹田クニのインサイト

ダイナミックプライシングの可能性

「一物二価」は一般的には、不公平とか差別を連想させる、望ましくないニュアンスがあるでしょうか。

前回このコラムでは、外国人価格の問題について論じましたが、今回はダイナミックプライシングについて、積極的に導入すべき一物二価ならぬ“一物多価”の可能性について考えてみたいと思います。

様々な業界で当たり前化している「変動する価格」=ダイナミックプライシング

外食産業以外の様々な業界では、「価格が変動する」商品サービスは数多く存在します。

  • ホテル・旅館

    季節・カレンダーによって生ずる稼働率によって価格が変動(レベニュー、イールドマネジメント)

  • 航空機

    稼働率、予約時期によって価格が変動、また燃油サーチャージが付加されることも

  • ゴルフ場

    カレンダーによって価格が異なる

  • 美容室

    スタイリストによって価格が異なる 

他にもあるが、これらは消費者に受容され、考え方・制度自体を問題視する声はあまり聞かれない。

外食はどうか?

外食においては、一部のチェーンで「エリア別価格」や「深夜価格」の例は見られるが、需要の多寡・繁閑によって価格が変動する例はこれまであまり見られなかった。

これまでの外食産業で価格が変動する例として「ハッピーアワー」を思い浮かべる方も多いと思いますが、これは「ピークタイム以外」の時間帯での集客を促進させるための“割引“施策であることが殆どであり、ダイナミックプライシングとは異質のものであると考えるべきでしょう。                                            

外食におけるダイナミックプライシングの可能性

近年、外食においても徐々にダイナミックプライシングの事例が出てまいりました。

平日と土日で価格の異なるメニューブックを差し替える店舗や、下記のような積極的なチャレンジは、アーリーアダプタとして多くの飲食店にとって可能性を示唆するものとなります。

「食サ分離」 サービス対価性の前に、まず概念分離を

外食がダイナミックプライシングをもっと積極的に採用し、消費者もそれを受容するようになるためには、まず食事とサービスの概念を分離し、各々の合算として構成される「体験価値」を考えることが重要だと考えます。

長らく日本の外食市場において「サービス」はメニューの価格にインクルードされているのが常識的でありましたが、まずは「価格」が商品とサービスの対価の合算であるという考え方へ転換する・・・それが「食サ分離」であります。

他業界の例でいうと、日本の旅館業では「宿泊には食事(夕食)が付いている」ことが多くの旅館が採用する標準でありましたが、約20年前頃、「泊食分離」という考え方が起こり、食事は別売り・・・、すなわち素泊まり、食事つきが選べる、食事も朝食、夕食、また食事のグレードも選択可能など、多様な利用の仕方が登場し消費者の選択の幅が広がりました。

日本で「チップ制度」は根付くのか?

諸外国において、特に欧米では「チップ」が定着しており、「食事」と「サービス」の概念は分離されていますが、
日本市場において「チップ制度」根付くのでしょうか?

昨今では、スマホオーダーシステムに“投げ銭”機能が搭載され、サービスへの評価や推しのスタッフへの応援などに対価を送る意欲的なチャレンジも登場しましたが、効果・成果はエンタメの延長的であり、まだまだ限定的。今後の進化に期待しましょう。

こうした意欲的なチャレンジの進化も含め、サービスの価値を消費者が認識し、対価性を高めていくためには、まずは食事とサービスの概念を分けた様々なチャレンジが必要です。
そのチャレンジとは・・・

外食におけるサービスの対価性向上へのチャレンジ

飲食店の「価値」は、下記の様々な価値が合わさった“総合的なもの“と考えます。

そうすると、空間や技術、時間の占有などに対してアップチャージするという考え方に可能性が大きい。

これらには、アップチャージ=少々高いお金を払っても「それを体験したい!」というニーズ・ウォンツがあると思われます。

これは別な言い方をすれば、「原価」ではなく「体験価値」から価格を設定するという考え方。
こうしたチャレンジが、「食サ分離」が消費者に実感され、サービスの対価性を高めることに繋がっていくのではないでしょうか?

レストランテック業界が果たす役割 

前出のダイヤモンドダイニング社の焼き鳥IPPON 時間帯によってドリンク価格が変動するサービスで考えてみると、
オーダーする時間によって価格が変わるわけですから、時間できっちり“区切る“ことが重要。
これにスマホオーダーシステムは非常に相性が良い。
これが人によるオーダーテイクであれば、ミスが起きる可能性も少なくないし“注文したかったのに待たされた(スタッフ呼んだのに来なかった)”といった問題も起きるだろう。

また、他の事例で言えば、席の眺望や個室、寿司屋の大将の出勤日・時間など、より複雑な価格体系を予約やメニューに反映させなくてはならない。
お気づきの通り、それをスムーズに実現できることにデジタル技術は大きく貢献できる。

レストランテック業界は省力・省人化だけでなく、こうした外食産業の新たな進化に貢献できるはずだ。

竹田クニ

株式会社ケイノーツ

代表取締役

早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。

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