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2025.10.06

職場の「空気」「雰囲気」「風土」とレストランテック~多様な労働力活用に必須の取り組み~

竹田クニのインサイト

日本の労働力人口が減少し、労働力需要と供給のGAPが年々広がっていくのは構造的なもの。 この課題に対応していくためには、

労働力需要の縮減→DXによって労働を量的&質的に変える(人はより感情労働へシフトする)
労働力供給の多様化→休眠労働力、外国人、スキマバイトetc.多様な労働力の活用で供給力を上げる

この2つが必須であることは近年かなり理解が進んできているように思います。

人材供給は年々厳しさを増すことが確実であり 将来に向けた準備を今から始めておかないと“手遅れ”になりかねない・・・というのが、業界有識者の共通認識です。

労働力供給の多様化と同時に必須のHRM改革

多様な労働力を活用し、人がイキイキと働ける組織を作るために「HRM変革」が必要かつ重要であることは以前のコラムでもご紹介していますが、

レストランテックの進化に必須の HR の知見 カギは「従業員体験価値」にあり| Food Deploy | 飲食店のDXを後押しするWEBマガジン

今回は多様な労働力が働く職場だからこそ重要となる、職場の「空気」「雰囲気」「風土」について考えてみたい。

職場の「空気」「雰囲気」「風土」

アルバイトの退職理由に関するアンケート調査はネット上にいくつかアップされているが、殆どの調査において“圧倒的一位”は「職場の人間関係や雰囲気の悪さ」

出典:バイトルマガジン パートの退職理由はどうやって伝える?タイミングや辞めさせてくれないときの対処法も紹介! | バイトルマガジン

「空気」「雰囲気」「風土」を構成するものは何か?

職場の「空気」「雰囲気」「風土」とはどういうもので、なぜ悪くなってしまうのか?

  • 店長やリーダーの言い方がキツくて、皆が委縮気味

  • チームワークを乱す人が居て、なかなか注意出来ない(注意すべき人がしっかり言わない)

  • 言いたいことを言えない(含:言う機会が無い)

多かれ少なかれ、どこの職場にもこうした事象はあるでしょう。

多様な労働力=働く目的、仕事観、言葉が違うことによる影響

学生、主婦、シニア、留学生、外国人(特定技能)、スキマバイト・・・多様な労働力はそれぞれ働く目的、仕事観、言葉、コミュニケーション力は多様である。
社員と“慣れた”バイト・パートで上手くやってきた職場も、多様な労働力を受け入れることで“何かが”変わり、空気、雰囲気、風土が悪くなる・・・。そしてそれは店の活気、業績は勿論、採用や定着に影響を及ぼす。

“仲間外れ”の原因・・・外食経営者の経験談より

現在東南アジアでラーメン店を展開する飲食店経営者の留学時代のエピソード

~カナダ人、イギリス人、日本人(本人)の3名でルームシェアしていた時の話~
カナダ人とイギリス人の2名で話をしていることが殆どで、なかなか日本人である自分に話しかけてくれず、日々淋しさ、疎外感を感じていた。
“嫌われている?”“アジア人蔑視?”と日々のうっぷん、ストレスはたまる一方。
でも上手く話しかけられない・・・。
ある日、意を決して
♪「自分阻害されているように感じる、アジア人だから蔑視しているのか?」(怒)
すると2名からは
♬「いやぁ、ごめんごめん、そんなつもりは無いんだ。 ただ“赤ちゃんに話しかけるように話さないと、君とは意思疎通が出来ないから”「メンドクサイ」んだよ…。

その後、多少は改善されたものの変化は小さく、 猛勉強の結果語学スキルが上がるにつれて徐々に会話は増えていったそう。

異国の地で働く「外国人」にとっては、母国で働いている人には想像できない、気づけないストレスが沢山あるという事ですね。

「空気」「雰囲気」「風土」を創り出すもの

働く目的、仕事観・価値観、言語、が異なるメンバーが協働する現場においては、お互いの立場や考え方を尊重し、積極的に話しかける、話し合う機会がある・・・こうした要素の有る無しが大きく関係します。
勿論、店長やリーダーのマネジメント、リーダーシップ、会社の制度の影響も含めて 「空気」「雰囲気」「風土」は時として、“得体のしれない”大きな力として組織に影響を与えていきます。

経営者としては、多様な労働力の活用と同時に、多様な目的、仕事観、言語の従業員が等しく・気持ちよく過ごせる組織を育む取り組みが必要となります。

エンゲージメントサーベイの取り組み

近年、外食産業でも使いやすい「働く人々個人の状態を測る個人サーベイ」「組織のコンディションを測る組織サーベイ」が登場してきています。
個人/組織サーベイは、一般企業では以前から多くの企業で採用されてきたものですが、従来のものは料金が高額だったり、アンケート回答数が多く、精緻すぎて飲食店の現場では使いづらい・・・こうした声も多かったのですが、最近では現場のアルバイト・パートさんでも回答負荷が低く、使いやすいものがいくつか出てきているようです。

エンゲージメントサーベイを徹底比較!2025年最新のおすすめ10選|PRONIアイミツ SaaS

ここでは(株)リクルートが運営する「GEPPO」(ゲッポー)というサービスを見てみると

Geppo - 個人と組織の課題を見える化するツール

従業員は定期的に「3問」の簡単な質問に答えるだけと、回答負荷が低く、企業側はその変化をダッシュボード等でみることで組織状態の変化に気付くことができるというサービスで、費用も基本的な機能で月額298円/従業員1名と安価だ。

過ぎたるは及ばざるが如し?

筆者の私見であるが、こうしたサーベイはあまり大がかりすぎると却って「見えない、見えづらい」という事が起きるように思います。設問数が多いサーベイの場合、回答者はテストを受けるような気持ちでサーベイに臨み、また本音・本心を書いてしまうことによる影響を気にして敢えて中庸な点数をつけるという事が起きるケースがあります。
待遇・処遇や仕事へのコミットメントが揃っている組織では有効であっても、雇用形態、働く目的、仕事観、言葉が異なる多様な労働力を受け入れている組織の場合、“大作すぎる”サーベイには注意が必要です。

上述のGEPPO の場合は、個人サーベイはあくまで日々の心の状態を付ける簡便なもののようで、その変化から組織状態の変化を読み取り、実際に組織を見て、入っていくことで何か兆候・事象がないかを確認するという、現実的な運用が期待できそうです。

感じるべき、「特定技能」で来日する人々の現実

特定技能でアジアから従業員を迎え入れている企業が増えているかと思います。
筆者は先日インドネシアの首都ジャカルタから150Kmほどにあるバンドンという地域にある日本語学校を訪れました。
訪れた最初のセレモニーで校長先生から
「♬皆さん、今日は嬉しいお知らせがあります!○○君が“内定”出ました!!!!!」
本人は天に拳を突き上げ・・・仲間から手痛い祝福の嵐・・・本人の目からは涙・・・
なんとも感動しました。

かなり田舎にあります

もう本人はもみくちゃになってます(笑)

正直、これほどまでの歓喜の瞬間とは思っていませんでした。
それもそのはず・・・
インドネシアの平均年収は日本円換算で「年収38万円前後」※首都ジャカルタでは年収70万円ほどだそうです。
月額3万円に満たない・・・つまり言葉を選ばずに言えば、貧しいのです。
日本への就職ができれば、月額20万円前後がもらえて、月に7~8万円を実家に送金が出来る。 兄弟の学費、親の病院代、そして5年勤めあげれば家も建つかもしれません。
※家族を大切に考える国民性で、就業動機が家族の幸せを口にする人が殆どでした

日本人の金銭感覚で考えれば、
♬「内定出ました!あなた来年から5年間、年収1800万円です!」と20歳前後の若者が言われたようなものなのです。

かなりハードスケジュールで半年間、日本語だけでなく、仕事観やチームワークについても学びます。

外国人がどんな背景や想いをもって来日し、どんな働き方・スキル習得を目指しているのか?
それが職場のメンバーにも理解・尊重され、分け隔てなく接してあげられる・・・そんなこともこれからの職場の「空気」「雰囲気」「風土」づくりには大切なテーマとなりますね。

竹田クニ

株式会社ケイノーツ

代表取締役

早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。

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