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2024.02.21

【竹田クニ】新潮流「 DX“化”」って言ってませんか? ~デジタル化の上流にある経営テーマとは?~ 

竹田クニのインサイト

時折、「DX化」って言ってるのを耳にします。

DX=Digital Transformation とは簡単に言うと「デジタル技術による業務革新」。 “何らかの業務革新“がなされることがTransformationでありますから、DX化というのは言葉としてオカシイのです。

「何を革新的に変えるのか?」というのが本来デジタル化の際に議論されるべきなのです。

今回は、テクノロジーによって、飲食店が「何のために」「何を」「どう変革」していくのか?をテーマにお話しします。

デジタル技術が目指すもの

導入実績や導入による改善事例、機能差、コストももちろん重要ですが、飲食店もベンダーも、デジタル化の「目的」「目指す成果」について議論をしていきたいですね!

この「目的」「目指す成果」については、いくつかの視点・階層があると考えております。

総論的には価値の向上による生産性向上

ここでいう「価値」には、CX=顧客体験価値、EX従業員体験価値 の向上の2つに大きく分かれます。

そしてCX向上は対価性の向上を目指し、EX向上は従業員の定着につながり、これらのことは生産性の公式でいう「分子側」の成果向上による生産性向上を目指す、という考え方になります。

飲食店にもベンダーにも双方必要な「目的」議論

以前、とあるベンダー(掃除ロボットの会社)の営業の方に展示会でお会いした際に、♪「生産性向上の実現に繋がります!」と力強いセールスを受けました(笑)

確かに間違いではないのですが、掃除ロボットによる人が掃除に費やす時間の短縮や業務効率に影響することは、「効率化」という意味では確かです。しかしながらそのことによって「生産性向上に繋がります!」はいささか距離感があるお話ですね。

ちょっと意地悪かとも思いましたが♪「清掃時間が削減、効率化できたとして、飲食店経営にはどんな良いことが起きるのか?」について聞いてみたところ、あまり明確なお話は聞けませんでした。

やはりベンダーには、飲食店のデジタル機器導入の「目的」「目指す成果」について、導入する現場の課題、事実現実の理解と共に必要であることは間違いないと思います。

 CXの視点 顧客体験価値を向上させる「QSCHA」って何?

Quality(品質)、Service(サービス)、Cleanliness(清潔さ)は、長らく外食産業で言われてきた基本的品質を意味する要素であります。

外食産業が成長した1990年代以降、特にチェーンにおいては、QSCは維持向上させるため食材の一括コントロール、セントラルキッチン、調理・接客のほか店舗業務のスタンダード化、マニュアル化が行われてきました。

これ自体は素晴らしいことですし、経営効率を向上させるという点においては優れた取り組みと言えるでしょう

  • Quality(品質):食材仕入、調理技術・機器、発注・物流、従業員トレーニング

  • Service(サービス):採用、教育、評価、オペレーション技術、従業員トレーニング、店長教育、標準化、店舗設計、提供態

  • Cleanliness(清潔さ):清掃の標準化と徹底、習慣づけ、従業員意識、仕組みとルール、店舗設計

近年、このQSCに「H」と「A」を加える飲食店が増えてきました。

  • Hospitality(ホスピタリティ):対応力、臨機応変さ、提案力、コミュニケーション力

  • Atomosphre(雰囲気、空気感):顧客が感じる…上質感、非日常感、臨場感、高揚感、癒し

「H」「A」は“人”でこそ実現できるもの

「H」「A」は人が主に実現するもの※、人でこそ実現できるものであります。※「A」は店舗・空間のデザインの要素も関係する。

別な言い方をすれば、内食・中食では実現不可能な「飲食店ならではの価値」ということが出来るでしょう。

これからの飲食店経営においては重要な「顧客体験価値」は、人が創り出す「H」と「A」の寄与度が極めて高いと言えるのではないでしょうか?

 EXの視点  従業員体験価値の向上に繋がるHRM革新

もう一方の「価値」、EX=従業員体験価値について考えてみましょう。

人は就業することによって、基礎的な価値(給与・労働条件、基本的な職場環境、職場の人間関係)だけでなく、仕事によって得られる付加的な価値(成長感、自己肯定感、自己効力感)といったものを得られることが重要で、よく言われる“仕事のやりがい”というものの多くをこの後者が担っていると考えられます。

「H」「A」と、従業員側の付加的価値の共通性

前述の「H」と「A」は主に人が創り出すもの。同様に人…もっと言えば自分だからこそ実現できている「H」「A」は貢献感、効力感に直結するし、業務知識の習得や接客技術・コミュニケーションスキル向上によるレベルアップは成長感に繋がる。

人材不足が深刻化する外食産業において、従業員付加価値は定着、採用にも大きな影響を持つはずです。

飲食店の歴史をたどれば、少なくとも1990年代までは飲食店の現場に存在する労働集約的な業務を、アルバイト・パートのいう安価で潤沢な労働力が担ってきました。また繁閑に合わせて変動費的な運用もされてきました。

人材不足、賃金高騰、円安、原価・エネルギー価格上昇・・・昭和平成とは真逆と言える経営環境の中で、飲食店現場のHRM(ヒューマンリソースマネジメント)の考え方の根本から変革していくことを時代は要求していると考えられます。

 ダイバシティ・・・労働力に関する“そもそも論”

日本では労働力の区分に「正規」「非正規」という概念が根強い。

中央官庁の統計的な継続観点から変えることが容易ではない…という事情はあるとしても、名実の「実」・・・つまり産業界の実態から、こうした前時代的な区分とは決別すべき時代に来ていると言えます。

今の労働市場をざっと見てみても…

  • 社員(いわゆるこれまでの正社員)

  • アルバイト・・・学生、留学生、主婦、ダブルワーク(昼は正社員で夜はアルバイト)、フリーター

  • パート・・・主婦など女性が多い

  • 派遣

  • スキマバイト

  • 契約社員

  • 業務委託

  • 特定技能外国人労働者

  • ワーキッシュアクト、ボランティア、プロボノなど

とまぁこれだけ種類があるわけです。こういった各労働形態においては、労働契約は当然異なりますし、期待する役割、ミッション、求められる能力・スキルはそれぞれ異なりますが、それぞれが集合して融和して「チーム」として飲食店を運営し、店が集まって外食産業を構成しています。

それぞれの働き方には役割、働く事情や目的が異なるだけで、チームが目指す「成果」「ゴール」、ミッション、ビジョン、バリューは共通であり、いわんや働き方に貴賤などあってはならないのがこれからの世の中。

経営者だけでなく、組織全体で、HRMのパラダイムシフトが必要になってきていると言えるでしょう。

 経営者、ベンダーが共通の視点で議論すべき「目的」「課題」

デジタル化が「DX」と呼ぶべき取り組みになるためには、ベンダー側もこうしたCX,EXの「目的」を設定し、議論することが求められてきます。

勿論、性能や機能、効果事例、そしてコストは大切です。

デジタル技術が、それに期待される性能・機能やパフォーマンス/コストを発揮し、効率化に貢献するかだけでなく、

いかに「目的」「課題」に対する「業務革新」を実現できたか?というソリューション事例を数多く創り出していくことが、私たちに求められているのではないでしょうか?

産業構造改革に向けて

物流の2024問題、人材の2030年問題、円安、年収の壁問題・・・外食産業を取り囲む経営環境は、過去の成功体験が機能しないことがほぼ確定的であり、外食産業は産業全体の「構想改革」レベルの変革が必要と言われています。

レストランテックに関わる皆様!

「デジタル化」を「DX」に変えていくには、私たち一人一人の時代認識、目的設定、課題認識、そして行動が重要と思います。

未来を創る取り組みを共に頑張っていきましょう!

竹田クニ

株式会社ケイノーツ

代表取締役

早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。

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