
2024.01.23
【竹田クニ】「A面」と「B面」のマーケティング
竹田クニのインサイト大事なのはトレンドなのか?消費者インサイトなのか?
ニーズ・ウォンツ多様化の中、トレンド論は市場の一過性・表層的な現象をみてる!、という意見もあれば、いやいや新たな商品開発にはトレンドを取り入れることも重要!と意見は様々だ。
マーケティングは“範囲“が広い。今回はマーケティングを大きく「A面」「B面」に分けて、混沌とした議論の整理のお役に立てればと思います。
多様化の時代、つかむべきはトレンド?ニーズ・ウォンツ?
冒頭から禅問答の様な問いになるのだが、トレンドは「今はやっている(はやり始めている)」ものであり、それもニーズ・ウォンツの一角をなす…つまり含まれるものだと考えます。

2023年 外食アワードWEBサイトより転載
トレンドのデメリット
トレンド自体は、それを“うまく”取り入れることは有効でしょう。但し、業態、地域、店格、ターゲットによってそのトレンドの採否は判断が分かれます。
2023年度の外食アワードで発表された「2023年外食キーワード」の中に「4ケタラーメン」があります。
確かに大都市圏、特に中心部ではラーメン人気は底なしで、「こだわり」「新機軸」をもったラーメン店では一杯1000円以上という店はここ数年増えている。ラーメンファンやインバウンドには、こうした特徴あるラーメンを体験すること自体にも価値があります。
ところが、だからといって郊外や地方で、地元民の日常食を対象に営業している飲食店が、そこに乗っかるかと言うとそれは違うでありましょう。理由は、客が来店する来店理由や、ハレ(イベント、エンタメ)かケ(日常食)なのかというシーン(飲食機会)が、都心部繁華街と郊外・地方では異なるからです。
「日本の外食は安すぎる」という内外有識者の見解は近年強いが、それとこれとは話が別。近所で身近な普段使いのラーメンで4桁ラーメンは成立しづらいです。
ラーメンが「1,000円の壁」を超えられない2つの理由とは何か?(山路力也) - エキスパート - Yahoo!ニュース
別の例でいうと、例えば都心部でナポリタン専門店や生姜焼き専門店が繁盛しているからと言って、郊外・地方でそれらが成立するのか?ははなはだ疑問です。また、(例えは極端だが)歴史ある老舗うどん店が“チーズトッピング”をやっても却ってブランド価値棄損が起きます。
トレンドは短期の商品戦略には有効
トレンドにネガティブな話をしたいわけではない。カフェであれば、タピオカや、カヌレ、エッグタルトなど流行のラインナップは売れると思えるし、牛丼チェーンでも、様々なトッピングや唐揚げメニューは人気です。
つまり、利用者の属性・客層と、ターゲット消費者のニーズ・ウォンツ、嗜好をうまく取り入れることはやはり有効なのです。
スイーツは短期でトレンドが入れ替わる

Z世代に人気? 𠮷野家公式ホームページより
マーケティングの「A面」と「B面」
外食産業は、規模、業態、地域が多様であるが故に、まとめて一つの業界として論ずることが難しい。故にマーケティングにおいても業界共通の正論は無いと考えます。
今回は表題通り、大きく2つに分けて整理してみます。
<A面>
A面はハレ、チート、エンタメ、トレンド、新規性、映え、「欲」の喚起、というキーワードで表現することが出来ます。
最新の繁盛店やメニュー動向、新規性、話題性…メディアで「今、○○が流行! 次は○○が来る!」などと表現されるカテゴリーです。
こういった情報に反応し、来店する消費者は、新たな体験に「ワクワク」「テンション上がる」「盛り上がる」や、時代の流れに乗った消費に満足感や充足感を感じます。
情報収集は…
情報収集は・・・
マスメディアや外食専門メディアの繁盛店レポート、ヒット商品情報
トレンドウォッチャーのSNS発信
かから得ることが充分に出来ますが、「何でウケてるの?」「どうして流行っているの?」については、マーケッターやメディア関係者などの分析を是非参考にしてください。。
自分の店にそれが合うかどうかは、以下「B面」とも大いにかかわってきます。
<B面>
一方の「B面」はある意味、地味です。ケ、チル(癒し)、日常、安心・安全、定番、「不」の解消…消費者の日常において、安心できる定番的メニューやホッとする空間、リラックスできる空気感、身近にあって便利…こうした心理的な価値に寄り添う飲食店やメニューです。
イメージとしては…
・仕事帰り食事を兼ねて寄る居酒屋
・日常のランチやディナーを普段着に近い服装で楽しめる店
・派手さは無いが、リーズナブルで美味しい定食屋、カジュアルレストラン
・特別美味しいわけではないけれど、食べなれた味で満足できる店
こうした店は多かれ少なかれ誰もが持っているものと思われます。
こうした店の利用機会に期待するのは、最新のトレンドではなく、食べたことのない新メニューのチャレンジでも無いはずです。
例えば定食屋では、結局一番人気は『唐揚げ定食』と『鯖塩焼き定食』なんていう話が、まさにB面の典型です。
また、これは実話ですが、2015年に最も売れた外食関連の書籍「ある日突然40億の借金を背負う。それでも人生はなんとかなる」に掲載された話です。
女性アンケートを基に、居酒屋で「まぐろとアボカドのミルフィーユ」「鎌倉野菜の彩り野菜」といった女性向けのおしゃれメニューを導入。
常連客の支持が落ち、売上が下がる。
ターゲットを日常使いするサラリーマンに絞り、「まぐろブツ」「だし巻き卵」といった定番メニューに戻す
常連客が戻り、売上も回復。

ある日突然40億円の借金を背負う――それでも人生はなんとかなる。
このエピソードはまさに、この企業が経営する居酒屋経営には「B面」的なマーケティングが必須であった…という話でありましょう。
地域の特性と人流、客層
この「B面」には、ちょっとロジカルなアプローチが必要です。
店がある地域・商圏が、どんな街で、そこにどんな人々が働き・暮らし、どんな飲み食べをしているのか?これを分析的なアプローチ…基本的なマーケティングが大切です。
これは筆者の古巣でもある㈱リクルート ホットペッパーグルメ外食総研が毎月&年次で発表している「外食市場調査」だが、自店舗が立地する商圏=タウンという概念で分析レポートを発表しています。
いくつもあるタウンの中から、例として東京「神田・秋葉原・お茶の水」と埼玉「浦和」を例示してみます。
<2019年> 神田・秋葉原・お茶の水・神保町
<2022年> 神田・秋葉原・お茶の水・神保町
<2019年> 浦和
<2022年> 浦和
コロナ前(2019)とコロナ後(2022)を比較すると、2019に神田・秋葉原周辺エリアへ埼玉県南部から来訪していた飲食する消費者が、2022年には減少し、より都心部に寄った構成になっていいます。(緑の部分)
一方で、その埼玉県南部に位置する浦和では、大きな変化は出ていません。これは推測するに、埼玉県南部からの勤務者が減少、もしくは帰宅時(調査は夕食以降の食事を調べている)の食事・飲酒の習慣が減ったことを示唆していると思われます。
神田の居酒屋のハナシ
2022年から2023年の比較では140%超で推移
神田に5店舗(居酒屋、お好み焼き、カジュアル系バル)を経営する経営者から伺った話ですが、2023年は昨対140%で推移。客層が目に見えて変り、いわゆる会社員グループが減少し、年齢が若いカップルや友人同士のグループが増えたようです。
明らかに街の客層、利用シーンが変わってきているのを感じる…とのこと。こうした話は、上記調査結果と同期しているように思えます。
「B面」は地域の「根需要」の分析が鍵
お店が位置するエリアの企業分布や施設、住宅の分布、勤務者や居住者の比率、性年代・属性、客層などを可視化し、日常の食事や飲酒シーン、グループ構成などを考慮に入れることで、「根需要」つまり基礎的な需要に基づくニーズとウォンツを定義することが大切です。
勿論、根需要ではなく、地域にまだない最新のトレンドでチャレンジは否定しませんし、そういう意欲的な飲食店が新たな市場を作っていくのだと思いますが、その場合は「B面」の後に、「A面」のマーケティングがその土地で可能か?」を検証していくことになります。
番外編 「B面」の「A面」化について
B面的なお店がA面に変化する…といった事例が出てきています。
・昔ながらのアナログな店、ボロいが趣あるレトロ、おばあちゃんの飾らない接客
レトロ喫茶や昭和の居酒屋、○十年続く地元の個人経営の食堂…こういった店が、エモい、映える、といった例も昨今散見されます。
トレンドとは無縁の堅実・良心的、地味、継続…これが非日常的な「体験価値」として「A面」化する、という現象が起きています。
しかしながら、これは「時間」×「人の心」が創り出したもの。スグにはまねできません。
私はJAPAN PRIDEと呼んでおりますが、古き良き日本の飲食店の良さを、現代流の解釈と技術で再現する…こうした価値づくりは「A面」的で面白い、と思います。
いかがでしたでしょうか?本コラムではなかなか詳細にはお伝えし切れませんが、続編はいずれまたご披露したいと思います。
「A面」と「B面」を使い分けていくことで、皆さまのマーケティングが進化していくことを願っております!

竹田クニ
株式会社ケイノーツ
代表取締役
早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。










































