
2025.04.04
【竹田クニ】企業都合の「4P」からの脱却 レストランテックは「4E」時代の強力な推進役となれるのか?
竹田クニのインサイトマーケティングの”基本のキ”として知られる「4P」。
これが時代とともに「4C」→「4E」と進化していることはご存じでしょうか?
「4P」で語られる要素は企業が主語になりやすく、顧客インサイトの存在が曖昧になりやすい。
「4P」→「4C」→「4E」の進化を考えることで、レストランテックはより進化することができるのではないか?
4P→4C→4Eへ
4Pの4つの要素は、ご存じのとおりProduct、Place、Price、Promotionの4つだが、マーケティングの基本であることに変わりはない。
しかしながら、この4Pには「企業視点」的な側面があり、販売実績や成功/失敗事例、競合他社動向、企業の保有リソース/チャネル…といった論拠に偏ってしまい、そこに顧客のインサイトが不足する傾向があるように思います。
平たく言えば「プロダクト・アウト」という言葉のマイナスのイメージです。

「4C」の登場
「4C」はアメリカの経済学者によって1993年に提唱されました。
4Cは端的に言うと、顧客の立場になって考え、対話し、顧客にとっての価値・価格・利便性を再定義するというもの。
折しも当時のアメリカ経済は、貿易赤字拡大、ラストベルト(重工業の衰退)といった景況と産業界の変化のさなかにあり、「マーケット・イン」の重要性が叫ばれたのでした。
日本においても、バブル崩壊後の失われた20年・30年…「商品を売るのではなく、体験を売れ!」と叫ばれたのは、この4C的な活動と言えるでしょう。
4Eの登場
「4E」が言われるようになったのは、2000年代初頭から。Eコマースの浸透に伴い、D2C(Direct to Customer)…製造・販売者による顧客への直接販売スタイルが増加し、それとともに多様なメディア・SNSを駆使した顧客との対話や関係づくりが重要視されるようになったわけです。
この「4E」は少しイメージしづらいかもしれませんので、以下、4要素について簡単に解説します。
Experience(顧客体験)
製品そのものではなく、製品をどんな顧客が、何を目的に、どんな場で、どのような用途で、どう使って、何を楽しむ・安らぐ・快感・ステイタス…などを得るのか。
Everywhere(遍在性)
これは少しわかりづらいかもしれませんが、「いつでも、どこでも、容易に手に取ることができるか?」という直訳と、逆に「偏っている≒限られた人にしか手に入れられない」という希少性の両方を指します。どちらも価値の要素になり得るのです。
遍在性:インターネットで簡単に購入できる、どこでも使える、品揃えが豊富、すぐ届く
→外食で言えば、多店舗、多様な提供形態(デリバリー、テイクアウト、ECなど)、ミールキット、カジュアルダウン(手間がかかる・敷居が高い料理を安価&手軽に提供など)偏在性:希少、限定
→外食で言えば、会員制、希少部位、一日限定20食、常連客のみ知っている
Evangelism(伝播性)
これも少しわかりづらいかもしれません。例えばこんな事例があります。
顧客同士がアドバイスし合うコミュニティ…LIXIL「猫壁」(にゃんぺき)
猫が遊びくつろぐ壁面ツールの機種選択や設置方法について、顧客がSNSで勝手にアドバイスし合うコミュニティーを創り出し、CRMベストプラクティス賞を受賞。

「猫壁」のエンドユーザーコミュニティ「猫壁ひろば」が「2024CRMベストプラクティス賞」を受賞! | 株式会社LIXILのプレスリリース (prtimes.jp)
森を守る「熊さん」が手渡しするカフェがインスタで顧客と交流…ANAKUMA CAFE
ぬいぐるみの熊が穴から手渡しでドリンクを手渡す「ANAKUMA CAFÉ」(原宿)

穴からぬいぐるみのクマが手渡すといアイデアだけでなく、実は「熊さん」(8頭います)は、失われた森を取り戻すというSDGs的な大義を担って活動し、ファンとも積極的にインスタやイベントでコミュニケーションをとる。
こうしたコミュニティでは、店や商品による体験やストーリー、顧客自身によるリコメンド、ファン同士の交流が生まれています。それがEvangelism(伝播・伝導)です。
Exchange(交換)
これまでのビジネスでも、製品は対価と「交換」されるわけですが、ここで言う「交換」の意味はより広い。
一般的には、シェアやサブスクのように価値を分割したり都度に分ける概念を指す場合が多いようです。
たとえば車で言えば、カーシェアによって維持費やガソリン代を利用の分だけ支払う仕組みは、車の所有(所有の満足)と車の利用(機能活用の満足)を切り分けることで、新たな「交換価値」を定義しています。
外食で言えば、行列ができる店での優先利用を価値化した「ファストパス」や、予約の取りにくいレストランの予約サービス、眺望の良い席や有名寿司屋で大将が握るカウンター席のアップチャージなどが該当するだろう。
これらは製品や商品サービス“そのもの”だけでなく、コスパやタイパ、サービスの希少性、利用の難易度などを統合した「価値」との“交換”を意味します。
「企業視点」→「消費者視点」→「顧客体験視点」の進化だが優劣ではない
こうしてみていくと…
4P…企業視点
4C…消費者視点
4E…顧客体験視点
と言えるかと思いますが、どれもが必要な要素であり、新旧で優劣があるわけではないと考えます。
4P、4C、4Eは「マーケティングミックス」という言葉でくくられることが多いですが、自社の戦略において4P、4C、4Eを多面的に検証し、戦略を磨くことが重要かつ有効と考えます。
イミ消費、SDGs…現代の“価値”との関連性
近年、特に4Eが重視されている背景としては、インターネット環境やD2Cの進化、そして「イミ消費」「SDGs」という地球市民としての行動価値概念が消費者に浸透していることの影響が大きい。
4P、4C、4Eはいずれも有効な概念ですが、やはり現代そしてこれからの価値…すなわち体験価値を構成する要素としての「4E」は、最重要といってもいいのではないでしょうか。
テクノロジーが実現する未来を描く
外食産業に携わる人々、そしてレストランテックにかかわる人々にとって、「4E」は大切な考え方です。
レストランテックが対峙する外食産業の各種テーマを4P、4C、4Eそれぞれに紐づけてみると…
「4P」視点 → 競争戦略、競合対策、コスト、販促、囲い込み
「4C」視点 → POS、ABC分析、パレート理論、アンケート、トレンド、コスパ
「4E」視点 → ファンづくり、CRM、共感経営
このように対応づけしやすいのではないでしょうか。
変化・進化する市場において、レストランテックは、マーケティング、フードテック、キッチンソリューション、ミールソリューションとともに、新たな顧客体験価値創造に向かっていくべきなのです。

竹田クニ
株式会社ケイノーツ
代表取締役
早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。










































