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2025.01.29

「飲む」 or 「飲まない」だけでは見えない ~アルコール・ダイバシティと新たな顧客体験~

国内飲食DXニュース

「若者が酒を飲まなくなった!」といわれて久しい。確かに若い世代を中心に酒を飲まない消費者は増加傾向にあるが、飲む?か飲まないか?という2軸の考え方では、この市場を理解することは難しい。
広がる「Low」&「ノン」アルコールについてカスタマインサイトと市場の可能性について考えてみたい。

成人人口の半分以上が飲まない! 若い人ほどその比率が高い

まずは良く知られているデータから。
厚生労働省が令和元年に行った「国民健康・栄養調査報告」のデータ。
成人人口の55.1%が酒を「飲まない」か「ほとんど飲まない」 
そして若年ほどその傾向が高い・・・N数は6500超であるから統計的な信頼性も高い。

飲酒志向の高い人からすれば、にわかに信じがたい数字かも知れない。
繁華街に行けば酒場は賑わっているし、また近年では路上で酒を飲む若者が問題視されたりと、上記の調査結果とは結び付きにくい。

しかしながら、確実に市場は変化しているのだ。
昨今「スマドリ」なるビールメーカーのキャンペーンで謳われる多様性の尊重、「ソバ―キュリアス(もしくはソバーキュリアン)」という“敢えて飲まない“生き方など、多様性と共に確実にマーケットは広がっているのだ。

「飲む」or「飲まない」の2軸ではない  Low,Nonアルコールの多様性とは?

2020年に出版された「ゲコノミクス」という書籍が興味深い。

酒を「飲めない」著者(昔は無理していたそうだ)が、自らの体験や投資家としての活動も含めた深い洞察がある。
ゲコノミクス: 巨大市場を開拓せよ! | 藤野 英人 |本 | 通販 | Amazon
氏の分析を基に図解してみたのが下図である。

酒が「体質的に飲める」 or 「飲めない」 / 「好き」 or 「嫌い」で分けた4象限が基本だ。
しかしながら現実はもっと複雑。

酒が好きで✕飲める人でも…車の運転や健康診断、ドクターストップやその日の体調、または飲みたくない相手(笑)など、シーンに寄って違いが当然ある。
お酒が嫌い✕体質的に飲めるであれば、酒のバリエーションでも変わるだろうし、その場の空気感でも変化する。

このように単に「飲める」「飲めない」の議論ではなく、飲食するシーンによって様々な多様性が出現すると理解することが重要だ。

「飲めない」「飲まない」人々の不便、不都合、不安は?

では「飲めない」「飲まない」人が感じる不便・不都合・不満は何だろうか?

  • 選択肢が少ない→コーラ、烏龍茶、ジンジャエールetc,

  • 割り勘負け→飲んでないのに同じ料金?

  • フードの味が濃い→飲酒業態では往々にして酒のつまみは塩分濃度が高かったり・・・

  • 店員の態度に疎外感を感じる →店側からすると「単価が低い」
    ※別に安く済ませたいとも思っていない→コーラか烏龍茶“なら”ありますけど…という店員の言葉

  • 少数派扱い→♪人生損してるね、などの言葉

と「そりゃあそうだ!」と思えるものばかり。
こういった人々の不満を解消し、新たな「体験価値」が提供出来たら、市場はもっと顕在化するのかもしれません。

やってみて分かった「体験価値」 “ノンアルの夕べ“

12月某日 学芸大学にある「low alcohol café」にて、外食関係者数名でノンアルパーティをやってみました。
まず驚いたのが、ノンアルコールドリンクのバリエーション多さとクオリティ

ノンアルコールビール、微アルコールビール(法律の関係で度数1%未満はノンアルコール表記が出来る)→20種類以上

ノンアルコール × ウイスキー(スコッチ、バーボン)
ノンアルコール × ジン
ノンアルコール × ラム
ノンアルコール × テキーラ

クラフトビールテイストは薫り&旨味で満足度高い

ジンソニック(ジン+トニック+ソーダ)は甘さ控えめ

ラムは甘い香りが酒に“かなり近い”

ノンアルビールは“クラフト”との相性が良いらしく、非常に薫り高く美味。
ジンやラムはトニックやソーダで割ることで様々な飲み方で楽しめる・・・などなど驚きの連続であった。

この会は、いわゆる「ゲコ」も招待したのだが、彼曰く「♪選択肢が多くて、凄くテンションが上がる!楽しい!」ドクターストップ中の人も居たが、「♪これなら満足できるかも!」酒のみは・・・「♪意外と高揚感あるね!飲んでるみたい!」
とまさに飲む人も飲まない人も等しく同じ体験価値を味わう楽しい夕べになったことは、大きな発見であった。

ノンアルコールのラムやテキーラの「味」は気になるところでしょう。
「違うと言えば“違う”」んだけど「近いと言えば“近い”」・・・というのが筆者の正直な感想。ただ、限りなく同じ味を目指す必要は無いかもしれない。重要なのは、豊富な種類と、ボトルから注ぐ臨場感、○○で割って飲む等の飲み方の文化とバリエーション といった選択肢があることによる「体験価値」だ。

広がるLow,Nonアルコール商品

とは言え、飲まない人が、「本来アルコール飲料であるものを“Non”にしたもの」が飲みたいのか?と言うわけでもないだろう。

例えば、

  • オーガニックの上質なフルーツを使った上質なフレッシュジュース

  • オーガニックの上質なフルーツを炭酸で割ったサワー

  • 薫り高い、ハイグレードなお茶

  • 天然で湧き出している炭酸水

などは上記の「体験価値」に貢献できるだろうし、またスタイリッシュなボトルでの提供や、専用のグラスでの提供といった価値も考えられる。

店のエコノミクス、事情に合うか?

今回の“ノンアルの夕べ”は、外食頻度も相応に高く、また一定以上の可処分所得がある人たちが集まった。
グループの中の「ノンアル人」曰く、
「♪金を払いたくないんじゃなくて、金を払いたくなるドリンクを出してほしい!」

もしこういう客層を集客できるのであれば、店側としても「ノンアル客は単価が低い」ではなくなる。

一方で、そういう客が、2~3日に数名…居るかどうか…では、限られた在庫スペース、冷蔵庫に沢山の種類を置けないという物理的な問題は発生する。
そうすると、やはり自店舗の既存客層に加え、業態、立地、特徴・強みから考える「ターゲット設定」が重要になってくる。

いずれにしても、ノンアルは冒頭のデータの通り、多くの消費者がいることは確実。
自店の強み分析、集客ターゲットを考える中で、可能性を見出すことが重要であります。

カスタマーインサイトの一例

ターゲットを考えるうえで、カスタマーインサイトの一例として、事例を紹介したい

―――30代半ば 女子大時代の仲良しグループ5名の同窓会での出来事(実話です)―――

  • 久しぶりに皆で集まろうよ!

  • 楽しみだね、お店どうする? 私、ワイン飲みたい!いい店知ってるよ!

  • 良いね良いね! どこどこ?

  • あ、ちょっと待って…。 A子がさぁ、ご懐妊じゃん。

    A子一番の酒好きだから、ちょっとかわいそうかも…。

  • そうか…、それもそうだね…。

  • じゃぁさ、○○のカフェとかどう? テラス眺め良いし、フードも美味しいし!

写真はイメージです

以上は実話であります。
こういったシーンにおいて「ノンアルドリンクが充実している」というのは、重要な選択要素になり得るわけです。

ノンアルコールは「ブーム」や「トレンド」ではありません

冒頭の市場の実態データをベースに、自店のターゲット、集客可能性を改めて見つめ、飲む人も飲まない人両方が楽しめる=「顧客体験価値」の高い店づくりをすることが、今後求められてくるのではないでしょうか?

竹田クニ

株式会社ケイノーツ

代表取締役

早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。

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