
2026.04.07
外食10%食料品0%で外食は崩壊?客足、仕入れだけではない、外食関係者必須の理解
竹田クニのインサイト消費税減税についての動向は皆さんも気になるところでしょう。
先般「日本フードサービス協会」が外食10%食料品0%に「反対」を表明。それに対し賛否両論、SNSでは若干炎上もあったようですが、皆さんはどうお感じになられましたか?
10%の価格差でスーパー・コンビニに客が流れる?でも仕入れは安くなる?・・・いえいえ、そんな単純なのものではなく、外食10%食料品0%で外食産業は崩壊の危機にさらされるのです。
日本フードサービス学会の反対意見と、世論の批判
同団体が反対を表明したのは2月25日。

外食業界団体、食品消費税ゼロに反対表明 軽減税率「抜本見直しを」 - 日本経済新聞
外食業界「消費税ゼロ」に反対 来店客離れで経営に打撃(共同通信) - Yahoo!ニュース
報道で様々ご連になっていると思いますが、メディアから発信される内容をまとめると・・・
コンビニ、スーパーとの価格差が広がると外食からの「客離れ」を起こす
システム改修にコストがかかるし、2年後もどす際にもまたコストがかかる
というもの。同団体の主張が業界保護を優先した見解に映り、「消費者の味方ではない」「便乗値上げをしたいのか」といった批判が殺到し、炎上状態となった。
一方でネット民の書き込み等では・・・
だからといって寿司を家で…という人は少ないのでは?
大変なのはわかるが、消費者の味方ではない
外食は空間・雰囲気を楽しむのだから、価格差が生じてもそんなに客足は減らない?
と稚拙な感が否めない。
外食産業を壊滅させかねない影響
外食と食料品間に税差が生まれることは単に価格差が客離れ…という単純な問題ではなく、最悪シナリオの場合数万店規模での倒産廃業に繋がりかねないのです。外食に携わる人としては、この問題を正しく知り、建設的に議論できることが重要かつ必須です。
税の「構造」が招く経営危機
「外食10%食料品0%」=「外食10%内食0%」で客足に影響が出そうなのは解るが、一方で「仕入れは安くなるんじゃないの?」・・・そんな消費者の声は聞こえてきますが、消費税減税の影響は、企業会計上の「預かり消費税」という構造に問題を引き起こすのです。
<PLにみる消費税の対象>

現下の消費税10%では…
「売上の消費税10%」ー「食材、家賃、消耗品、水光熱、販促の消費税」=“預かり消費税“として納める
つまり、飲食店が「仕入れた、買ったで支払った消費税」を「控除する」ことになるのですが、人件費、支払手数料(カード、ペイメントの手数料)は消費税の対象外であることから、決算時に「控除」とはなりません。
食材が「0%」となった場合には、「食材」分の“控除可能な税”が失われることから飲食店が納付する預かり消費税額が大きくなります。
年商6000万円(月商500万円)の店をモデルにシミュレーションします。
このシミュレーションを理解するためには基礎知識が必要です。
<必要な知識>
「0%(免税)」と「非課税」の違い・・・同じに見えますが、0%は還付可能、非課税は還付されない
「還付」もタイムラグがある・・・決算時に申告→還付されたとしても、入金までには半年前後タイムラグがあり、キャッシュフローが悪化する(最悪の場合、黒字倒産を誘発する)

いかがでしょうか?
出来るだけシンプルに表現するために「客数減」「仕入れ値上げ」の影響は除いてシミュレーションしていますが、実際には、①「外食10%食材0%」➁「外食10%食材非課税」では客数減による10%程度の売り上げダウンと仕入れ値の上昇が予測され、飲食店の収支、キャッシュフローはさらに悪化します。
現下の外食産業の平均利益率が5%~10%水準としても、利益は半減以下となることが想定され、外食産業の存亡にかかわる大きな問題となってくるのです。
なぜ「仕入れ額」が値上がりするのか?
「仕入れ値上がり」について、「どうして?」と思う方も居ると思いますが、食品卸・メーカーは以下のシミュレーション。

つまり、食材が「非課税」になった場合、全ての還付を受けることが出来ないことから利益が激減。その利益を取り戻すために「値上げ必至」となるわけです。また0%(免税)となったとしても、外食同様「還付」までのタイムラグが生じ、そのためキャッシュフローが悪化→値上げへ連鎖するのです。
食団連の提言における試算
食団連では、客数減や仕入れ値上がり予測を加え、下記の試算をしています。
数万店が淘汰、廃業に追い込まれる深刻な事態を警告しています。

資料・食団連
食団連は今、閣僚、政治家、議員連盟、各省庁などに提言活動を行っていますが、各政党の主張もバラバラであり、直地が予想しづらい。今後の進捗について注目していきましょう。
税の「連鎖」が途切れることによる弊害
消費税減税は「消費者支援」としては国民感情にFITするものかとは思いますが、一方で、業界による「税率差」は個別の業界に深刻な経営危機をもたらす可能性があるのです。
ペンパイナッポーアッポーペン
消費税というのは、生産、卸、小売…と各サプライチェーンの中で生じ、連鎖的に課税されることによって成立しています。
どこかの業界を特定して免税や非課税が行われた場合に連鎖が破綻し、特定の業界に壊滅的な経営打撃を与える可能性があるのです。
不謹慎な表現かも知れませんが・・・

税の連鎖を繋げていかないと誰かが“しわ寄せ”を被る。そんな構造に思えるのです。
もし現行の外食10%食料品8%(そもそも2019年決定時にも外食8%の陳情は強く行われた)を変えるのだとすれば、食団連案の外食5%食料品5%が最良にようには思えますね。

竹田クニ
株式会社ケイノーツ
代表取締役
早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。









