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2026.03.09

忍び寄る「客数減」⇒「市場縮小」の影?~データから読み解く市場の今、と消費税減税の必要性~ 

竹田クニのインサイト

コストプッシュによる値上げ、3年連続でマイナスが続く実質賃金、この結果「エンゲル係数」は44年ぶりに28.6%という高水準を記録している。このような要素からは、「外食市場が縮小している?」という懸念があるのは当然だ。

外食産業は概して50万店舗、410万人という産業であるが、業種業態、価格帯、経営が多岐にわたり、市場動向を端的に言い表すことは実は非常に難易度が高い。
今回はいくつかの市場データから、市場縮小傾向とその懸念について検証する。

カジュアル業態ほど客数が減少?外食上場企業の業績から読み取れるカスタマー動向

東洋経済オンラインに面白い記事がありました。要約すると…

  • 外食上場各社は2025年後半から厳しくなっている?

  • 所得の低い人のほうが外食支出を抑える傾向

  • 売上/客数で見ると、客数の減少が著しい

  • 客数減を値上げでカバーしている構造が見える

  • カジュアル業態の中でも「単価が高め」の店に苦戦傾向

回転ずし、焼肉チェーンでも静かに客離れが進む…値上げが相次ぐ外食店に行ける層・行けない層の"残酷な格差" | 外食 | 東洋経済オンライン

伸びない賃金に対し、エンゲル係数(所得における食費の割合)が44年ぶりの高水準を記録。一方、物価高、人件費高騰に対して飲食店は価格転嫁=値上げを進める。
このスパイラルが市場の縮減に繋がっているのではないか?とこの記事の記者は警鐘を鳴らす。

下記が記事に上がっていた外食上場各社の業績一覧。
確かに、2表めの「客数」で前年同月割れ(黄色)が目立つ。

俯瞰すると2025年後半に「客数が減少」=“黄色“を記録している企業が目立つ。
記事中に詳しく書かれているが、

<好調>

  • モスフードサービス、幸楽苑、丸千代山岡家、大戸屋、ジョイフル、サイゼリヤ、エターナルホスピタリティ(鳥貴族)→平均で+5%以上客数増加

<不調?>

  • 丼ものチェーン(牛丼、天丼、かつ丼)
    「令和のコメ騒動」含む原材料の値上がり
    →価格改定が、安さへの期待も大きい業態であるが故に徐々に節約層の離脱を生んでいる?

  • 価格が相対的に高めのラーメン
    →幸楽苑、ギフト、山岡家は堅調。一方で一風堂、リンガーハット、魁力屋は減速

  • 日常のごちそう感=単価が高めの定食、焼肉など
    →和食さと、サガミチェーン、杵屋、焼肉きんぐ、あみやき亭、安楽亭などが客数減傾向

「安さ」の期待が大きいジャンル、同一業態のなかで“価格が高め”のブランドが客数減の傾向?

  • 総合する消費者が「安さ」を期待するジャンル・・・ラーメン、丼もの

  • 同一の業態=「消費者が使うシーンが同じ」の中で、比較して高い値付けのブランド

に客数減の傾向があるように見える。

(株)リクルート発表「外食市場調査」に見る動向

上記の東洋経済オンラインの記事は大変興味深いものである一方、外食産業は90%以上が中小零細企業で構成されており、上場企業の業績だけではその動向はつかみきれない。

(株)リクルート ホットペッパーグルメ外食総研が毎月・毎年発表している「外食市場調査」は、消費者1万人の1か月間のアンケートから、夕方以降の食事の店、場所、費用、目的、相手など調査しており、「消費者の実際の行動」を測定した調査として非常に興味深い。

外食市場調査(2025年12月度)

2019年比 食事業体はほぼコロナ前水準に到達、一方飲酒業態は7~80%で停滞

2025年度に発表された月次の数字を2019年比見てみると業態別の差が明らかだ。

  • 食事主体業体=食事を目的とす業態―和食、各国料理、焼肉、ファミリーレストラン、回転すしなど

    →概ねコロナ前の水準に回復

  • 飲酒主体業態=居酒屋、焼き鳥・串揚げ、バー・バル、パブ、スナックなど

    →前年比7~80%間を推移・・・7割市場が現実に

  • 軽食主体業態=ファストフード、ラーメン、丼もの専業業態、立ち食い、コンビニ・スーパーのイートインなど

    →概ね好調でコロナ禍前を上回る

(株)リクルート ホットペッパーグルメ外食総研発表のデータより筆者が作成

外食頻度、外食単価の2019年―2025年推移

外食頻度・単価はコロナ禍中において激減した後、年を追うごとに上昇してきていることがわかる。

但し、外食頻度はコロナ禍前の水準をいまだ下回っている一方、外食単価は、コロナ前の水準を上回っていることが興味深い。頻度は働き方、生活の行動変化、単価は外食の「値上げ」の影響は大きいだろう。また単価については機会減少=一回当たりの単価上昇の傾向も考えられる。

(株)リクルート ホットペッパーグルメ外食総研発表のデータより筆者が作成

エンゲル係数は上昇し続けている

エンゲル係数が44年ぶりの水準となる28.6%を記録。伸びない消費の一方で、食の負担は増すばかり・・・という傾向が表れています。

特に所得の低い人ほど影響は大きく、「生きるための食」以外の可処分所得が減じれば、それは外食支出を抑制する方向に作用します。

東洋経済オンライン、リクルート調査、エンゲル係数・・・3者を統合した考察

消費者はコストパフォーマンスを厳しく選択?

可処分所得の低い消費者ほど、外食に欠けられる予算は厳しくなっており、消費者は「絶対額」「コストパフォーマンス」をより厳しく選択してきている

  • 単価の絶対値が低い企業は堅調・・・サイゼリヤ、幸楽苑、鳥貴族など

  • 同業態で価格設定が高めの企業は不調・・・リンガーハット、一風堂

  • 単価が高めになる業態は不調・・・和食チェーン、焼肉

「客数」が減少し、「値上げ」が売上減少を担保するという構造

働き方、生活の変化により機会が減少、エンゲル係数の上昇は、市場全体にとって「客足が遠のく」=客数減をもたらしていることは確か。特に飲酒主体業態ではその傾向が堅調である。

「客数減」による売上減を「値上げ」によってカバーするという構造が生まれており、この構造はサスティナブルではない。
更なる食材・エネルギー費高騰、人件費上昇、家賃上昇は、飲食業の経営を破壊するインパクトを持っており、消費者への支援策と同時に、外食事業者の急激な経営環境変化に対応支援が必要であると考えられる。

外食0%の必要

外食の各種業界団体から、「外食を消費税0%にすべき」という陳情・提言が盛んに行われている。本コラムで取り上げた調査からは、外食から足が遠のく傾向が所得の低い人ほど大きいことがわかった。
外食から足が遠のけば・・・当然それは中食、内食に流れるわけで、10%の価格差は市場においては想像以上に大きいと思われます。

外食を「十把一絡げ」で論ずることはナンセンス

食は、生命維持のための食、社交の場、家族のきずなを深める場、感謝やご褒美・・・さまざまな目的・シーンがある。
「外食0%」議論においては、所得の低い人に対する支援と、一部の人びとの贅沢を分けて論じる必要があるだろう。例えば、日常の食には減税を、一人2万円を超える飲食には課税を・・・こうした運用が望まれる。
2019年の8%-10%議論において、「高級料亭を8%にする必要は無い…」といった意見があったと聞いているが、本稿で取り上げた市場調査などから、より国民生活の実態と、業界の現実を見た「現実的」かつ「実効的」な制度立案が望まれます。
外食産業の「多様性」が“出来ない理由”になってはならない・・・そう考えます。

竹田クニ

株式会社ケイノーツ

代表取締役

早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。

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