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2025.08.13

「稼働」と「原価」の可視化 生産性向上への新たな科学的アプローチ

竹田クニのインサイト

「混んでいる店なのになぜか4名席に1名客が着席」「夜遅くに店が客もまばらなのにスタッフが手持無沙汰」…

残念ながらよく見かける光景と言えますが、これらは明らかに生産性が上がらない事象です。

これまで“優秀な店長”が行ってきた配席スキルや需要予測、時間帯ごとのFL可視化……デジタル活用によって、これらが中小個店でも実現できるようになってきました。

「テーブル稼働率」の可視化と「配席の最適化」ソリューション

テーブルの稼働を下げてしまう要因としては、4名席に1名または2名着席、6名席に3名着席など、“効率的でない配席”が主に考えられますが、店舗スタッフの配席スキルや、そもそも来店するグループサイズ傾向とレイアウトが合っていないなど、原因は様々です。

「稼働」を可視化し、業績向上につなげるレストランテック

テーブルごとの席稼働を時間帯ごとに可視化することが、レストランテックによって可能になってきました。

卓の滞在時間、着席人数がリアルタイムで表示・データ蓄積され、各卓の「稼働率」データの可視化が可能となります。配席ミスの傾向や、曜日・時間帯別の組人数傾向を分析することで、最適な配席を実現するための有効なデータとなります。

画像:株式会社リクルート「レストランボード」WEBサイト

こうしたアプローチにより、店舗ごとの配席ノウハウを磨き、レイアウトを最適化することで、店舗の売上の伸びしろを創り出すことは、今や必須の取り組みと言えるかもしれません。

時間帯ごとのFL把握によるソリューション

さらに、時間帯ごとの売上詳細・原価・人件費データを合わせて見ることで、時間帯ごとのFL把握により生産性向上のターゲットが見えてきます。

※画像は実際の店舗データを参考に筆者作成

このデータで見ると、平日の深夜時間帯は大きな「赤字」であることが分かります。

営業時間を決めるファクターは様々で、一概には言えないと考えますが、上記のケースでは、平日の営業時間を「22:30ラストオーダー、23:00閉店」とした方が、経営効率は上がる……という検討ポイントが見えてきます。

食材ロス、発注業務効率を上げるソリューション

もう一つの観点として、「原価」に関するソリューションが有効でしょう。

近年では、原価管理はAIを活用した「需要予測」をもとにした精緻化が進んでおり、需要予測に基づいた「最適在庫」が可視化され、最適な発注量・発注タイミングがダッシュボード機能で一元管理可能になっています。

需要予測⇒発注アラート⇒自動発注

下記は、「需要予測⇒発注アラート⇒自動発注」の一連の仕組みを提供している㈱Goals「HANZO」のWEBサイトより。

店舗ごとの実績データと天候・曜日などの変動要素を加味し、AIが需要予測。「品切れ発生ライン」「ロス発生ライン」の間に適正在庫量を自動設定し、ダッシュボードでアラームを表示。

簡易な操作で発注できるほか、卸・メーカー直で発注が飛ぶ仕組みとなっています。

画像:㈱Goals「HANZO」

理論原価・実原価のGAPを改善

自動発注と聞くと「発注業務の効率化」をイメージしがちですが、もちろん効率化も実現されます。ただし、本稿で注目したいのは原価コントロールの精度向上です。

一般的に「理論原価」と「実原価」には3〜5%のGAPが存在すると言われていますが、同社の実績では、原価GAPの改善で1〜3%、在庫回転日数の改善で20〜30日の向上が見込めるとのことです。

「儲けるチカラの回復」とDX

稼働の可視化も原価管理も、もちろんこれまで外食企業が取り組んできたテーマですが、これが簡便にできるようになったことは大きな進化です。規模の大きい企業で専任の管理部門がなくとも、欲しい情報がデジタルの力で集計・可視化されます。

これはまさに「頭脳労働」の代替であり、こういう分野はデジタルに任せ、「ヒト」は“どう改善するか?”というクリエイティブな改善業務に集中することができます。

「稼働」へのアプローチと「原価」へのアプローチは、原価高騰・人件費高騰・家賃高騰……と、“儲ける”=利益の確保が難しくなっている外食業界において、極めて有効な取り組みとなっています。

竹田クニ

株式会社ケイノーツ

代表取締役

早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。

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