
2024.06.17
お客様と共に作り上げた『らくしふ』の実力とは?
飲食DXリーダーズ飲食店の店長の重要な仕事の1つに、シフト管理が挙げられる。ワンオペでできる1坪零細店ならともかく、どんなにできる店長でも1人で厨房もホールも獅子奮迅したとて、店が回るわけがない。
そこで、1週間の予定をアルバイト全員にLINEで送ってもらって、Excelで懸命にシフトを組んでいくのだが、これがなかなかの難題だ。繁忙する時間帯に、店長が常に控室に籠ってパソコンやタブレット、スマートフォンの端末をずっと操作していると、店員からは「現場から逃亡する不熱心な店長だ」とあらぬ不信感を持たれて、離反を招きかねない。
ところが、ITの技術で、煩雑なシフト作成が簡便な操作で、瞬時に作成できる便利なツールが生み出されている。
クロスビット(本社・東京都品川区)が提案する、「らくしふ」がそれだ。
「らくしふ」は、後述するように飲食店との親和性も高い。シフト作成の長時間作業から解放された店長は、本来の集客を上げるにはどうすれば良いか、クリエーティブな企画立案ができる時間を生み出せる。
もちろん、繁忙時には指揮官先頭で店に立ち、統率の取れた店舗運営が可能になる。
デジタルなテクノロジーによって、シフト管理に割いていた店長業務を劇的に短縮。店舗運営に超変革をもたらせる、飲食DXツール「らくしふ」が誕生した背景、今後の目標を、開発者であるクロスビット代表取締役社長・小久保孝咲氏に聞いた。
―――シフト管理ツールの「らくしふ」は、どのようにして生み出されたのでしょうか。人材に興味を持った切っ掛けは?
小久保 学生時代の就活していた時に、実際に社会に出て働いてみないと何もわからないと思い、社員2名の人材サービスを提供する企業で働かせてもらっていた時期がありました。その企業は、転職支援や求人広告を打つ事業を展開していました。当時その企業は社員の方は2名のみで、何でもチャレンジできそうな雰囲気でした。勤務し始めてからは、パートナー企業の人事担当の方とよく話をして、採用に対する考えや、なぜそのポジションが空いているのかを、立体的に聞いていました。また転職したあと、より活き活きした様子で働く方々を多く見てきました。そこから「『働く』をテーマにした仕事がしたい」と思うようになりました。

―――なるほど、学生の頃から人材サービスを提供する企業で働いた経験が生かされているのですね。クロスビットは、そもそもどういう経緯で始まった会社なのですか。
小久保 クロスビットは、2016年4月の設立で、9年目に入りました。早稲田大学政経学部を卒業して、すぐに会社を設立しました。当時は学生起業がはやり始めていて、仲の良い同級生は皆、起業をしているような状況だったのです。会社を設立して最初の1年はサービスサイトの作成、システム改修などを受託していました。
―――文系の学部のご出身なのですが、小久保さん自身でプログラムを書くのですか。
小久保 プログラミングにはもともと興味があって、大学で授業を受けていました。また、その当時は統計を専攻していたため、自分でコードを書いてソフトを動かすということはやっていました。全く同じというわけではありませんが一部、大学の授業で学んだことが、起業のベースにはなっています。ただクロスビットを設立した当時の強みは、「スピードとやる気」といったところで、最初はシステム開発企業の下請けに入っていました。営業も、プロジェクトマネジメントも、納品も責任を持って行っていました。
―――受託の仕事から、自社製品の「らくしふ」の展開へは、どのようにステップアップしたのですか。
小久保 2017年1月に外部の資本を初めて受け入れました。事業をやるからには、自分がやりたいと思える分野で1位になりたいと思っていました。「らくしふ」はまだリリースしておらず、シフト管理のツールを作りたいと投資を募りました。当時は、シフト管理で圧倒的なシェアを持っている企業が多くはなかったのです。ユーザー様たちに話を聞いてみると「シフト管理サービスを導入しているが、使いこなせておらず、Excelを使うほうが早い」と、皆同じ事を言っていました。その課題解決に自分たちが貢献できると感じたため、この市場で1位を目指そうと思いました。

―――「らくしふ」の製品名の由来は?
小久保 わかりやすいほうが、お客様に伝わりやすいと思ったためです。多くの方から困っている話を聞いていたため本気でシフト管理のソフトを作れば、「楽だ」、「便利だ」と言ってもらえる。「らくしふ」なら使われるという直感はありました。
―――そこで「らくしふ」が立ち上がっていくのですが、飲食業界とはどういった接点があったのですか。
小久保 「らくしふ」は元々居酒屋の業態への導入が進み、そこからほかの業態にも導入していただけるようになりました。一社目にご契約をしていただいたのは、ダイヤモンドダイニング(現:株式会社DDグループの連結子会社である株式会社ダイヤモンドダイニング)様でした。ドミナントの出店戦略を持たれていて、変動的な時間で働く学生をたくさん採用なさっていました。そのためダイヤモンドダイニング様内では当時出勤希望を出してもらっても、シフトの枠数からはみ出てしまった時間を削らなければならない、しかしやめてほしいわけではないという難しい調整をされているケースが多くありました。かつ特に学生さんは働き方に自由度を持たせられたほうが、気持ち良く働いてもらえるといった傾向も存在しており、なんとか実現できるようにとても気を配っていらっしゃいました。そういった課題を考慮しながら、システム化できていない環境で、マネージャー様や店長様が、Excelを駆使してシフトの調整をされていたのです。

現在の利用企業様一例
―――起業し立てのスタートアップが、いきなり大手企業と。そんなことがあり得るのでしょうか。
小久保 Facebookに広告を出して、4社様から問い合わせがあったうちの1社様が、ダイヤモンドダイニング様でした。今のようにグループ化する前の営業部長の方からお問い合わせをいただいて、資料を持って三田の本社に伺いました。単純に「紙を止めましょう」というのではなくて、どの部分をデジタル化すれば良いのか。働き方の満足度が向上し、人件費管理がしやすく、新規採用費を抑えるポイントを説明すると、その場でプロジェクトが開始となりました。どの店舗で導入するかを検討され、「わらやき屋 銀座店」から「らくしふ」の歴史が始まりました。
―――「わらやき屋」に入れる時に、カスタマイズをされたのですか。
小久保 カスタマイズというより、もはやダイヤモンドダイニング様と、一緒に「らくしふ」を作っていったようなものです。画面ひとつを取っても、「これだとわかりにくい」、「これだとわかりやすい」と毎週毎週、フィードバックをいただいて、改善を重ねていきました。従来のシフト管理は、LINEグループで集めることが多く、いろいろな方から集まった希望日・希望時間を、Excelに写し換えて、調整し、チェックして、人件費を確認。その後はエリアでの調整があるため、最終決定の前に会議をして、いよいよシフトが決定。しかしその後「この日は出勤できません」と連絡がくることもある。今日現在も飲食店の約85%は、手作業でこのようなシフト管理を続けているのです。
―――ということは、貴社にとってはシフト管理は、まだまだ手つかずのブルーオーシャンですね。手作業の悩みが尽きない飲食店には、もっと知っていただきたい。
小久保 そうなのです。ちなみに飲食店だけでなく、介護施設、病院、ホテル、工場、ホームセンターなど広い業態でご利用していただいています。シフトを組む作業は、飲食店の場合は店長様が業務時間中に担当することがありますが、スタッフ様から見れば「忙しい時になぜバックヤードに下がっているのか」と見えてしまい、士気に関わります。しかし、シフト表がなければ売上が立てられません。ホールに出るのを優先して、しっかりしたシフト表を組む時間がないまま営業をする場合、来店したお客様に対応し切れず、リピーターを獲得することも難しくなります。そうなると、広告にお金をかけて、集客をし直さなければなりません。

多様な業種業態で利用されている。
―――なるほど。シフトの問題は肝心なお店の売上、経費や利益も左右してしまいます。
小久保 おっしゃる通りです。その意味では、応援スタッフ(ヘルプ)の調整をスムーズにすることも必要です。あと1名勤務できる方がいれば、お客様を待たせてしまう時間が短縮されます。調理・提供のスピード、空いたお皿を下げるスピードが早まれば、店舗の回転率が高まることにつながります。ところがそれをやろうと思えば、仕組みをつくるのに、想像を絶するほど多くの時間が掛かっていた。それを「らくしふ」ならば、楽に、手早く応援のシフトが組めて、売上と連動した人件費の管理がスムーズに行えます。法定労働時間、外国籍留学生の労働上限時間などの労務に関する法令違反リスクを犯してしまうことも、未然に防ぐ機能があります。

―――ヘルプのシフトにまで気を配るとは、飲食店にとってとても実践的なアプリなのですね。
小久保 ありがとうございます。シフトを組めても緊急で欠員が出ることが多々ありますが、「らくしふ」上で、勤務できる方がいないか呼び掛ける機能がありますので、これでたいがいの緊急枠も埋めてしまえます。「らくしふ」全体では、導入事業所数が2万事業所にまで拡大しました。最初は外食業態の企業様が「らくしふ」をご利用いただくお客様のほぼ10割でしたが、現在は引き続きご導入企業様は増加しながらもご利用事業所数内全体の中での比率では5割程の割合です。外食業態では大企業様にも多く導入していただいています。各社共通の悩み、個々の悩みを見極めていくのが弊社の得意なところだと認識しており、問題を切り分けて臨機応変に解決することを引き続き心がけていきます。
弊社の特徴は、日々接している目の前の方々が価値を届ける対象であること。シフト管理だけでなくその周辺の業務もDXすることで、サービスを提供なさるお客様はそれぞれが志向されるサービスの中で人にしか生み出せない価値提供に集中できるようになると考えています。各社のお客様がより良いサービスを届け続けるハードルが下がり、働き手は魅力的な職場環境で適正な報酬や機会を得られるため、モチベーション高くサービス提供に臨める。そしてそのサービスを提供なさるお客様と働き手が届けるサービスを受け取る人が良い体験を受ける場面が広がっている。そのような社会を実現していきたいというビジョンがあります。
―――クロスビットの社名の由来は?これからの目標も聞かせてください。
小久保 Xは無限の可能性という意味合いです。ビットは、システムも含めたIT系の企業ということです。「シフト勤務を取り入れている」という事業所は日本には推定で167万あり、2,000万人のシフトワーカー様がいます。まだまだシェアを取っていけるため、開拓していきたいです。
今後はシフトだけではなくて、サービスを提供なさるお客様の採用の領域も強化する方針です。ワーカー様が「らくしふ」で仕事を探すと、入社後にこのようなスキルが身に付けられる、時給がこのように上っていくと応募前にわかるような、抽象化したデータをファクトとして示せる、これまでになかった新しい求人を行っていきます。
クロスビットは、1月10日に、Eight Rords Ventures Japan、ニッセイ・キャピタル、Salesforce Ventures、三菱UFJキャピタルを引受先とした第三者割当増資により、9億502万8,100円の資金調達を実施したと発表。
“らくしふ経済圏”の構築に向けて、新規事業の開発、既存事業の加速、ビジネスサイドの採用、M&Aに充てるという。
シフト管理をする企業と、シフトで働くワーカーの両者にとって最善な関係の構築を目指す、小久保社長とクロスビットの挑戦に注目していきたい。










































