
2024.06.11
「DIRIGIO」がギフティと連携することでモバイルオーダー&ペイの価値を高め続ける
飲食DXリーダーズ最近、大手チェーンのファストフードやカフェでオーダーをするために行列に並んでいると、店員から「モバイルオーダーのお客様で……」とコールされて、行列とは別のところからやってきて商品を受け取っているという場面に遭遇することが多くなった。いまごろこんなことを記事にしている筆者はアナログぶりを露呈しているわけだが、筆者がこのたびに感じていることは「並ぶということは時間の無駄でないか」ということだ。
このようなサービスは「モバイルオーダー&ペイ」というもので、テークアウトやデリバリーの利便性を高めるものとして、この活用が著しく速く進展している。
このサービスを提供している企業でいま注目株とされているのが株式会社DIRIGIO(本社/東京都目黒区、代表/本多祐樹)である。同社は、オンラインでギフトを贈ることができるサービス「giftee(ギフティ)」を展開している株式会社ギフティ(本社/東京都品川区、代表/太田睦・鈴木達哉)から、2021年に出資を得て資本業務提携契約を結び、2023年11月にギフティの持分適用会社となり、ギフティのグループ会社として事業を推進していることでも大いに注目された。

DIRIGIOがギフティと連携することで、「モバイルオーダー&ペイ」と「eギフト」が融合した。これによって、モバイルオーダーを利用する機会が高まり、店の販売促進に役立ち、顧客の体験価値を高める機能として位置づけられるようになった。
果たしてDIRIGIOが描くDXがもたらす飲食業の未来とはどのようなものであろうか。
大好きな飲食業のアナログの部分をITで解決したい
DIRIGIOの代表、本多氏は1995年7月生まれの29歳。幼少のころ、父の留学に伴い3年間、米国ロサンゼルスに住んでいた。このときの体験が「世の中を変えたい」というマインドを醸成したという。本多氏はこう語る。
「日本人には、自分を発信しない、チャレンジしないというカルチャーが存在していると感じるようになった。このようなカルチャーが変われば、より世界で活躍する人材が日本から生まれるはずだと考えるようになった」
こうして、「将来は政治家になって、日本を変えたい」と考えるようになった。そして、「日本を変えたい」という部分を自分自身で体現しようと「起業家」になることも選択肢に加えた。

大学は慶應義塾に進み、起業家になるためのアイデアを求めて、さまざまなことを体験して、多様な人々と交流することを心掛けた。
飲食店でアルバイトをするようになり、「飲食業が好きだ」と心酔するようになった。その一方で、飲食業には産業として立ち遅れている部分が多々あり、これらはITで解決できることがたくさんあることも感じ取っていた。例として、このようなシーンを挙げてくれた。
「お店で店長がテークアウトのオーダーを電話で受ける場面がかなりあった。店長は電話を受け取ると、どんな商品があるのかメニュー構成を説明する。そしてメモを取りながらオーダーを受けている。それが、1万円を超えるような結構な金額になっていた」
そこで、本多氏はこのように考えるようになった。
「飲食店には売上の限界値がある。それは客単価と客数で売上の限界が見えるということ。それを超えるために、店外収益というものに可能性がある」と。
「店外収益が得られるということは、飲食店にとって収益性が上がり、飲食店が顧客に対して新しい食の機会を提供できて、その提供価値が向上していく。それによって顧客もハッピーになっていく」
これらのチャンスをデジタルでつなげる手段はないかと、海外の事例などを調べていくうちに「モバイルオーダー」の存在を知った。そこで「大好きな飲食業」に「モバイルオーダー」によってハッピーな世界観を求めるべく、これを自らの起業の道に位置付けるようになった。
会社の設立は2016年7月。本多氏が大学2年生のときである。「dirigio」とはラテン語で「われ、導く」という意味。英語では「conduct:導く」の意味があり、これが「conductor」となるとオーケストラをリードする「指揮者」となる。「これと同様に、業界や世界に対して、またユーザーや一緒に働くメンバーに対して、一緒にアクションを起こしていこうという意味を込めた」(本多氏)という。
会社設立当時、本多氏はITの知識がなかった。そこで、エンジニアを集めることから始まった。思いつく相手にLINEを送ってエンジニアを紹介してもらった。エンジニアが集まっていそうな勉強会にも参加した。こうして創業メンバーとなるエンジニアの体制を整えた。IT の知識はこれらのエンジニアから逐一教えてもらい蓄えていった。
DIRIGIOのサービスで売上を50%伸ばした事例も
DIRIGIOのモバイルオーダー&ペイのブランドは「PICKS」。このサービスはウェブ上に加盟している飲食店が掲載されている、いわゆるマーケットプレイス型と言われるモバイルオーダー&ペイである。
その後、飲食店サイドから「自社独自のモバイルオーダーをつくってほしい」という要望を受けるようになり、それぞれにカスタマイズしたモバイルオーダー&ペイを提供するようになった。
同社の場合、モバイルオーダー&ペイの機能の基盤がブロックのように存在している。大枠の機能ベースで分類すると20個程度、これを細分化すると100個程度になっている。オーダーがあるとこれらの基盤を組み合わせるという作業を行うが、これは一からシステムをつくる方法に対して、短期間でなおかつ低いコストでつくることができるという。
創業の事業は前者であるが、近年は後者の事業の比重が多くなった。前者、後者ともに「PICKS」と呼んでいて、現在利用している飲食業の会社は4800社、店舗数では6000店程度になっている。
同社のモバイルオーダー&ペイを利用している大手企業の一つにB-Rサーティワンアイスクリーム株式会社(本社/東京都品川区、代表/ジョン・キム)が挙げられるが、2022年に全店導入を行っている。それが、こちらの業績にDIRIGIOのサービスは大きく貢献している。

サーティワン アイスクリームのモバイルオーダーの利用者は、前年から二ケタで伸びていて売上に占める構成比は5%となっている。今期は購入者の待ち時間短縮や店舗の生産性向上につながるモバイルオーダーの利用促進を図って構成比の目標を10%に設定し、アプリの『31Club』とあわせてお客様の利便性や顧客体験価値の向上に繋げていこうとしている。
同社のモバイルオーダー&ペイは大手企業だけでなく、個店にも大きな効果をもたらしている。本多氏は「当社のモバイルオーダーによって売上を50%伸ばしている個店様も存在している」と語り、これからの飲食店にとって重要な役割を担っていることに気を引き締めている。
親和性の高いサービスが融合することで提供価値を最大化する
さて、「戦略的パートナーシップ」を結んでいるギフティは、DIRIGIOにとってどのような存在となっているのだろうか。
DIRIGIOがギフティと初めて面談したのは2019年の当時。ベンチャーキャピタルからの紹介であった。本多氏はこう語る。
「初めてお会いして、ギフティのみなさんは『eギフト』は本当に世の中を良くしていく存在であるということを純粋に思っている会社様だと思った」
「売上、利益ということはもちろん大切なことだが、自分たちが提供しているサービスがお客様にどのような価値をもたらしているかということを大事にしている会社です。当社も同じような気持ちで取り組んでいる。しかも、ギフティは上場をしていて会社経営においては『先人』です。私たちにとってマイルストーンであると認識して、ギフティに関わらせていただきたいと考えた」
そして、2021年ギフティから出資、2023年11月の持分適用会社へと進んでいった。
本多氏は「当社のサービスと『eギフト』は親和性がとても高い」と語る。その構図とはこのようなことだ。
「『eギフト』は『自分で購入する』ということもあるが『誰からかプレゼントされる』ことの方が多い。それがモバイルに入ることによって、モバイルオーダーでテークアウトやデリバリーを頼んでみようという動機を生む。これが店頭でなくても、店外でも使うことができる。プレゼントされたものがモバイルオーダーで使用できるという一連の体験がシームレスになっていく」(本多氏)

「eギフト」とモバイルオーダーが連携することによって、モバイルオーダーの使用が促進されるということだ。こうして顧客の体験価値が膨らんでいくことで、飲食店の売上が増えていく可能性がある。
また、この連携は店の販促効果を高めることにつながる。顧客が「eギフト」をプレゼントされたことがきっかけで、それが利用できる店の存在を知ることになる。顧客が実際にその店にオーダーすると、店は顧客とオンラインでつながることができる。
「これが『クーポン』という形ではなく、その店のファンが、自分の友人・知人にお勧めしているということ。『クーポン』の場合は店頭で一度使用するとそれで終わりとなるが、オンラインでつながることで、お店のファンになっていただくという継続的な活動が促進される」(本多氏)
ギフティはこれまで「eギフト」によって店のファンを創造することができた。それがDIRIGIOと連携することで「店のファンを継続的に創造していき、その循環を回すことできる」という仕組みが生まれた。まさにwin-winの関係と言えるだろう。
飲食業の一番の特徴は「業種業態が多種多様」であるということだ。DXにおいて、それぞれ得意とする専門性を持つ企業が、目的を持って連携することによって、飲食業に提供する価値を最大化できる。――DIRIGIOの動向は、このようなことを感じさせる。

千葉哲幸
フードサービスジャーナリスト/フードフォーラム代表
柴田書店『月刊食堂』編集長の後、ライバル誌の商業界『飲食店経営』編集長を務めるなど、フードサービス業界記者歴ほぼ40年。フードサービス業界の歴史を語り、最新の動向を探求する。2014年7月に独立。「Yahoo!ニュース エキスパート」をはじめ、さまざまな媒体で執筆、書籍プロデュースを行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社、2017年発行)













































