
2025.06.06
「ロイヤル化」は妄想? デジタルマーケティングで忘れてはならない事
竹田クニのインサイトデジタル技術によるさまざまな手法の登場は、購買履歴の蓄積と見える化、アプリ会員化、利用客へのダイレクト販促など、飲食店と顧客との直接的な接点は多様化することにつながりました。
そのこと自体は大きな進化であると思いますが、飲食店のファンづくり、リピーターを生む仕組みが進化したとは言い切れないと考えています。
テクノロジーが進化した今だからこそ、改めて大切にしたい顧客との関係性構築について考えます。
“PUSH販促でリピーター率が高まった”は本当か?
利用実績のある顧客へ、新メニュー案内やクーポンなどで次回来店を促す……これ自体は一定の効果が出ている店もあるかと思いますが、それがリピーター比率の増加、サスティナブルな集客構造の改善に寄与しているかは精査が必要と考えています。
飲食店の集客構造
飲食店の集客構造は下記の姿と考えられます。
新規顧客の一定数がリピート客となり、「根雪」の如く来店客の多くを占めるようになっていく。そしてリピート客が新たな顧客=新規顧客を連れてきて、彼らの一定数がリピーター化する……これが理想の姿。
しかしながら現実はそうではなく、リピート客も離脱し入れ替わるため、一定数の新規顧客の集客活動は継続的に必要になります。
飲食店の経営者の方にとっては「釈迦に説法」であることでしょう。

短期的なブーストとファンづくりの違い
会員アプリ、新メニューやクーポンをフックにした PUSH 販促、それら自体は有効であると考えますが、サスティナブルな繁盛を考えた際には、「店のファンを増やす」「ここなら安心、外さない」という顧客評価を積み重ねることが本質であり、短期的な販促活動とは分けて議論すべきでありましょう。
飲食店マーケティングの基本
飲食店のマーケティングの基本は、「街」×「ターゲット」×「シーン」。
どんな特徴の「街」で、どんな人=「ターゲット」の、どんな外食機会=「シーン」において、どんな価値を提供し、競合と差別化をするのか? がサスティナブルな繁盛に必須のマーケティングであります。

「ターゲット」
例えば「20 代半ば~30 代前半の女性」といっても、堅実なタイプ、情報感度が高く食べ歩きが好きなタイプ etc. 生活における外食の在り方はさまざまであり、外食マーケティングにおいては「性年代」だけでは 100 点満点中 20 点。
いわゆる「ペルソナ」を具体的に描くことが非常に大切です。

「シーン」
シーンとは「食事の機会の種類」。
オフィシャル/プライベート、行事/非行事に大きく分かれます。
シーンによって店選びの要件が変わり、選ぶ店が違ってきます。
顧客の「ロイヤル化」は妄想? 基本となる顧客視点に立ち返る重要性
一般的に「新規顧客から常連客となるのは 1〜2%」程度といわれます。

勿論、店によって数値は異なると思われるが、新規客の半数がリピーター化するといった店は稀だろう。
新規来店客が「美味しかったね」「良かったね」と思ってくれても、それがリピーター化、常連化するかどうかは、「また来たい!」と強く思い、その店が良かったことを「覚えてくれている」=“記憶に残る”ことが必要で、その難易度が実は非常に高い。
近年、予約システムを提供している「トレタ」が解析し、「常連化曲線」なる理論を発表。常連化のポイントは 2 回目・3 回目来店の接遇にあることを論じている。
こうした分析は非常に興味深い。

出典:株式会社トレタ WEB サイト
ロイヤルカスタマー=常連客とは何か?
“記憶に残る”体験とは何か?
それは前述の「シーン」にふさわしい料理と接客による満足、居心地の良さではないだろうか。
トレタが WEB 上で「常連扱いされたと思った理由は?」というアンケート結果を公開している。

出典:株式会社トレタ WEBサイト
検索サイト、グルメサイト、SNS、スマホオーダーで獲得した顧客アカウント、会員アプリ etc. 顧客とのタッチポイントは実に多様で、さまざまなアプローチが現在では可能である。勿論、販促的活用で成果が上がることは有効だし、取り組むべきだ。しかしながら、販促=店都合の集客リピート策とファンづくりは本質的に異なる。
下記でいうところの 4P 的販促は必要であり、有効な手法を大いに活用すべきだが、本質的な「ファンづくり」のためには顧客視点、顧客体験視点での「4C」「4E」の取り組みが必要だ。
※「4P」「4C」「4E」については当コラムの過去記事を参照されたい。
【竹田クニ】企業都合の「4P」からの脱却 レストランテックは「4E」時代の強力な推進役となれるのか? | Food Deploy | 飲食店のDXを後押しするWEBマガジン

「ロイヤルカスタマー=常連客」は、販促活動によってもたらされるのではなく、素晴らしい顧客体験による満足・記憶に残ることによって生まれる。
デジタルマーケティングの進化によって多様な顧客接点を持つことが可能になった今だからこそ、「顧客のロイヤル化」は販促によって生まれるのではなく、店で得られた体験価値によって生まれるということを、飲食店は勿論、店を支援するベンダーも肝に銘じておかねばならない。

竹田クニ
株式会社ケイノーツ
代表取締役
早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。










































