
2024.11.05
「従業員体験価値」を高める施策が「顧客体験価値」を高める
イベントレポートロイヤルホールディングス㈱(以下、ロイヤルHD。本社/福岡県福岡市、代表取締役社長/阿部正孝)の経営理念はこうである。

「ロイヤル経営基本理念」
ロイヤルは食品企業である。
お客様から代金をいただくからには、
一、食品は美味しくなければならない。
一、調理・製造も取扱いも衛生的でなければならない。
一、サービス・販売は、お客様の心を楽しませ、
社会を明るくするものでなければならない。(文章続く)
これは事業を統一しロイヤル㈱を設立した1956年に制定された。外食産業の原理原則であるQSCを力強く訴えている。そして脈々といまに受け継がれている。
本セミナーで登壇する同社のイノベーション推進担当執行役員の生田直己氏は、1988年4月にロイヤルに入社して以来「ロイヤルホスト」の現場に従事していた。2022年1月からはロイヤルHDの外食事業子会社であるロイヤルフードサービスの代表取締役社長を務めた。自ら「私は現場のたたき上げ」と述べる生田氏は、DXの推進についてどのように考えているのだろうか。
「DXの推進」と「人的資本投資」と
ロイヤルHDでは、すべての人材は付加価値を生む源泉であると捉え、人材の確保・育成・働く環境の整備を最重要課題として、積極的な投資を行なっている。「従業員体験価値」を向上させることが「顧客体験価値」の向上をもたらすと考え、それを「DXの推進」と「人的資本投資」の両軸で取り組んでいる。
バブル経済が崩壊した1992年あたりから、外食産業では「低価格競争」が展開された。「低価格を追求することが価値ある外食だ」というムードが漂っていた。しかしながら「ロイヤルホスト」では、これらとは一線を画し「高付加価値戦略」の道を進んでいった。
「ロイヤルホスト」が「高付加価値戦略」を進めるために、厨房改革を実践したことの一例を紹介しよう。
まず、十数年前に新たな厨房機器を導入しTT管理の改善を図った。
これまで人に委ねていた温度(Temperature)と時間(Time)の管理を自動で行い、安定した質の高い料理を提供できるようになった。
キッチンの各セクションにオーダーが確認できるディスプレイを設置した。
それまではオーダーが入ると、担当者が各セクションに向けて読み上げていたが、それ以来各セクション担当者は、このディスプレイを見て調理を進めることができるようになった。
これは、オーダーの抜け漏れ防止にもつながった。
グラス専用のディッシュウォッシャーも導入した。
この機械は洗剤を使用せず純水で洗い上げることで、グラスに水垢が付着しにくくし、グラスを磨き上げる作業を削減した。
従業員にとって働きやすい環境をつくることで質の高いオペレーションを実現し、これらはすべからく「従業員体験価値」を向上させ、「顧客体験価値」の向上につながった。
営業時間を短縮しながら増収を達成
次に「人的資本投資」の一例を紹介しよう。
まず、女性の登用を進めている。近年、女性でパートタイマーから社員になる人材が増えてきた。
例えば、パートタイマーの経験でスキルが高まり、子育てが一段落したことから社員として活躍していただくということ。
管理職への登用も進めてロイヤルホストの女性店長・料理長は約2割を占めるようになった
ロイヤルホストでは2017年まで段階的に「24時間営業」を廃止し、さらに営業時間の短縮を進めた。営業時間の平均は、約15時間となった。
これによって減収が懸念されたが、2017年12月期は前年度に対し既存店の売上は約7億円の増収となった。さらに2018年には年3日の店舗休業日を設けた。
生田氏はこう語る。
「ロイヤルホストの従業員は、楽しくやりがいを持って仕事をしたい、おいしい料理を提供したい、良いサービスを提供したいという気持ちが強い。これは当社の社風。だからこそ、経営としては働く人を支えて、無理なく効率的に働くことができる環境を整えることが大切です」
このような同社の社風は、コロナ禍にあって一段と発揮された。
「ロイヤルホスト」では、コロナ禍でお客が来店する機会が少なくなる中、家庭に居ながらロイヤルの食事を楽しむことができるように、テイクアウトやフローズンミール「ロイヤルデリ」の拡販が展開された。
テイクアウトでは容器に工夫を施して、「ロイヤルホスト」の強みであるステーキやハンバーグをメニュー化した。また、来店したお客に従業員が自発的にロイヤルデリ商品の魅力を語り掛けて認知を広めていき、売上をつくっていった。
2022年10月以降ロイヤルホストの売上がコロナ前2019年を上回る
緊急事態宣言があけると、地元住民が存在するエリアの店舗で客数の増加傾向がみられた。これも、かつての低価格のトレンドに追随することなく、経営理念を守り続けてきたことの現れであろう。
全国旅行支援が始まった2022年10月以降ロイヤルホストの既存店売上高は継続的にコロナ前の2019年を上回った。2024年に入り、「ロイヤルホスト」の月次報告では売上が前年同月比106%あたりで推移している。2019年と対比すると、既存店の売上は2割強のアップで推移しているという。
ロイヤルHDの全体では、2023年12月期は売上高1389億4000万円(増減率33.6%)、営業利益60億7400万円(増減率177.1%)となっている。
このような企業の背景に、経営陣と社員との密接なコミュニケーションが存在している。
経営陣が全国の拠点となる30カ所を回って、店長以下一般社員の全員と向き合い、決算の進捗状況の説明を行って、これからの方針について社員とディスカッションを行う。ここで出ていた意見をすり合わせてボトムアップを図っていく。まさに「人的資本経営」の施策である。
さて、ロイヤルHDでは2025年度から新しい中期経営計画に入る。新しい時代における同社の「価値創造」について、イノベーション推進を束ねる生田氏はどのようなテーマで望み、どのような行動が必要だと考えているのだろうか、11月21日のセミナーに注目したい。
セミナー申し込みはこちら
https://biz.q-pass.jp/f/9683/drftriw2024seminar/seminarregister?fid=0bvhjCtHE5lkn6T3&tag=11668
来場登録は下記より(無料):
https://www.foodtechjapan.jp/riw/ja-jp.html

千葉哲幸
フードサービスジャーナリスト/フードフォーラム代表
柴田書店『月刊食堂』編集長の後、ライバル誌の商業界『飲食店経営』編集長を務めるなど、フードサービス業界記者歴ほぼ40年。フードサービス業界の歴史を語り、最新の動向を探求する。2014年7月に独立。「Yahoo!ニュース エキスパート」をはじめ、さまざまな媒体で執筆、書籍プロデュースを行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社、2017年発行)






































