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2026.09.04

伝わる「値上げ」~文化的価値への意思が共感を呼ぶ~

竹田クニのインサイト

近年のコスト高騰下、値上げは必至といえますが、「値上げと同時に価値を向上・・・」しかしながら、それはそんな単純、簡単なものではありません。
一方で、業界内外には、「値上げ」に対して、消費者の共感や応援感情を獲得するに至った例がいくつか存在します。
この度のコラムでは、「伝わる値上げ」について考えてみたいと思います。

価格改定の要諦

以前本コラムで価格改定の要諦について書かせていただきました。
外食企業の事例を中心に

  • 値上げ=「価格変更」は「価値の再定義」

  • 値上げ理由の透明化

  • 再投資先の明確化

  • ブランドの核を大切にする

  • 客離れの本質は値上げではなく「その店に行く理由の弱さ」

といいった要素をまとめ、「企業都合」から「社会状況の共有」への転換」という要諦をまとめさせていただきました(詳細は下記リンクより是非ご覧ください)

【価格弾力性】の考察。値上げの「型」ではない「要諦」とは?  |  Food Deploy | 飲食店のDXを後押しするWEBマガジン

今回、さらにもう一つの要素を加えたく、続編的に書かせていただきます。
それは・・・「伝わるかどうか」

これじゃあ、届かない・伝わらない

値上げをする企業の多くが、下記のようなお知らせを店舗に張り出したりします。
ここまでシンプルでなくても、概ね、こうしたありふれた慣用句的な言葉がならぶ広報物は多いと思います。

改めて、「共感しますか?」「伝わりますか?」

改めてお客様視点で考えた際に、伝わるでしょうか?
苦渋の決断、価値アップへの意思、従業員を守る、文化を守る・・・共感しますか?伝わりますか?
答えは「否」ですよね。

「うまい棒」の値上げ

皆さんご存知の「うまい棒」 販売は株式会社やおきん。
2022年に10円→12円に値上げした際の広報が話題となりました。(※現在は15円)
こちらが当時のポスター。
42年間のご愛顧に対する深い感謝の言葉と共に、「未来の子どもたちにも、駄菓子のおいしさと楽しさを届けるため、ちゃんと利益を出すことで、駄菓子文化の存続と発展に努めていきたい。」とコメントを発表している。

これが消費者の共感をおおいに呼び、X(旧ツイッター)には1,900件を超える応援のメッセージが書き込まれ、

加えて、ちょっとおどけたポスター数種を展開。消費者の遊び心に寄り添うようなPRとしている。

社会的価値、文化的価値の訴求

うまい棒の値上げキャンペーンの解釈はこうだ。

  1. まずは長年のご愛顧に対する丁寧な感謝。

  2. そして、原材料、コスト高騰といった「企業都合」を言うのではなく、子ども達においしさと絵がをを提供する「文化」を消したくないから、続けたい・・・そのために必要な利益を上げることが必要・・・という決意。

まさに、「企業都合」から「社会状況の共有」への転換の好事例、と言えるのではないだろうか?

飲食店の価値5段階

JFRXという、CSV経営を基軸に経営を学び・磨き合う飲食店経営者の団体がある。

JFRX - Japan Food Business Research X-formation

この団体でよく使われている「飲食店がお客様へ提供する価値の構造」が下図だ。

この図に従って考えると、「うまい棒」が訴えたのは、社会的価値、文化的価値の存続である。
うまい棒には、おいしくて、子どもが小遣いで買えて、皆で遊んでいる時に食べる、大袋で買うとワクワクする、子どものころ食べた懐かしさ・・・といった機能的・情緒的・体験的価値がある。
それを前提として、子どもが小遣いでおやつを買って楽しむ、友達と交流するといった社会的価値・文化的価値の存続に対する強い想いと意思を込めたのが、値上げ時のポスター・・・と言えるのではないだろうか。

社会的価値・文化的価値と向き合う契機に

「値上げ」という事実を端的に伝えるのではなく、自店が社会的・文化的価値として提供できている事、想いと意思を持っている事・・・、例えば、常連さん・お得意様が楽しむシーン、地域での役割、生産者の想いを繋ぐ、=社会的・文化的価値の存続への想いと意思を心を込めて伝えることが肝要だ。
筆者は、モノ消費→コト消費→イミ消費を提唱しており、近年では自らの消費の「イミ」=社会的・文化的意味・意義を問う概念が強くなっていることを提唱しているが、上図で言う「社会的価値」「文化的価値」はまさに「イミ消費」と合致する。

これから実施されるであろう「値上げ」にあたっては、飲食店は自店の価値の在りかを議論し、整理し、明確化・・・そしてそれを計算された広報物として各種メディアを使って訴求していくことが、「伝わる値上げ」として有効と考えられます。

竹田クニ

株式会社ケイノーツ

代表取締役

早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。

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