
本部―店舗間の齟齬・軋轢は拡大に伴う「成長痛」なのか?可視化すべき業務と、注力すべきコミュニケーション
竹田クニのインサイト本部と店舗が物理的に距離が生じる外食業界。
本部→店舗への通達・施策が伝わっているか?指示通りに実行されているか?
・・・直営にしろFCにしろ、こうした本部―店舗間のGAPは成長に伴う必然的な「成長痛」なのだろうか?
テクノロジーと人の協働が進む中、あるべきテクノロジー導入と、人のチカラを活かすべき業務について考えてみたい。
急成長チェーンの反省
最新刊の日経ビジネスに“敗軍の将、兵を語る”「鰻の成瀬、店舗数激減の真相」が掲載されている。

同店はご存知の通り、2022年の一号店開店からわずか3年後の2025年に400店舗という急成長を遂げた。
その後、2026年に創業社長が株式の58%をAIフュージョンキャピタルグループに売却。5,805万円という価格も業界を驚かせた。
急成長の歪み
記事には運営会社フランチャイズビジネスインキュベーション 山本社長のコメントとして以下がかかれている。

またこうした混乱を振り返って・・・
財務、人材採用、教育など組織として大切なことをいかに浸透させていくか。
経営者として成功している人はこういう組織マネジメントがうまいのだと思います。
と話している。
2つの論点「どう管理するか?」「どう寄り添うか?」
マネジメント(management)はごく一般的にビジネス社会で使われているが、実はぴったりの日本語訳が無いとされる。
My wife is good manager.→妻はやりくり上手だ
というよく知られた言い回しの如く、マネジメントの意味は管理や統率だけでないヒト・モノ・カネ・情報を最適に“やりくり”して運営するという含み・ニュアンスがある。
多店舗経営の「マネジメント」にあてはめて考えるとどうだろう?
「どう管理するか?」
今の時代においては、本部―店舗間のマネジメント支援ツールとして・・・
タスク可視化、リマインド、実施報告などを一元化する便利なデジタルツールの活用が進んできている。
▶代表的なサービス
マキトリ→比較的シンプルに衛生管理、キャンペーン等販促物、新商品、労務管理等、本部⇐⇒現場感の相互信頼をサポート。

V-manage (株)インフォマートが提供するマネジメント支援ツール

Shopらん→管理的なものに加え、コミュニケーションツールなど多彩な機能を装備

マネジメントの「管理する」的な側面はこうしたツールによって、抜け漏れ防止、実行チェック、アプリで報告書作成などツールが持つ機能によって大幅に強化され、実際に多くのチェーン、FCで実績があがっている。
一方で、「どう寄り添うか?」はどうだろうか?
飲食店においては、料理人であれば料理の仕事そのもの、ホールスタッフであれば接客そのものは、コア業務=「好きな・やりたい業務」であるのに対し、本部からの指示への対応、報告書作成といった業務はストレスを抱えやすい。
勿論、好きな業務だけやるのが仕事ではないので、働く側もそれは理解しているはずであるが、業務量が多かったり、予定外だったり、多忙の中で負荷が大きかったり、やる理由に理解・共感できなかったり・・・ストレスの原因は“そういうところ”にあるのではないだろうか?
やりくり上手な店舗運営には「両方が必要」
マネジメントが上手くいく・・・やりくり上手で結果を安定的に出し続けるためには、「どうやって管理?」「どう寄り添うか?」が両方とも大切である。
「どうやって管理」では、上述のシステムはもはや必須と言え、タスクの整理と可視化、実行チェック、業務報告書が簡便に済む、システムによってこれらが実現されることで、現場のMust DOを計画的に効率的に実行することが可能となる。
店長、SV、エリアマネージャーの業務への影響
管理職である“彼ら”の業務は幅広い。
現場のMust Doの指示、プッシュ、チェック・・・これらの業務は現場がスムーズに実行できていれば、極小化したい。
「どうやって寄り添う?」への時間・エネルギー創出
管理的業務がシステマチックで効率的になることで生まれる“余力”を、従業員とのコミュニケーション、ケアに使うべきである。

管理的業務のシステム化で基本的な体制を整えた後に、注力すべきはPDCCの「コミュニケーション」「ケア」のヒューマンなマネジメント。
「どうやって管理?」「どうやって寄り添う?」の2面のアプローチで、顧客体験価値と従業員体験価値双方が高い職場を是非目指したいものです。
大きな問題が起きていない=上手くいっている・・・ではない?
各店舗の店長やマネージャーが日々、何とかこなしている=各店がそれぞれ個人の力量によって大きな問題は起きていない状態・・・であれば本部サイドから見て喫緊の課題とは見えづらいように思う。
しかしながらそれは、
俗人化・・・店長・マネージャーの異動・退職等で問題が一気に顕在化
ストレスが積み重なり、遅行的にマネジメントに深刻な影響を及ぼす
という可能性をはらんでいないだろうか?

ひとたび問題が顕在化すれば、それは成長の大きな足かせとなるこの問題は、“ころばぬ先の杖”として手を打っていくことが重要に思います。
人材不足、採用難は加速度的に進むことが確実。この人材供給難時代に向けては
「どうやって管理?」=現場業務を効率的に管理するシステムと、
「どう寄り添うか?」=店長・マネージャーがスタッフに対してコミュニケーション・ケアを行える余力の創出が両方大切であり、そのためには、まず、店長・マネージャーに“余力”を生み出すための「どうやって管理?」のシステム化が必須と言えると思われます。

竹田クニ
株式会社ケイノーツ
代表取締役
早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。









