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2024.10.09

【竹田クニ】 “一物二価“の是非

竹田クニのインサイト

外国人価格は違法?

インバウンド市場が活況を呈する中、いわゆる「外国人価格」の是非について様々な議論があります。

業界全体での統一見解・方針等は出ていない状況ですが、ネット上の良質な記事、専門家との会話から、現状の論点・課題について整理をしたいと思います。

一方、季節・曜日、繁閑などによって価格が変動する「ダイナミックプライシング」は一部の飲食店で導入例が見られます。

二重価格を含め“多重に”価格を設定することにはネガティブ/ポジティブの両面があり、2回に分けてこのテーマについて論じてまいります。

「外国人価格」の実態

飲食店で見られる外国人価格の実態はどうか?

  • 外国人旅行者用メニューで日本人向けメニューよりも価格設定を高くする

  • 外国人旅行者向けに高額な商品を置く

  • 外国人旅行者用メニューでは安い価格のメニューを削除し、高価格帯のメニューのみ表記する

画像は外国語メニューのイメージです。 出典:EAT TOKYO

実数は不明だが、こうした取り組みは一部の飲食店に見られるようだ。

外国人旅行者の「ハレ需要」、円安に外国人旅行者のバジェットが大きくなる・・・ここに商機があることは否めないし、自由競争の元で売買双方での合意にもとづく取引・価格決定は本来問題ないはずだという意見も多い。

飲食店経営者の見解

飲食店側の見解は概して下記が多く見受けられる。

  • 言葉が通じにくいがゆえに、商品説明、オーダーテイクに時間と手間を要する

  • 外国語メニュー作成に相応のコストがかかっている

「外国人価格」に違法性はあるのか?

結論から言うと、「違法ではない」というのが現状の有識者の見解の様です。がしかし、違法ではないものの下記に抵触する可能性についても同時に指摘されています。

<関連する法律と規制>

  • 不当景品類及び不当表示防止法(景表法)

    消費者に誤解を与える場合、景表法に違反する可能性

  • 消費者契約法

    外国人だけに高い価格を設定することは、不当な差別と見なされる可能性

  • 公正取引委員会のガイドライン

    外国人旅行者に対する差別的な価格設定は、不公平な取引行為として問題視される可能性

法的な解釈について、この場ではなく、専門家による見解を待ちたいが、いずれにしても現状では「違法ではない」だけであって、問題が無いという事ではなさそうだ。

運用上の問題

飲食店の現場での運用上にもいくつか課題がある。飲食店に来訪する外国人には様々な方々が存在します。大きく分けると・・・

  1. 在留資格を所有し長期間滞在(各種就労ビザ/技人国・特定技能・技能実習、留学生、永住権など)

    詳細はこちら 在留資格一覧表 | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)

  2. 旅行者、出張者など短期間在留

  3. 日本人と①➁の外国人が混成しているグループ

こうした人々・グループを現場でどう見分け、どう区別するのだろうか?

パスポートや身分証明書の類を現場で確認して運用することは運用上困難であるし、③の場合は、日本人が注文すれば何ら問題は無く、そうすると、「日本語が通じるなら外国人価格は適用されない」といった妥当性・合理性を欠く歪んだ運用となる。

 望ましい運用

法律の専門家、飲食店経営者と話している中で、筆者が考える「妥当な策」は・・・

「外国人旅行者向け商品・メニュー」(おすすめのメニュー)の設定だ。

日本の文化を満喫したい“ハレ需要”に向け、おススメの自慢の一品や、セットメニューを新たに置き、相応の価格設定を行う。そしてそれらは「日本人でも注文できる」。

現状の妥当な“落としどころ”としては、外国人旅行者が「注文したくなる」魅力的なメニューを置くことで、彼らのバジェットを開いていただくことだと考えます。

また、近年高まるSDGs、ジェンダー議論において「レディースセット」「レディースデー(割引など)」にも同種の問題は存在します。

国籍、旅行者、性別・・・何らかの区別・線引きによって売り手側が売価を変動させるのではなく、買い手側である顧客にとって魅力的な商品サービスをリコメンドでき、その選択は顧客にゆだねられるやり方が、現状、もっとも妥当ではないでしょうか?

 「納税者」という基準による一物二価

諸外国では、ホテル・観光施設、ゴルフ場など自国民と外国人価格が異なる例は良く見られる。また日本でものコロナ禍でホテル旅館等の「県民割り」などの例が出現した。

これらは、「納税者」か否かという明確な基準が存在し、飲食外国人向け価格の議論とは分けて考えるべきではないかと考えます。

「公序良俗」と「店の徳」

あるべき姿

大ヒット漫画「キングダム」(中国「秦」の後の始皇帝が中国初の全土統一、法治国家を目指すストーリー)では、興味深い一説がある。

“法”とは願い!国家がその国民に望む人間の在り方の理想を形にしたものだ!

違反者を罰することにより人を律するものではなく、人の在り方を示すものだという考え方に、現代の法律の専門家も共感するところが大きいようだ。

グローバル市場における“公序良俗”と“店の徳”

別な言い方をすれば、これは「公序良俗」の問題と言える。

日本の市場がグローバル化する中で、国籍や性別などによって差別なく商品サービスが提供される…というのがあるべき姿、目指すべき公の秩序、道徳観ではないだろうか。

また、高くても買いそうな人に対しては、公平性・合理性を欠く売り方も辞さないという考え方なのだとすれば、それは人であれば利得に走る「徳」の無い行動とは言えないだろうか?

SNSで誰もが情報を発信・共有できる時代。「徳」の無い店の行動がマイナスの評価・評判となる可能性もある。

グローバル市場化する日本の外食市場の中で、世界に誇れる日本の食文化を磨いていくうえでも、「在り方」が大切なのではないだろうか?

次回は「一物二価」のもう一つのカタチ、ダイナミックプライシングについて論じてみたいと思います。

竹田クニ

株式会社ケイノーツ

代表取締役

早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。

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