
2026.04.16
“10年ひと昔“を振り返って想う「ゆでがえる」への警鐘 余りに違う日本経済の現在地と、国を挙げた産業構造改革が必要なわけ
竹田クニのインサイト本コラムをご覧いただいている皆様の生活は10年前とどの程度違いがあるでしょうか?
会社業績や給与所得、リモートワークなどの違いはあれ、消費生活、ライフスタイル自体は“大きくは変わっていない“という感覚の方も多いのではないでしょうか?
この約10年間の日本の経済・市場を改めて比較して考えてみると、外食産業の経営環境がいかに変わってしまったのかを見ることが出来ます。
外食産業の「儲けるチカラ」がいかに弱体化させられたか
人件費の上昇、食材原価の高騰、エネルギー値上がり・・・、飲食店の経営が「大変だ」「利益が厳しい」というのは、“感覚的には”皆さんお感じの通り。
改めてPLで各項目がどの程度上昇しているのかを2016年と現在の比較で考えてみる。

こうして見てみると、一般的に言われる飲食店の利益率=5~10%が吹き飛んでしまうほどの変化が起きていると言えます。
想えば、10年前から「飲食店の経営環境は厳しい」「20世紀と同じやり方では通用しない」と業界内で言っていました。
「厳しい環境」は口癖のようになり、“10年ひと昔“…気づいてみると、これだけ大きな環境変化が起きている。
こうした中、価格改定、原材料、調理方法の工夫、DX・・・経営改革と努力を重ねて経営を継続する飲食店経営者には尊敬しかありません。
消費者の意識はどのように変化したのか?
一方で、市場&消費者の動向はどうか?
近年の報道では、伸び悩む賃金、円安による値上がり、戦禍によるサプライチェーンの危機などが繰り返し報道され、「未知のインフレ」に対する警戒感が高まっている。
賃金は伸びたのか?
2016年と現在を比較してみると、数字自体は上がっていることが分かる。
しかしながら物価上昇が同時に起きているために、消費者の購買力、可処分所得は実際には上がらない・・・これが「実質賃金が上がらない」ということである。

「平均」は指標としては見るべきものであるが、実際には地域、エリア、商圏によって異なるし、飲食店においては業態、ターゲット、シーンによって異なるので注意が必要だ。
例えば大都市圏中心部にある客単価2万円の店では、来店するのは「富裕層、準富裕層」であり、景況に左右されない外食行動=「選択的消費」の余力を有する。一方、庶民の日常食を提供する、ランチ1000円以下、ディナー2500円~3000円に該当する飲食店は、多くの店で客数減が深刻化する傾向がある。
外食産業の時給においては、激戦地では上図の金額を大きく上回る募集賃金も数多く見られ、人材獲得競争によって「相場」は年々上がってきている。現政府方針が「最低時給1500円」を掲げていることからも、今後この傾向は変わらないであろう。
各種指数の比較と消費マインド
主要な指数として「消費者物価指数」「実質賃金」「エンゲル係数」「消費者態度指数」を見てみる。

2016年は安倍政権下でアベノミクス加速期にあり、消費者は所得が殆ど上がらないが、デフレで物価も上がっていないため停滞感がありつつも底堅い推移であった。
一方の現在は、あらゆるモノが値上がりするのに対し、所得向上はそれを下回って実感がなく、「未知のインフレ」とさらなる国際情勢の悪化に警戒感が満ちている。
「儲けるチカラ」を再生するために必要な「産業の構造改革」
冒頭見ていただいたように、外食産業の「儲けるチカラ」は弱体化させられてしまっている。
このチカラを再生するためには、何かの補助金・助成金による個社・個人への支援策は限界。産業の構造そのものを変革する必要がある。
食の最終ランナーとしての外食
ご存じの通り、外食産業は食産業における最終ランナー。
生産者から卸・メーカーを経て、消費者に提供される最終の出口となる産業である。
外食産業約30兆円の衰退は、同時に生産者、卸・メーカーの衰退に繋がる。加えて、生産者から連綿とつながるサプライチェーン/バリューチェーンにおいて、実は膨大な廃棄や買いたたき、物流コスト等のムダが発生している。

資料:食団連
食団連の活動
消費税減税の比率だけでなく、こうした構造にメスを入れることは、単に外食産業の支援なのではなく、将来的な日本の基幹産業としての「食産業」をアップデイト&育成することに他ならない。
その為「食団連」(日本飲食団体連合会)では、「食産業庁」の設立を目標に掲げ、ロビー活動を続けている。
食団連では目下のところ・・・
消費税減税税率に関する提言→「外食10%食料品0%」を「外食5%食料品5%」に
クレジットカード手数料率の引き下げ→手数料(現状平均3.1%)を欧米並みの1.5%前後へ
裁量労働制の適用→技術研鑽の機会創出
年収の壁対策→もっと働きたい個人の労働機会拡大
業界横断的な人材育成の仕組み→資格認定、マネジメント、経営知識習得の機会
などの研究と提言活動に力を入れている。

資料:食団連
「外食DX3.0」への意識と協働へ
外食DXは「産業構造改革」に無くてはならない存在である。
本コラムを読んでいただいている方は外食DX関連の方が多いと思いますが、業界との接点を通じて「産業構造改革」の意識を高め、自社プロダクトの視点を超えた協働によって、基幹産業たる食ビジネスのアップデイトを皆で実現したい。
そしてそのことは必ず、自社(つまり皆様の会社)の発展に繋がると確信します。


竹田クニ
株式会社ケイノーツ
代表取締役
早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。









