
2026.01.05
もう一つの「UI」の重要性 外国人ほか多様な人材が活躍できる環境の実現
竹田クニのインサイト某和食のチェーン店で筆者が体験した話。
外国人スタッフがテーブルに運んでくる料理が3回連続で間違っている・・・という事態が発生しました。
外食DX界隈では、「UI」=ユーザーインターフェイスというと、お客様とオーダーシステム、あるいは様々なバックヤードで稼働する業務システムのUIを考えがちなのですが、この”料理間違い”にもう一つ別の課題を感じました。
先日の事件とは
当該某和食チェーンでは、「ご飯の種類&量」、「味噌汁の種類」、「おかずの種類」、がそれぞれ選べるのですが
ご飯の種類&量が両方違った
味噌汁の種類が違った
おかずが違った
なんとその当日の一回の注文のうち3つ立て続けに発生しました。
運んできてくれたスタッフは、まだあまり慣れていない感じの外国人スタッフ。
♫まぁ怒るような話でもないし、外国人だから・・・、新人さんだから・・・仕方ないよね
とも思いましたし、間違いを指摘した後には、「すみませんでした!」と別の日本人スタッフが正しいものを持ってきてくれたから問題は特にありませんでした。
伝票を見て思った事
これがその時の伝票です。
メニュー名で店名が推測できてしまいますのでボカシ入れておりますが、ボカシの部分には漢字も使われております。

いかがでしょうか?
私が思ったのは、「これ外国人のスタッフが読めるのかな?」 です。
同店のオペレーション詳細については実はわからないのですが、もしデシャップでお客様に持っていく料理をスタッフが確認するのがこの伝票だとしたら、間違える可能性がある(高い)のではないか。
今後、ますます店舗現場で働く外国人が増える中、まだ日本語力が充分でない外国人でも判別可能なオペレーションノウハウ、伝票やシステム画面、デジタルサイネージなど「UI」の工夫がもっと必要なのではないか?
「N4」の現実
皆さまご存じと思いますが、特定技能1号の日本語能力水準は「N4以上」

N4とは
基本的な日本語を、理解することができる。
【読む】基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる。
【聞く】日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる。
※詳細は「日本語能力試験 JLPT」 cdslist_all_2020.pdf
とあります。
しかしながら現実はN4に合格して日の浅い外国人の場合、日常生活に必要な会話もおぼつかないケースも多く、文章も「読んで理解…、内容がほぼ理解できる」までとは言えず・・・制度の基準とはかなりGAPが存在します。
また、「基本的な語彙や漢字」といっても、メニューに使われる「味噌」「醤油」「穀」「漬」・・・といった外食特有の文字については基本的なとはいえず、就業後に現場で覚えるしかない=ハードルが高いのではないか。
もちろん、外国人の彼らも日々学習し、早晩習得するとしても、それは漢字本来の文字認識というよりは、記号的認識の可能性が高いのではないか。
「てんや」の取り組み
ロイヤルホールディングス 天丼てんやの取り組みが興味深い。
同店では天ぷらを揚げる工程はオートフライヤーという機器でほぼ自動化しているが、食材に衣をつけてオートフライヤーに投入するのは「人」。
オートフライヤー前のデジタルモニターには、えび、いか、きす・・・といった食材が「絵」で表示され、またメニューによって異なる天ぷらの“組み合わせ”についても、デジタル表示通りにやればミスが起こりにくい仕組みになっている。
これによって日本語、文字の習得が充分でないスタッフでも、早期の戦力化が可能となり、ミスを最小限に抑えることが出来るそうだ。
また、就労の精神的な不安感の払拭、従業員体験価値の向上にも奏功しそうだ。

※写真は日経ESGに掲載されている画像より転載
アルファベット表記?
ではメニュー表記を国際的に汎用性が高いと思われるアルファベットにしてはどうか?
それはそれで、逆に日本人スタッフにとってわかりづらく、逆にミスの要因にもなりかねない。またもしお客様に渡す伝票がアルファベット表記になるのだとしたら、今度はお客様にとってわかりづらいものとなってしまうため現実的ではない
サイゼリヤの取り組み
サイゼリヤのスマホオーダーは独特だ。
メニューブックに表示されている独自の記号(アルファベットと数字の組み合わせ)を、お客様がQRコードで読み込んで立ち上げセルフオーダーシステムに記号を入力するスタイルだ。
大変合理的にも思えるが、サイゼリヤという業態がもつ効率的・合理的な世界観と顧客の理解があって成立し得るものであり、またお客様の手元に渡る伝票には日本語表記がされていることから、独自の複合的システムとして構成されており、外国人スタッフの識字の問題への対応として他店がこの方式とることは問題・課題が異なるように思える。

もうひとつの「UI」の重要性
下図は本コラムでは既出の、(株)リクルートワークス研究所が発表している日本の労働需給のシミュレーションだ。
今後日本の労働市場においては、外国人労働者が増えることは確実であり、シニア、スポットワーカーなどを含めた多様な労働力がハーモナイズする職場となることはほぼ確実である。(もちろん業態にもよる)

こうした将来に対して、飲食店のお客様に対する「UI」だけでなく、現場の従業員にとって使いやすくミスが起こりにくい「UI」の開発・進化を進めていく必要を感じます。
現場の多様な従業員にとって使いやすい「UI」が重要に
現在でも各ベンダーでは、飲食店側の「経営者の要望」「現場の声」からプロダクトを磨き進化させている。
ユーザーである外食企業の要望に可能な限り対応する中で進化し続けることは勿論重要だ。今後は、例えば2030年の外食業界、市場、労働力需給を見据えた「あるべき姿」を描き、“バックキャスティング”の考え方で進化していくことが大切だと考えます。
日本語がまだ十分に読み書きができない外国人、経験が浅いスタッフ、デジタルが不得意なシニアなどにとって、直感的でわかり易い仕組みを構築していくことが、外食業界全体で重要になってきていると感じております。


竹田クニ
株式会社ケイノーツ
代表取締役
早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。









































