
2025.12.22
そのUIって大丈夫?店都合デジタルからの脱却
竹田クニのインサイトすっかり定着してきたかに見える飲食店のテーブルトップ/セルフオーダーシステム。
人手不足、生産性向上を背景に、また外国語対応も比較的容易であることから、今後益々導入は進むと考えられるがその一方で、顧客(消費者)視点で見たときに必ずしも使いやすくない「飲食店都合の」UIが散見されることに問題意識を持つのは筆者だけでは無いはず。
閾値を超えたオーダーシステム 次なる課題は何か?
デジタルによるオーダーシステムの市場の浸透度、消費者利用意向について(株)リクルート ホットペッパーグルメ外食総研が2025年10月に行った調査によると消費者の今後の利用意向=「ぜひ利用したい」「やや利用したい」の合計値は
テーブルトップ(タブレット)オーダー ・・・69.1%
セルフ(スマホ)オーダー ・・・52.5%
と閾値を十分に超え、市場に浸透してきたと言える。
外食店利用時の注文ツールの利用実態・意向調査(2025年8月実施) | ホットペッパーグルメ外食総研「すべての人に、食で笑顔を。」
しかしながら一方で、「使いづらさ・解り難さ」「来店後のPUSH販促」に対するネガティブな意見も聞こえてきている。
人手不足対応、業務効率化、集客・販売促進などといった店側都合だけでなく、消費者にとって使いやすいUIの改善が急務となっているように思います。
ハンバーグランチの注文に画面遷移が5回!
これは筆者も体験し実感したのだが、某ファミリーレストランのランチ利用時に、「ハンバーグランチ」をオーダーするのに画面遷移5回を要し、ようやく注文にたどり着く・・・という店があった。
ランチメニューから、「ハンバーグランチ」を選択
ソースの種類を選択
ライスorパンを選択 小盛、普通、大盛を選択
とまぁここまでは良い。ご一緒にサラダはいかがですか?
ドリンクバーはいかがですか?
となる。

※図表はイメージです
色々選べることは基本的に良い事なのだが、1~2画面で✓やラジオボタンのようにわかり易くて簡便なUIは作れないものだろうか?
慣れている人は問題ないかも知れないが、ファミリーレストランのような客層の広い業態では何らか不平・不満を生んでいそうである。
例えば筆者が目にしたとある個人の「note」記事。
2名で来たのでタブレット上の“+ボタン”で「2」を表示させ、カートに入れると、何度やっても「エラー」になってしまう。
何度やってもエラーが出るのでスタッフを呼んで聞いてみたところ、スタッフ曰く
♫「右上のプラスマイナスボタンを2名で設定頂かないと、エラーになってしまう」との事。
Note記事には♪「はぁ?意味不明!こんなの罠でしょ・・・」とコメントされていた。

特にテーブルトップオーダーに課題感
こうした不満の声は、テーブルトップオーダーに多い傾向があるように思います。
チェーンなど多店舗での導入事例が多く、また投資額も必然的に大きくなることから、改善、改修が遅れるのでしょうか。スマホを使ったセルフオーダーに比べると、UIに課題を感じることが多いように思います。
ハイプ・サイクル的にはまだまだ「啓発期」?
レストランテック協会が作成した「ハイプサイクル的考察」で考えると、テーブルトップ/セルフオーダーはまだまだ「啓発期」であり、機能の充実・洗練はまだ進化の途中と考えられます。
ですので、今こうした消費者視点の不便不都合を考え、改善していくことが外食業界としても重要だと考えます。

「具体的にどのようなUIが問題?」については、業態によっても異なるし、詳細な調査等はまだ見当たらないように思いますので、基本はやはり、自店舗のお客様の立場に立って考えることかと思われます。
消費者側から見た、よくある「イケていないポイント」
画面遷移が多く、面倒に感じる
ソース・タレ種類やセット内容、オプションなどが複雑
メニューのカテゴリー分類が分かりづらい・・・どこに何があるのか分かりづらい
例)キャンペンメニュー、期間限定、サイドメニュー、もう一品、おかず、サービス等
タブ構造がわからない ・・・タブ構造になっているUIに慣れていない
グループ人数マスタと注文数の同期(※上記の2名を選択しないとエラーのようなケース)
※ここでは商品内容やポーションのわかり難さといった課題は除いています
なぜ、そうなるのか?
なぜ消費者にとってわかりづらいものになってしまうのか?
システムの基本構造・ロジック優先で消費者側の利便性考慮が足りない場合に、上記の人数マスターと注文数の不一致エラーなどは起こり得る。
また、タブ構造や決済方法の選択などは、年配のお客様が多い業態では注意が必要だ。
さらに、プラスマイナスボタンのケースで言うと、例えば「ライス」を「1」と選択した後に、小盛、普通、大盛にさらに「1」を入力させる、そしてオプションで「卵」や「納豆」な度があった場合に「なし」に「1」を入力しなければ次に進めない・・・

こうした構造は、特にリテラシーが高くない人にとってはわかりづらいはずだ。
サイレントマジョリティを生み出しかねない?
オーダーシステムに店側の意向、例えば売上、客単価、皿数、リピート促進図りたい・・・という意向が強く反映された場合はどうだろうか?
テーブルトップ/セルフオーダー上での「ご一緒にいかがですか?」という販促や、利用後の販促(DM等)で考えてみよう。
例えば1,000人に送れば○%が成果として表れ、有効な側面もあるものかもしれません。しかしながら一方で成果を上回る人数のネガティブ=サイレントマジョリティを生み出す可能性もあることを理解しなくてはなりません。
オーダーシステムが閾値を超え、これだけ一般化してきているのだから、そういうリテラシーは時間の問題では?と言うこと無かれ・・・
実は今現在でも、否定的な顧客はまだまだ少なくないし、利用後の次回来店PRには「ギガ泥棒」「個人情報利用」といったネガティブコメントもまだまだあるのだ。

未来に向けての進化
テーブルトップ/スマホオーダーは大変有効なものであり、活用を前提とした接客力向上、顧客体験価値向上の議論が進んでおり、未来に向けて進化していることは素晴らしい。
本コラムでお伝えしたかったことは顧客視点での進化のポイントであります。
今後は、アバターやロボットの接客活用、これらとAiを組み合わせたより進化した顧客体験価値向上の取り組みも期待されます。
また市場のグローバル化、ダイバーシティ進化、ウェルビーイング概念の浸透などに伴い、例えば禁忌食材(ハラールなど)、アレルギー食材、栄養素、調理法…などに関する情報開示をオーダーシステムに求める動きも出てくるでしょう。
タブレットオーダー/セルフオーダーの「啓発期」は対消費者の啓発だけでなく、ベンダー側が消費者の不便不都合、ニーズを理解し、いかにしてユーザーフレンドリーな次世代プロダクトを創り出していくかの「啓発期」であると考えます。

竹田クニ
株式会社ケイノーツ
代表取締役
早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。










































