
2024.02.08
外食視察の猛者3人が語る繁盛店の共通点<後編>
イベントレポート2024年1月17、18日に開催された「外食ソリューションEXPO東京2024(居酒屋JAPAN・焼肉ビジネスフェア)」。その初日、レストランテック協会主宰で行われたセミナーが「たくさん飲食店に行きまくっている狂った3人に、繁盛店になる店の共通点を聞いてみた!!」です。当日は満席かつ立ち見も多かったこのトークセッションを、前・後編のレポートでお届け。今回はその後編となります。(前編はこちら)
パネリスト
株式会社dinii
執行役員 営業統括 益子雄児
覆面調査サービス「ファンくる」を事業展開する株式会社ROI(アールオーアイ。現・株式会社ファンくる)の代表取締役を経て、飲食店向けのモバイルオーダー&ID-POS「dinii(ダイニー)」社の執行役員に。客単価5000円以内の店を中心に全国を行脚する。
https://www.facebook.com/ymashiko
https://www.dinii.jp/
フードスタジアム株式会社
編集長 大関まなみ
フードビジネスニュースサイト「フードスタジアム」の編集長。オープンから半年以内の繁盛しそうな店や、1~10店舗目を運営するアーリーステージの外食経営者を中心にインタビュー。週2~3本のペースで記事を掲載している。
https://www.instagram.com/manami_ohzeki/
https://food-stadium.com/
株式会社アプリラボ
代表取締役社長 菅野壮紀
飲食店向けのPOSレジ付き店舗管理システム「K1(けいいち)くん」を開発運営する、アプリラボ社の代表。また、飲食店の接客日本一を決める「S1サーバーグランプリ」等を運営するNPO法人繁盛店への道の理事も務める。行動範囲は全国規模で、海外へ赴くことも。
https://www.facebook.com/kanno.takenori
https://applilab.co.jp/
地方や郊外にも繁盛店のヒントはある
前編では「具体的な新店舗の検索方法」と「行く新店・行かない新店の違い」を中心にお届けしました。後編では各パネリストがおすすめする店舗やその理由、繁盛する店の共通点をテーマにレポートします。まずは各人おすすめの2軒目から(1軒目は前編で紹介)。
益子氏のオススメのお店(2)

「福岡にも出店した神楽坂の『jiubar』は、肉団子が名物の中華バル。あえて看板を出さなかったり、クラフトジンを推してたりとサプライズ感が満点で、だれかを連れて行きたくなる要素が詰まっています」(益子氏)
jiubar
大関氏のオススメのお店(2)
大関氏は、大阪から東京進出した老舗をレコメンド。

「有楽町の高架下に開業した『徳田酒店』は、技アリな要素がちりばめられている名店。たとえば氷が少なくたっぷり飲めるメガジョッキとか、身だけを軽く湯がいた生海老とか。サツマイモのマスカルポーネも大好きなメニューです」(大関氏)
徳田商店
菅野氏のオススメのお店(2)
そして菅野氏は、地方や郊外店をピックアップ。

「『ちょーちょ』は仙台が拠点で、料理や店の空間づくりはもちろんのこと、接客が素晴らしいんです。代表が楽コーポレーション(※1)出身で、あのマンパワーは仙台屈指でしょう。新潟の『万代グリル ガルベストン』は居酒屋甲子園(※2)7代目理事長の山崎聡さんのお店で、料理人と『お腹いっぱいなんだけどこれ食べたい』『じゃあこういうやり方あります』と会話しながら柔軟に対応してくれるホスピタリティが最高です。
川崎の『型無一心(現:THEかたなし馬ル一心 One heart)』はそれこそ、2023年の居酒屋甲子園全国大会準優勝店。日本人スタッフがいなくても、しっかしりとした日本語の接客で感動のもてなしをしてくれます。それはやっぱり、教育が徹底されてるからなんですよね。国籍って関係ないんだなと再認識しました」(菅野氏)
ちょーちょ
万代グリル ガルベストン
THEかたなし馬ル一心 One heart
※1:“居酒屋の神様”と呼ばれる宇野隆史氏の会社。名店主を多数輩出している
※2:接客などの日本一を競う大会
心地よい接客や店の物語性が再来店を促す
接客のよさが「また行きたい」になり、繁盛店につながると話す菅野氏。いっぽうで店舗にストーリー性があるとまた行きたくなり、だれかを連れて行きたくなるという益子氏は、最後にユニークな一軒を取り上げました。
益子氏のオススメのお店(2)

「浅草の『覆面』は、料理のおいしさはもちろんテキーラやメスカル(※3)も絶品で、さらに店主がかつてメキシコの覆面レスラーだったと。当時の話を気さくに教えてくださって場も楽しく、紹介したいお店だなと思いました」(益子氏)
大関氏のオススメのお店(2)
続いて大関氏は、ラストに3店舗を連続で紹介。

「渋谷の『タートル』は2023年に最も同業者が視察に行き、手本にしたお店かなと。ここができて以来、料理にからすみを乗せる手法や、生肉にウズラの卵を乗せるお店が増えた気がします。

その点では恵比寿の『福味み』もお手本になりました。同店は恵比寿のアッパーな居酒屋『創和堂』をカジュアルにした感じの酒場だと思うのですが、その最適解というか『こうすればいいのか』という答えがある気がして。また、料理を一人一皿ずつ分けて提供するスタイルは『福味み』からかなと思います。
福味み
創和堂

最後は尾山台の「もつ焼たいじ」。高級住宅街にできた、ホルモンと梅割り焼酎メインの大衆酒場で、このギャップが近隣住民に大ヒットしています。エリアと業態が絶妙にマッチした繁盛店といえるでしょう」(大関氏)
もつ焼たいじ
菅野氏のオススメのお店(2)
ギャップやサプライズは記憶に残ると話す菅野氏も、その例を挙げました。
「福岡の『スパイスと酒 錫屋』は割烹の雰囲気ながら、スリランカ人が営むお店。多彩なパウダー使いが面白く、いい意味で裏切られました。札幌の『ひょうきん顔』は店主がS-1サーバーグランプリ(※4)の優勝者で、お客さんとの距離感を作るのがとっても上手。
福島・郡山駅前の『安兵衛』は東北弁のなまりで絡んでくれる、インパクト抜群のお店です。地元名物のコイ刺身など、料理もピカイチでした。六本木の『日いづる』はお品書きのないお店ですが、『万代グリル ガルベストン』同様、こちらの希望に合わせて料理人が仕立ててくれる素晴らしいお店です」(菅野氏)

スパイスと酒 錫屋
ひょうきん顔
安兵衛
日いづる
※3:テキーラと並ぶ、メキシコ伝統の蒸留酒
※4:飲食店の接客日本一を決める大会。菅野氏が理事を務める
スナック菓子世代でパウダーがバズる??
パウダーに関しては益子氏も発言。焼肉や寿司がタレや醤油から塩へと提案が増えたとともに、醤油や味噌は粉末タイプの商品も出ており、今後粉末化はより顕著になるとのこと。
「先ほど『広州市場』のワンタンの味のバリエーションについて話しました(前編)が、“味変”で多才な楽しみ方を提案する手法には、まだまだ伸びしろがあるはず。また、液体から粉末へという背景には、日本人の舌がスナック菓子文化に馴染んでいるからとも思うんですよね。この発想からの新業態は、若いプレイヤーであればあるほど上手につくれると、勝手ながら期待しています」(益子氏)
繁盛店の法則はひとつではない

ラストは、おすすめ店から導き出される繁盛店の共通点というテーマに。益子氏はダイニーの調査結果から、リピーター経由の新規客はリピート率が高いことに言及しました。

「メニューや空間のクオリティは大前提として、名物料理の商品力や人に教えたくなるワンフレーズのストーリーがある。それが『連れていきたい』の要素となり、結果としてリピーター経由の新規客になると考えています」(益子氏)
大関氏は、PR力よりもメニュー構成など、飲食店としての実力が大事だと話します。

「最初からホームページやInstagramの見せ方などがこなれてないお店のほうが惹かれますし、むしろ最初からPR力が前面に出ているお店より、不器用でも店づくりの実力があるお店のほうが伸びていくと感じますね。たとえるなら、インディーズバンドのファーストアルバムに感じる初期衝動のような」(大関氏)

菅野氏は2024年の正月に訪れた、平塚「商売繁盛 紅谷町パラダイス」の取り組みに言及。
「1月1~3日は10%の正月料金をもらい、スタッフのボーナスに充てるという心意気に、応援したくなりました。こういった心配りができる店は接客もいいし、繁盛店になるんじゃないかなと思います」(菅野氏)
繁盛店の共通点は三者三様。コーディネーターを務めた山澤修平氏(一般社団法人 レストランテック協会の代表理事)は「各々の基準は皆さんにもあると思います。そのお店が繁盛したら面白いよねという思いで、今年もみなさんで視察を楽しみましょう!」と述べ、セミナーは幕を閉じました。

中山秀明
フードライター/エディター/フードアナリスト
1980年東京生まれ、埼玉ローカル育ち、東京在住。グルメ、ファッション、カルチャー誌を得意とする編集プロダクションを経て独立し、フードアナリストの資格も取得。内食・外食のトレンドや酒類のカルチャーを得意とし、さまざまな雑誌やウェブメディアで編集と撮影を伴う取材執筆を行っている。そのほかTVや大手企業サイトのコメンテーターなど幅広く活動中。












































