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2024.01.10

【酒井慎平】東京しか見てない外食マーケターたち。もうトレンド語るの辞めたら?!

酒井慎平の物申す!!

  皆さま、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。新春一発目という事で張り切って参りましょう。

 私は、約4年前まで東京で外食業界誌の編集記者として年間1000件以上の飲食店を食べ歩き、一方的な記事作成にならないようにしっかりと食事するだけでなく運営側とのコミニュケーションを欠かさずになるべく丁寧に取材してきました。

 当時は、私以上に飲食店を訪問してる人はいないと自負していて、それが外食市場のトレンドを語るうえで自信になっていました。

 ちょうど私が独立する2019年頃までは、多店舗展開を目指すベンチャー企業も多く「10年で100店舗!」というジャパニーズドリームを目標に掲げるのも大げさには聞こえないご時世でした。

 ちなみに、「串カツ田中」1号店は2008年にオープンし2015年に100店舗達成、「ダンダダン酒場」は2011年に1号店をオープンし10年後の2021年に100店舗を達成、株式会社ダイヤモンドダイニングは2000年に創業し2010年に10年で100店舗を達成しています。

 次の串カツ田中やダイヤモンドダイニングを目標に掲げて、新ブランド開発や新規出店に励む若きベンチャー企業も多く、そういった金の卵をメディアとして発掘した気になって喜んでいた時期もありました。

 ちなみに今の私は、外食トレンドを追う世界から身を引いて、自社のマーケティング活動の一環で少し遠い位置から業界を眺めるようになったのですが、以前よりも自分がいたポジションの動向がよく見えるようになりました。

 ここ数年で外食市場の動向は大きく変動し、外食トレンドの様相も大きく変貌を遂げました。普段から世界情勢や日本経済の風向きの変化を敏感に察知している経営者などは既に気づいている方が多いですが、仕事をルーティーン化している編集者や記者、自称外食マーケターでも未だに全く気づかずに情報発信し続けている方が大勢います。※誰とは言ってない。

■トレンドとブームの境界線を見極める

まずは、この場の「トレンド」とは何か明確にしておきましょう。

 トレンド(trend)とは、大まかに時代の趨勢、潮流、流行のことで、ファッション、マーケティング、経済動向分析などの分野でよく使用されます。統計学では、傾向変動を指します。トレンドは、英語の “trend” をもとにして生まれたカタカナ語で、「流行」や「傾向」、「動向」などと、さまざまな意味で使われます。

 しかし、その基本イメージは「大きな流れ」という意味に集約されます。トレンドとブームの違いは、ブームが短時間のうちに過ぎ去ってしまうものであるのに対し、トレンドは長期間にわたって私たちの生活に浸透してくるものです。

 東京のマーケットは最先端の飲食店が溢れているため、常に時代のトレンドを目の当たりにしているような錯覚に陥りがちです。しかし大きな川で例えれば、東京のマーケットは情報の上流部分であって、その後も少しずつ形を変化させながら中流下流を辿って最後は海に流れていきます。東京から地方へと徐々に規模を拡大していく流れが想像しやすいですが、むしろ今は何十店舗も多店舗展開を狙ってブランド展開を行う企業も少なくなり、トレンドの源泉は東京からではなく地方から生まれているケースも増えているように思います。

 恥ずかしながら私も職を変えて地方に拠点を移さなければ未だに気づかなかった事実ではありますが、常に食にアンテナを張っている飲食経営者や美食家は一部のブームに流されることなく全国のトレンドを察知して動いています。

 東京のマーケットは情報発信に優れているため、爆発的な人気を生み出しやすい環境ですが、然るべきプロであればブームとトレンドを履き違えることなくしっかりと境界線を見極めて欲しいものです。

■コロナ前後のトレンド変化

 しかしながら、数年前まではトレンドとブームは表裏一体でした。当然、お店に人気が出れば売上が上がり影響力や規模は拡大していきます。しかしながら、慢性的な人手不足と物価高騰などの社会的問題により多店舗経営のハードルが一気に上がると共に、大人数の宴会が減り個食化が進み、単一化したチェーン店よりも個性的な個人経営店が好まれる傾向が強くなったことで、ブーム→トレンドの流れが起こりにくくなりました。

 過去のコラムでも書いたように、ネットやSNSの普及によって東京でお店を営まなくても情報発信が容易になると共に、個人の好みに合った個性的なお店を選ぶ傾向が強くなったことで、場所や距離は関係なく全国でも強い個店がトレンドをリードするようになってきました。

 珍しいブランドや写真映えするメニューは一過性のブームに過ぎず息が短いため減少傾向にあるように思います。それよりも簡単に真似されたり流行りに流されることないブランドこそ次のトレンドになる可能性を秘めてるのではないでしょうか。

 私は東京を否定しているわけではありません。日本の外食産業は全国で素晴らしい活躍をする飲食店に溢れているのに、いまだに東京にトレンドの源泉があると信じて依存するメディアやマーケターに危機感を抱いてしまうのです。ブームを追うだけなら素人でもできるので、是非とも全国からしっかりとトレンドの源泉を見つけてほしいものです。

酒井慎平

一般社団法人レストランテック協会

専務理事

20代で外食業界誌の編集長、外食産業記者会の代表幹事を務めた後に29歳で独立。長野県長野市で製造する長期熟成生ハム「掬月 Jamon KIKUZUKI」のブランドオーナー。外食業界に特化した広告代理業を軸に食の価値創造に取り組む。株式会社SATOKA 代表取締役。一般社団法人レストランテック協会 専務理事。NPO法人居酒屋甲子園 アドバイザー理事。一般社団法人これからの時代の飲食店マネジメント協会 プロコンサルタント。

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