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2025.01.24

まだ「囲い込み」なんて言ってるんですか? ~ファンづくりそして共感経営へ!~

竹田クニのインサイト

「囲い込み戦略」は顧客の離脱を防ぎ、会社業績の安定&向上させる有効なマーケティングとして、以前は多く語られてきました。しかしながらその多くは、極めて自分(店・企業)都合の古き悪しき“妄想“ではないでしょうか?
時代は顧客を“囲い込む”“離脱させない”ではなく、深い顧客インサイト理解に基づく、「ファンづくり」「共感経営」に向かっています。

「囲い込み戦略」という古き・悪しき“妄想”

いまだに「囲い込み戦略」って言っている人は、恐らく“深く理解せずに、なんとなく“正しそうな気がして”使っている人が多いのかもしれません。

 誰もがスマホ、SNSで繋がる時代、近年は店舗側の積極的なアプローチが簡単に出来るようになり、手法はますます多様化しています。

「自分都合」の塊

こうしてみると、上記のLTV、パレート理論、1:5、5:25のコスト効率といった考え方は「店・会社都合」の塊に見えます。

個々の手法は間違っているわけではなく、相応に効果を発揮するものもあるのかもしれませんが、それが“顧客を囲い込む”=“自分都合“で繋ぎあわされるという「思想」に大きな問題があると考えます。

皆さんは「囲い込まれたいですか?」

  • 同じ店に何度も行きたいですか?同じものを何度も食べたいですか?

  • 同じブランドの服で揃えたいですか?

  • 同じメーカーのソフトウェアで揃えたいですか?

恐らく答えは「No」という方が多いのではないでしょうか?

  •  色々な食、店を楽しみたいし、シーンによってメニューや店は変わる

  • 様々なスタイル、ファッションを楽しみたい

  • 最適な機能を持った製品を組み合わせたい

こう考えている消費者が多数派のはずで、よほどの「ファン」でない限り、その企業・店を選び続けるというのは「妄想」であり、自社・自店舗から“逃がさない”という考え方が、そもそも顧客本位ではないのです。

一方で、大手検索サイト、携帯電話アプリ、大手ECサイトや、航空機のマイレージプログラムでは、都度、ほぼ必ずそれらを利用するというエクスクルーシブに近い顧客との関係性は成立しているように見えます。これらは使用し続けることによる大きなインセンティブや、履歴の保存や決済の簡便さ等による利便性などのメリットが存在します。

つまり大規模なプラットフォーマーに限って言えば、こうしたロイヤルカスタマー獲得戦略は成功している例はあるのです。

「顧客の立場で考える」という基本中の基本の欠落感

顧客の立場で考える・・・はマーケティングの基本中の基本でありますが、上記の汎用的な「囲い込み戦略」は、顧客のインサイトが欠落した、店・会社都合の販促戦略にしか見えないのであります。

個々の手法は、それ自体は相応に有効なものもありますが、顧客の立場で考える・・・「顧客体験」への想いと深い考察がなければ、成果は限定的なものとなり、店・会社の魅力は進化していかない=サスティナブルな経営とは言いづらい。

重要なのは「顧客体験」の進化

例えば…
1000人の利用客へ販促メールや次回利用クーポンを送り、0.3%が反応したとします。
その効果・成果を“もっと高めようと”、様々な手法を重ねる、あるいは頻度を上げる・・・としても効果は限定的でしょう。
大切なのは、「顧客体験価値」を高め、顧客に「また来たい」「今度は大切な人を連れていきたい」と思ってもらえることがあるべき姿。

最悪なのは、こうした販促行為が多頻度・多重的に行われることで、かえって顧客離脱に繋がっている場合です。
よほどのファンでない限り、度重なる「店都合の販促」はノイズであり、それは少なくとも顧客のマインドシェアを下げる方向に機能します。

企業、店としては「囲い込む」「LTVを上げる」という妄想にエネルギーを使うのではなく顧客が、どんな動機や目的で店に訪れ、料理やサービスをどう感じ、どう評価してくれたか?

さらに私たちの店利用してくれるためには、会社、店、従業員は、何を改善し、何を磨き、何を新たに創造し提案することが必要なのか・・・という顧客インサイトの深さ・精度を上げ、「顧客体験価値」を高める取り組みに注力することが、あくまで「本分」であるはずです。

「ファンづくり」から「共感経営」へ!

冒頭に挙げた各手法…これら自体は、否定しません、有効であるものも多い。
しかしながら、これらが手法が真に店にとって効果的かどうかは、「顧客」の立場で考えられているかどうか・・・今流にいうと顧客インサイトに基づく設計・運用がなされているかどうか、にかかっています。

ファンづくり、ファンマーケティング

ファンマーケティング(あるいはファンベースマーケティング)の定義は「電通デジタル」によると…ブランドや商品、サービスのファンに着目し、彼/彼女らと密接にコミュニケーションをとることで
「中長期的な売り上げの増大」や「ブランドやそのカルチャーの共創」を図るマーケティング方法、またはその概念となっています。

ファンマーケティングの重要な要素としては

  • UGC(ユーザー生成コンテンツ) →インスタ、YOUTUBE、X、note、TikTokなどなど

  • カスタマートラスト NPSの4要素(人間性、透明性、力量、確実性)

と定義されることが多いようです。

ファンマーケティングとは?基本から実践の最重要ポイントまで解説 | Commune(コミューン)|コミュニティプラットフォーム

ブランドが「好き」「応援したい」「広めたい」という気持ちをベースに、カスタマが自由自在に活動し、企業はそれに応え、支援する。

こういった店・企業の姿勢がこれからの経営においては非常に重要と言えるでしょう。

そして「共感経営」へ

こうした流れで外食のファンマーケティングを考えてみると、外食はメニューだけでなく、ストーリーや空間、接客も顧客価値を構成する要素でありますから、その企業の商品が「好き」に加えて、企業の考え方へ共感する、従業員の立ち居振る舞い好感を覚えるといった概念に広がっていきます。

これがまさに「共感経営」に繋がります。

 共感経営の理想的なトライアングルでは「顧客」はその企業の商品サービスから得られる「顧客体験価値」と共に、企業理念やMVV、社会的な活動に共感し、そして、その企業で働く従業員の接客態度やパーソナリティ・立ち居振る舞いに“好感”“共感”を覚える

このような共感で結ばれる企業は、顧客基盤の維持拡大、新規顧客の集客、従業員の忠誠心とパフォーマンス、従業員の採用などの活動において強く、サスティナビリティを有する・・・
これが目指すべき「共感経営」であります。

「共感経営」は、繁盛店の一部や居酒屋甲子園の受賞店舗などに見られ、そうした経営は強く、経営者、従業員が魅力的である。

「囲い込み戦略」は、いまだに言っている人が少くないのですが、“記号的に”“あまり深く知らずに”言葉として使っている人が多い気がしますが、「囲い込み戦略」は古く、企業側の勝手な理屈なのです。

これからの時代に目指すべきは、顧客を逃がさないという思想ではなく、顧客体験への想いと深い考察に基づく「ファンづくり」に取り組み、顧客、従業員両方の「ファン」よって構成される「共感経営」だと考えられるのではないでしょうか?

竹田クニ

株式会社ケイノーツ

代表取締役

早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。

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