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2024.12.31

ダイナミックプライシングは許せる?許せない? ~価格変動制に関する消費者の意識調査~ 

竹田クニのインサイト

食材高騰、物価高、コスト上昇、人件費上昇・・・飲食店の収益構造は近年大変厳しい。
本コラムでも何度か価格変動制(ダイナミックプライシング)の可能性について取り上げてきました。
他業界では天候や世界情勢、仕入れ相場の変動、さらに需要期or閑散期によって価格が変わるのはごく普通に見られるから、外食産業でもコスト上昇を価格に転嫁するのは当然という見方も強い。

一方で、消費者側の意識はどうか?

「値上げ」容認派は半分超

株式会社リクルート ホットペッパーグルメ外食総研がこの度行った調査の発表によると、ダイナミックプライシングに対する認知率は57%、「飲食店の『ダイナミックプライシング』制導入に対する全体的な納得感」は男女計で53.4%と半数を超えた。

外食店の「ダイナミックプライシング」導入への消費者意識 | ホットペッパーグルメ外食総研「すべての人に、食で笑顔を。」 (hotpepper.jp)

納得できる/できない理由

納得できる理由については・・・回答が多い順に

  1. 「価格が安くなる時間帯を選ぶなどの選択肢が増えるのでよい」・・・36.5%

  2. 「飲食店も経営が厳しいと思うので仕方がない」・・・32.5%

  3. 「価格戦略は企業が決めればよい」・・・29.4%

など、昨今の飲食店の厳しい経営環境を理解する声も相応の数値が出ている。

一方で、最も回答数の多かった「価格が安くなる時間帯を選ぶなどの選択肢が増えるのでよい」は、ハッピーアワーやレディスデー、○○割など、“価格が安くなる“=お得に対する支持であって、価格変動制に対する理解とは少々異なるニュアンスを感じます。

どんな価格変動は許せる?

では、“どういう価格変動制なら納得できるのか?“を聞いた設問に、消費者の本音が垣間見える。

ランチやモーニングで割安・・・68.4%
夕方早めは割安(ハッピーアワー)・・・63.1%
と、「割安になる」価格変動制にはスコアが高い。

一方、

立地によって価格が変わる・・・50.9%
曜日によって価格が変わる・・・50.1%
混雑状況で価格が変わる・・・27.6%
価格が高くなる方向の変動は相対的にスコアが低く、特に、混雑状況で価格が変わるに対しては27.6%と非常に低い数値となっている。

気になる「実施率」と「体験率」の低さ

この調査の結果が、一概に需要度が高いのか低いのかは評価が難しいが、そもそも「ダイナミックプライシング」を実施している店を知っている=店の「実施率」、利用したことがある=「体験率」がまだまだ低い。
下記の「認知・利用状況」をみると、曜日や時間、混雑状況で価格が変動する“本来的な意味での”ダイナミックプライシングの実施率・体験率順位が低くなっており、まだまだ外食業界で取り組んでいる飲食店が少ないことが反映されたと言えそうだ。

企業努力と言う“暗黙知” 日本の市場の特異性

「お客様は神様」。日本人にはどうやらその意識は高い傾向にあるのだろう。

近年の“カスハラ”問題は行き過ぎた現象だとしても、企業は顧客のために価格を維持するのが企業努力・・・という考え方は市場に相当数存在するように思えます。

食事とサービスの概念分離は業界を挙げて取り組むテーマ

外食は「サービス業」であり、飲食の物理的な提供だけでなくサービスを提供する「ホスピタリティ産業」であります。
「お冷」が出てくるのは当たり前、メニュー説明・おすすめは当たり前、持ってきてくれるのは当たり前・・・これは海外では必ずしも当てはまりません。
日本の外食市場がグローバル化する中で、今一度「サービスの価値」が認識され、その価値の「対価性」の認識を消費者に対して啓発していく必要性を感じます。

これほど沢山の飲食店が存在し、クオリティが高く、またコンビニやスーパーなど多様な食・酒の調達手段が溢れているのは、日本の素晴らしさであります。またインバウンド伸長で外食産業は現在で2~3兆円。さらに成長が期待されており、その規模は日本の基幹産業として十二分な規模になりつつあるのです。

そんな外食産業が、儲からない、給料が安い、地位が低い・・・そのように感じてしまっている人が少なからず存在する現状をなんとしても打破していきたい。

“語り部“としての活動と閾値

本来的なダイナミックプライシングは、サービスの対価性の認識が高まることによって、消費者に受容されていくのではないかと考えます。またダイナミックプライシングは、スマホオーダー、経営システム、インターネット販促などと非常に関係が深い。

飲食店と共に飲食店を支援する企業、業界団体など業界を挙げて、「サービスの価値」の啓発に取り組み、積極的な取り組みの実施店舗を増やしていくことが、消費者の認知→体験→受容に繋がります。
ダイナミックプライシングを実際に体験して満足する消費者がある一定の「閾値」に達するのはまだまだこれから。

業界がチカラを合わせて、皆が「大儀」と「大志」を抱き、「語り部」となって積極的な取り組みを支援・サポートしていきましょう。

竹田クニ

株式会社ケイノーツ

代表取締役

早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。

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