
2024.03.08
飲食店が提供するAtmosphereの進化。自店舗が提供するのは「チート」か「チル」か?
竹田クニのインサイトAtmosphereとは「雰囲気」「空気感」と言う意味。飲食店で顧客が感じる…上質感、非日常感、臨場感、高揚感、癒しなどを指します。
消費者のニーズ・ウォンツ多様化、アルコールダイバシティなど、時代と市場は変化していく中、飲食店が提供する体験価値も進化していかねばなりません。今回は飲食店が提供するAtmosphereについて「チート」と「チル」を軸に整理してみたいと思います。
「チート」・・・「発散」「チャージ」
もともとは「だます」「ズルをする」という意味のチートですが、日本での用例としては「チートデイ」が知られています。
「チートデイ」とは?
「チートデイ」という言葉がいつごろから言われ出したかは定かではありませんが、ネットで検索してみると…
チートデイは「cheat(チート)=だます・ズルをする・反則をする」という言葉からきています。
ダイエット中でもズルする日を設けることで、減量を促進させるのです。この「ズル」というのが食事。
チートデイは食事制限をなくし、好きなものを食べていい日と決めます。
などと解説されています。
「ダイエットによる基礎代謝の停滞を回避し、停滞期を防ぐ」という科学的な説明もあるようですが、ここでは割愛します。
外食で言えば…
本格的なダイエットかどうかに限らず、「普段極力我慢しているがっつり系メニュー」や「飲酒」「甘いもの」などを「思いっきり楽しむ!」という、ある意味ポジティブで娯楽的なニュアンスで幅広くとらえるとわかり易いと思われます。
近年流行った「背徳系」メニュー
近年では、「痛風鍋」や「背徳鍋」、「メガ盛り」など、背徳感、高揚感、映え…を醸し出すメニューがヒットしました。

痛風鍋(ダイヤモンドダイニング)

肉鍋タワー(ダイヤモンドダイニング)
いわゆる「ストレス発散」を支えた昭和平成の居酒屋
我慢して我慢して我慢して…今日は思いっきり!
今よりも労働集約的な仕事も多く、労働時間、拘束時間が長かったり、個よりも組織の全体最適…そんな昭和・平成の時代において社会人の「ストレス発散」の場として大いに賑わったのが居酒屋であったのです。
元気を提供する…明るく、元気で、賑やかな酒場

ストレス発散の酒席には、明るく元気で勢いのある接客がピッタリ!
♪いらっしゃませ~! お客様〇名様ご来店!
♪〇番様、ファーストドリンク頂きました! (スタッフ全員で)今日もお疲れさまでした~!
といった元気溢れる接客は1990年代のチェーン居酒屋ブームから今日まで、日本の居酒屋を象徴する文化となっており、「お客様を元気に!」という接客にこだわりをもっている店も多くあります。
「チル」…“解放““癒し”
「チルする」という言葉は近年若者を中心に使われるようになったようです。
チル・アウト
由来は、英語の「chill out」で、日本語では「冷静になる、落ち着く」といった意味に訳されます。これまで欧米を中心として使われていた表現から、「心を落ち着かせる」といった意味で「チルアウト」という単語が急速に広がりました。
若い世代を中心に、「チルする」=「ゆったりする」「まったりする」といった意味で休むことを重視するという考え方も表しています。

全く違う“シーン”“モード”
外食機会で考えてみる前述のチートとは全く違うシーンであると考えるべきです。
チートが、我慢してきた心を開放して、明日への活力をチャージする…に対して、チル(チルアウト)は、頑張って頑張ってあるいは緊張してきた心を…解放、癒す、整えるという心のリラックス、リセットという方向なのです。
「チル」に合った店は?
消費者が「チル」を求めているときに、前述の元気な居酒屋はどうでしょうか?
スタッフの大きな声で盛り上げも、良い意味での喧噪も、「チル」を求めているお客様にはノイズでしかありません。
「チル」に向いた雰囲気は…
こじんまりした落ち着いた個店。
静かな客層が集まる落ち着いた雰囲気の店
飲んで騒ぐ人が居ない店
おせっかい過ぎない接客。
こうした店が選ばれやすいと思われます。
ノンアルコールでも楽しめる
厚生労働省の調査によると、成人人口の約51%が「酒を飲まない」「ほとんど飲まない」さらに若年になるほど飲酒をしない、好まない人口は割合が高くなる傾向があります。

アルコールを飲まない人にとって居心地の良い店にするためには、ソフトドリンク類の充実だけでなく、接客においても「酒を飲むことを前提とした接客」とならない配慮が必要です。
また、例えば…
4名のグループの中にあまりお酒が飲めない人が居る。
女性5名のグループで、もともとお酒が大好きだが今は妊娠中で飲めない方がいる
グループに子供連れがいる
こうした条件に該当する消費者にとっては、店選びに大切な条件となります。
「チート」と「チル」 どちらに向けた店なのか?
「チート」を求めるシーンや心のモードは誰もがあるハズ。
「チームで何かを成し遂げたお祝い」や「決起会として士気を高める」「歓送迎会で主役を元気に送り出す」…といったタイミングでは、元気に、威勢よく、エネルギーをチャージするシーンや心のモードはやはり不滅です。
一方の「チル」は、SDGs、ダイバシティ、アルコールダイバシティ、働き方の変化etc.近年の世の中の変化によって、存在感が増してきているように感じます。
昭和平成の時代に成長した日本の外食産業。特に居酒屋をはじめとする飲酒業態は店舗数を大きく増やしました。
その多くが「チート」系だとすれば、昭和平成の成功体験をリセットし、現在の消費者の動向・志向・嗜好にあった「atmosphere」を実現する店舗として、改めてあり方を考える時にきているのではないでしょうか?
そして、その基本はマーケティング…消費者の目線で価値を考えることだと考えます。

竹田クニ
株式会社ケイノーツ
代表取締役
早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。










































