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2023.12.13

【酒井慎平】コロナ後の外食業界変革:新しい時代の職人育成とテクノロジーの活用

酒井慎平の物申す!!

 ふと気が付けば今年も残り1か月を切りました。外食マーケットは、新型コロナの5類移行から8か月が経過しましたが、消費の回復とインバウンド需要の増加が目立ってきました。日本フードサービス協会調べによる8月の外食売上は前年同月比17%増となり、来店客数(8%増)や客単価(8%増)も増加しました。22年度(22年4月~23年3月)でみても3圏域での外食市場規模(外食総研)は、コロナ禍前の19年度比で78%まで回復し、1か月当たりの外食実施率や外食頻度、外食単価も上がってきています。

 また、4~6月の訪日客の旅行消費額は1兆2千52億円と19年の同期比で95%まで回復。円安によって外国人観光客が割安な日本に殺到。中国の団体観光客が解禁され、爆買いには至らないまでも旅行スタイルが変化し予想以上に訪日客が増えています。

 外食産業は、コロナ前と戦術が変われど少しずつ賑わいを取り戻しつつあり安堵の声も聞こえてきています。

 しかしながら、近年の日本は、従業員にとって働きやすい環境を作ろうと、労働環境を整備する企業が増えていますが、職場環境への不満を漏らす人はまだまだ多いのが現状。「劣悪な労働環境が原因でうつ病になった」「仕事を続けるのが困難になった」と訴えるケースも少なくありません。

 特に外食産業は労働環境の整備が急務であり、そうでなくては世間からブラック企業のレッテルを貼られてしまいます。

飲食業界の人手不足には以下のような理由が挙げられます。

・賃金が低い
・研修期間が短い
・休憩時間が確約されていない
・休みが取りにくい
・仕事量が多い
・責任感を押しつけられる
・コロナによる影響が大きい
・売上が低くスタッフを増やせない
※トレタHP参照:https://toreta.in/contents/dx/restaurant-labor-shortage

 日本料理の世界には「下積み3年」という言葉もあるくらいですが、現在は下積みに3年も掛けているところはほとんどありません。1〜2年のうちに厳しい追い回しを抜け、次のステップを目指すのが一般的です。本来は、四季の料理を各ポジションで体験し、1年毎にポジションをステップアップしていくのが理想的です。

 しかしながら、この国の労働条件は厳しくなる一方で、そもそも飲食業は時間外労働が常態化しているため世間の印象は良くありません。

 また、慢性的な人材不足によって十分な研修期間や下積み経験を与える余裕が無い企業も多いため、入社したばかりでほとんど研修を行わず現場に立たさる新人も多い現状です。

 では、もはや飲食業界では一流の料理人や職人は育たないのでしょうか。

 それは否です。むしろ現在は、古典的な育成方法から脱却した若き10代20代が目覚ましい活躍を魅せています。有名どころでは大谷翔平さんや藤井聡太さんがいますが、彼らは従来の習慣を覆して前代未聞の高みへと上り詰めました。飲食業界にも斬新な魅せ方を編み出して、新しい独自のポジションを確立した料理人が大勢出てきました。ここ数年で私たちが戦うステージが大きく変わり、ネットが発達し情報ソースが多様化し専門知識が簡単に入手できるようになったことで、個々人がそれぞれの専門性を高めていく若き世代が異次元の成長を見せています。

 令和に入りコロナを抜けて、職人の世界はパラダイムシフトしたと言っていいでしょう。パラダイムシフトは、その時代に当然と考えられていた物の見方や考え方が劇的に変化することを指す言葉です。これまでの常識が通じなくなる時には、革新的なアイディアによって時代を変える人物が登場してくるものです。レストランテック産業でも次々と若き革命家が生まれています。生産者やメーカーも同様の動きが見られます。

 それでもどうにもならないと思ってしまうなら、きっと従来のやり方が間違っているのでしょう。「寡黙で語らず」「技は見て盗め」といった職人の世界のイメージは一新する必要がありそうです。新しい時代は、むしろ「よく語り合い」「よく見合う」ことで共に尊敬・信頼される職人へと育っていくのかもしれません。厨房内であれ暴力や体罰は以ての外です。悪しき伝統は直ぐに止めなければなりません。

 「伝統」「文化」「歴史」は常に変化していくものです。時代の風向きに合わせて柔軟に形を変えていかなければなりません。そこで私たちに出来ることは、不可抗力に屈して諦めてしまうことではなく、先人から受け継がれた灯を絶やさず薪をくべ続けていくことではないでしょうか。綺麗事に聞こえるかもしれませんが、きっと未来はやり方次第だと思うのです。若者の可能性を信じることから未来は開けていくはずです。

酒井慎平

一般社団法人レストランテック協会

専務理事

20代で外食業界誌の編集長、外食産業記者会の代表幹事を務めた後に29歳で独立。長野県長野市で製造する長期熟成生ハム「掬月 Jamon KIKUZUKI」のブランドオーナー。外食業界に特化した広告代理業を軸に食の価値創造に取り組む。株式会社SATOKA 代表取締役。一般社団法人レストランテック協会 専務理事。NPO法人居酒屋甲子園 アドバイザー理事。一般社団法人これからの時代の飲食店マネジメント協会 プロコンサルタント。

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