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2026.07.21

「取り締まり」強化でなく「想像力とモラル」のシェア~キャンセル料が当たり前になる文化風土をどう創るか~

竹田クニのインサイト

ネット予約の普及がもたらした「便利さ」と「新しい課題」

ネット予約の浸透とともに大きな問題となった「ドタキャン・ノーショウ」問題。一時は経産省等が主導した対策委員会なども立ち上がり、有識者によるキャンセル行為の法的解釈とともにキャンセル料徴収の方法論やそもそもキャンセルを生まない取り組みなどが議論されレポーティングされたが、依然として一定数のドタキャン・ノーショウは発生し続けており、大きな改善・進化は出来ていない感が強い。

飲食店側の対策

とは言え、飲食店側の対策はある程度進んできた。

  • キャンセルポリシーの明示

  • リコンファームの徹底

  • グルメサイトなど予約エンジン側の注意喚起と、複数回のキャンセル実績でアカウント停止など

  • 予約時のデポジット運用

店によって取り組みに差はあれど、ここ数年でこれらが進んできた実態はあるのだが、ドタキャン・ノーショウ件数が業界全体として減少したとは残念ながら言い難い。

ドタキャン、ノーショウに伴うキャンセル料が当たり前な業界と何が違うのか?

ホテル・旅館、航空機・鉄道、ではキャンセルによって「キャンセル料」が発生しすることは当たり前化していると考えられるが、外食業界と何が違うのだろうか?

宿泊・交通は「購入」の感覚が強い

ホテルや旅館、航空券、指定席のある鉄道では、キャンセル料は比較的自然に受け入れられている。
予約時に料金が確定し、カード決済や事前支払いが行われ、キャンセルした場合にどれだけ返金されるかも画面上に表示される。利用者にとっても、「部屋や座席という限られた在庫を購入した」という感覚が明確である。
また交通機関では、乗車前に「チケット」を購入が必須で、なおさら「購入」の感覚となる。

飲食店は「予定登録」のように扱われやすい

飲食店の予約は、いまだに「席をとっておく」「予定を入れておく」といった軽い感覚で捉えられがちだ。
特に席のみ予約では、最終的な会計額が決まっていない。食べる料理も、飲む量も、注文内容も来店後に決まる。そのため消費者は、予約を“購入”や“契約”ではなく、仮の予定登録のように感じやすい。
少し前の調査にはなるが、テーブルチェックが行った調査によると、予約の無断キャンセル理由は、「とりあえず場所確保」「人気店をとりあえず」・・・といった悪意無き安易なものが多い。

出典:テーブルチェック

ここに、飲食店のキャンセル問題の本質がある。

「在庫」の時限性・唯一無二性

宿泊、交通も、飲食店もビジネスモデルとして考えた際には、その日、その時間、その席という「在庫」概念は同じ。
しかしながら一般消費者には、「在庫」と言う概念が理解されているとは言えない。
しかも飲食店の場合、席は一日に何回転かするし、開始時間、滞在時間もまちまち・・・そうすると、その「在庫」の時限性・唯一無二性は曖昧で、失われる金銭的損失も算出論拠が難しい。
キャンセルをしたとしても、それによる機会損失、遺失利益が消費者に理解されにくい土壌がここにもあるように思う。

ドタキャン・ノーショウの対策、まずは消費者の理解醸成

消費者の理解不足、感覚の違いが背景にあるのだとすれば、まず取り組むべきは「理解醸成」だ。
それは「キャンセルによって飲食店にどんなマイナスが生じるのか?」の理解。

  • 機会損失・・・その席によって生ずるはずだった売上

           別のお客様の予約を断る

  • 食材・・・コース料理の仕込み

  • 人員・・・その席を含めた全体のサービス提供に要するスタッフ配置と人件費

 これらの総体が機会損失、売上/利益の遺失となる。

キャンセル料は、店が受けた損失を補うためのものだ。仕込み済みの食材、確保した座席、配置した人員、断ってしまった予約機会。その損失をすべて店だけが背負うのは公平ではない。
まず必要なのは、こうしたマイナスが店に発生している事の理解醸成である。

「取り締まり強化」ではなく、「想像力・モラルのシェア」

キャンセル料を「罰金を請求される」ような取り締まりの構図をつくりたいわけではない。デポジットやクレジットカード登録など、予約行為のハードルを上げれば、せっかく育ってきたネット予約文化に逆行する。
予定変更は誰にでもある。体調不良、仕事の都合、家庭の事情、交通機関の乱れなど、やむを得ず行けなくなること自体は無くせないし責めるべきではない。
だからこそ、社会に広げるべきメッセージは、「キャンセルするな」や「厳罰化」ではない

店側に発生するマイナスへの理解・想像力と、早めに連絡するモラルとスマートさをシェアすること

予約キャンセルによって発生する店側のマイナスをいかに理解・想像できるか?がまず必要、そして不幸にしてキャンセルをする事態が発生したら、すみやかに連絡するモラルとスマートな行動が社会に共有されることが大切である。
従って、消費者の啓発は「無断キャンセルはマナー違反です」「キャンセル料を請求します」といったネガティブキャンペーン的なものではなく、店側のマイナスを可視化し、モラルとスマートな行動を可視化・発信することだと考えます。
有事でも整然と秩序を守る日本、サッカー観戦後にゴミ拾いを行える日本・・・そんな私達には創り出すことが出来る文化なのではないか・・・そう考えます。

キャンセルしやすい仕組み、キャンセル料をスマートに支払える仕組みもセットで必要

「早く連絡してください」と呼びかけるなら、予約と同じくらいキャンセルしやすい導線を用意しなければならない。
予約のリコンファームが予約エンジンから自動的に送られる仕組みも増えてきたが、こうした取り組みは大切だろう。
欲を言えば、こうした予約エンジンを提供しているプレイヤーが前述の「キャンセルによって生ずる飲食店のマイナス」について消費者の理解醸成・啓発につながるコンテンツを周知してくれると良い。

キャンセル料の請求業務は従業員にとってとても負荷の高い業務だ。キャンセルポリシーが明示してあったとしても、電話やメールによる連絡、不在・未返信等で繰り返しの連絡、お得意様であれば“心象を害する”のではないかという心配・・・大変ストレスがかかる業務。
これを専門に代行するサービスが好調だ。専門のノウハウによって何段階かにわけたメッセージの配信、心証等に配慮した次回クーポンの適宜活用などによって、平均回収率は約60%と高い。
こうした専門サービスを導入することは、具体的な回収成果だけでなく、泣き寝入り・ゴネ得を無くす、従業員の心理的安全性の面で非常に有効だ。

請求できるくん | 飲食店の無断キャンセル対策 | キャンセル料金の請求・回収業務を自動化するデジタル請求サービス

社会変革の一環として

「ウェルビーイング」については、本コラムでもたびたび取り上げてきた。

この考え方に照らして考えてみれば、「予約に行かれなくなったら、早めにキャンセル連絡をする」は、影響を受ける他者への配慮=社会的行動という自己肯定感につながるものである。

「取り締まり強化」ではなく、消費者にキャンセル影響の大きさの自覚を促し、「すみやかに店に返す」「誰かに譲る」というスマートな行動を喚起していくことが、ドタキャン・ノーショウ問題の改善スピードを上げていくのではないかと考えます。

竹田クニ

株式会社ケイノーツ

代表取締役

早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。

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