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2024.03.06

【酒井慎平】真面目に一生懸命働くとは?労働者思考と精神的コスト。

酒井慎平の物申す!!

 こんにちは。第19回目のコラムとなりました。

 じつは、私がコラムを書くにあたって憧れの外食コラムがありまして、「日経レストラン」(2016年3月休刊)で掲載されていた宇野隆史氏(株式会社楽コーポレーション 代表取締役)のコラムがカッコよくて今だに忘れられずにいます。当時20代前半の私にとって、宇野氏が一人語りの形式で粋な人生観と業界を俯瞰しながら歯に衣着せぬ言い振舞いに毎回心を震わされていたのでした。いつかあんなコラムを書きたいなぁ。

 宇野氏の名著「トマトが切れれば、メシ屋はできる 栓が抜ければ、飲み屋ができる」(2011年4月18日発行)の転載コラムだったと思うのですが、誰もができる流行る店の作り方、自店をスタッフが独立するための経験を積む訓練の場ととらえ、飲食店経営に必要なノウハウを若者たちにOJTで学ばせているなど、その繁盛店作りの手法がまとめられています。もう12年前の著書ですが、「小が大に勝つ」ために必要なメニュー戦略や接客、店主としての心構えまで幅広く学べる一冊でした。

 この名著を読み返してみると、ここ十数年で労働者思考は大きく変わったなと痛感させられます。

 一昔前は仕事が増えることは喜ばしいことだったはずなのに、今の日本の労働者思考は、なるべく仕事を減らしたい人で溢れているように感じます。そんな世の中になったことで、今度は仕事をお願いする人の精神的コストがすごく上がっているように思います。

 例えば、ラストオーダー間際の居酒屋で「まだやってる?8人なんだけど…」、「いらっしゃい!いけるよ!」と喜んでくれるのが店主。ラストオーダー前なのに申し訳ないから少しでも客単価を上げてあげようと「追加でビールもお願い!」とお客側もなるわけですよね。そうやって売上を伸ばして経済も伸ばしてきたわけですよね。仕事が増えて喜ぶスパイラルで、きっと。

 でも今の労働者思考だと嫌な顔をされます。もうクローズ作業できると思っていたのにって露骨に。何なら「あ、もう閉店でーす」って返される。さらには「ラストオーダー前にきた8人組のリーマン軍団、追い返してやった。まだラストオーダーまで2分あったけど関係ないね。俺はバイトだし」とSNSに投稿するオマケ付き。

 宇野氏の本のタイトルにあるように「トマトを切ればメシ屋ができる」「栓を抜ければ飲み屋ができる」、こんな小さな労働の積み重ねが喜びのスパイラルとなって、今の外食業界に限らず日本経済を作ってきたはずです。

 日本で一番大切な資源は真面目に一生懸命に働く人。私たち今の労働者層に必要なこととはなんでしょうか。時間が流れても原点に立ち返ることができる一冊です。

酒井慎平

一般社団法人レストランテック協会

専務理事

20代で外食業界誌の編集長、外食産業記者会の代表幹事を務めた後に29歳で独立。長野県長野市で製造する長期熟成生ハム「掬月 Jamon KIKUZUKI」のブランドオーナー。外食業界に特化した広告代理業を軸に食の価値創造に取り組む。株式会社SATOKA 代表取締役。一般社団法人レストランテック協会 専務理事。NPO法人居酒屋甲子園 アドバイザー理事。一般社団法人これからの時代の飲食店マネジメント協会 プロコンサルタント。

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