
2025.12.01
インターナルマーケティングの重要性 「PDCC」発想が飲食店マネジメントを変える!
竹田クニのインサイト従業員満足度測定、エンゲージメント測定、コミュニケーション&マネジメント支援、今や多くのサービスが存在する。
従業員体験価値を高める取り組みは、現下の厳しい経営環境の中、その重要性は極めて高い。
飲食店は市場・顧客=外部に対するエクスターナルマーケティングと同様に、組織・従業員に対するインターナルマーケティングの視点で戦略的で複合的な取り組みが必要となってきている。
満足度とエンゲージメントは似て非なるもの?
従業員満足度(ES)は、近年では「従業員体験価値(EX)」が重要とされ、「やりがい」「充実感」といった曖昧な概念を、自己肯定感、効力感、適合感、成長感といった概念に分解し、その組織に所属している目的・意味と同時に、自身と組織のコンディションについても可視化できるよう進化してきている。
一方、飲食店などサービス産業においては、「エンゲージメント」が有効だと言われています。
エンゲージメントとは
従業員エンゲージメント:従業員が組織や仕事に対して持つ、愛着心、貢献意欲、熱意などの状態を指します。
特徴:従業員は、自分の仕事に誇りを持ち、積極的に貢献しようとします。
従業員満足度との違い:会社に満足している状態(従業員満足度)とは異なり、自発的な貢献意欲の度合いを示します。
※Google AI
愛着心、貢献意欲、熱意は日々の表情や行動の質に表れやすく、更に「心の状態」や「気分」といったものも近年のエンゲージメントでは重要な指標とされています。
エンゲージメントは毎日、勤務ごと、毎週など小まめに頻繁に行う事が特徴で、人事測定専門企業の他、グループウェア、検索エンジン、SNSが提供するプラットフォームなど様々なサービスがリリースされています。


MS&Consulting 従業員エンゲージメント調査

飲食店の満足度調査の特異性
飲食店の従業員向け調査の特異性、難しさは、⒈働く人の多様性と⒉日々の変化だろう。
働く人の多様性
正社員を中心とする企業であれば仕事におけるミッション・コミットメントは社員同士で共通性が高いが、飲食店の場合、社員、若いアルバイト・パート、短時間労働のシニア、スポットワーカーetc.店によって差はあるが一般企業と比較して労働力は多様であり、働く目的、労働の価値観、スキルが多様であるし、問題意識の持ち方や課題に対する自発性、役割認識にも当然差がある。
日々の変化
飲食店現場の仕事はオペレーティブな業務を「主務」とする職種が多く、日々の変化も、昼・夜のシフトによっても違いがあり、またアルバイト・パートの入退職も他産業に比べて多い。
そうすると年1回、半年に1回のアンケート調査では事足りない・・・という性質を持つ。
大がかりなサーベイでは限界も
正社員を中心とした企業向けの汎用的な調査では難しい性格もある。
改まった「満足度調査」という仕立てで、設問数の多いアンケートでは「かえって本音が出づらい」や日常業務の視界とは距離感のある設問に「聞かれていることに該当しない」「質問がよくわからない」といった事態もあるだろう。
PDCAからPDCCへ
予防的活用
「仕事への熱中度合い」や「心の状態」を小まめに測定するエンゲージメントの特徴は、「予防的」活用である。
旧来型の満足度調査で設問数の多いものは「探査的」「分析的」であるのに対し、日々の心の在り様や仕事への集中度合いをシンプルに聞くエンゲージメントの場合、日時・ウィークリーでの変化を発見することを重視しており、「変化」「異常値」の発生=「現場で何かが起こっているかも?」という仮説⇒現場を見に行く・・・という予防的活用が可能だ。
マネジメントツール、店長育成としての進化
旧来、こうした日常の変化をウォッチするのは「店長」に業務の一環であっただろうか。
しかしながら、業務範囲が広く、必ずしも人事マネジメントについて教育を受けていない「店長」に一任すれば、それは「店長」のパーソナルな力量によって差が生まれるのは当然。
「売上は店長によって変わる」は事実として、エンゲージメントの予防的活用は、マネジメントスキル・経験差を埋め、支援し、また店長力を育成するツールとしても有効なはずだ。
PDCAからPDCCへの進化
PDCAはご存じの通りPlan(計画)-Do(実行)-Check(評価)-Action(改善)。これは普遍的に正しい概念と言えるのだが、本稿では、飲食店現場に向けた新しい考え方としてPDCCを提案したい

PDCAは実行した結果に対して探査的・分析的検証を行い合理的な改善プランを導き出すのに対し、PDCCはDo(実行)に対し実行者の感想や効果実感、負担感といった「心」をコミュニケーションによってヒアリングし、改善策のPlanと同時に実行者の負担や心の変化に対してCareを計画するという、人本位のPDCAサイクルである。
勿論、経験豊富な店長、マネジャーは上記を行っているのだろう。しかしながら経験の少ない店長、多様な人材がいる職場、慣れないデジタルツールを活用する・・・こうした職場で「PDCAサイクルを高速回転」や「KPIマネジメントの徹底」というスピード感、徹底した管理を優先させれば、それは従業員のモチベーション低下や組織状態の悪化に繋がりかねない。
トリドールの「心的資本経営」にみるマネジメントの進化系
トリドールの「心的資本経営」が実に興味深い。
よく言われる「人的資本経営」とは人材を「資本」とみなし、従業員のスキルアップや成長を支援、その価値を高めるための投資を惜しまない考え方。
では「心的資本経営」とは何か?
同社のWEBサイトには
人的資本経営をさらに深めて、「従業員の“心”の幸せ」と「お客様の“心”の感動」を共に重要な資本ととらえ、どちらの“心”も満たし続けることで唯一無二の事業成長を実現する経営思想です。
とあります。

戦略 | 経営理念 | 株式会社トリドールホールディングス
【人の心を動かす“心的資本経営”】従業員の内発的動機がカギ/変化する店長の役割/新たな役職は年収2000万円にも
YouTubeも沢山上がっています。
お客様と従業員の「ハピネス」と「カンドウ」が循環する「ハピカン繁盛サイクル」を基本に置き、とありますが、これは前述した会社―顧客―従業員が共感で結ばれる「共感経営」そのもの。
「ハピカンダッシュボード」・・・現下でDXが目指す一つのカタチ?
私が注目したのは「ハピカンダッシュボード」と呼ばれる店舗ごとに可視化される経営ダッシュボード。
売上、利益、客数、客単価といったデータに加え、従業員エンゲージメントスコア、顧客のエンゲージメントスコアがAIを使って可視化されています。
経営者や本部視点の「管理システム」としてだけではなく、店舗の組織コンディションや顧客の満足度、NPSなどが総合的に可視化され、従業員、顧客のためのシステムでもあるところが素晴らしい。

同社WEBサイトに掲載された図表
今や百花繚乱のレストランテック業界では、バーティカルの機能の充実と他領域のシステム連携が進化してきていますが、市場・顧客=エクスターナルマーケティングだけでなく、従業員・組織=インターナルマーケティングが統合されたシステムとして、現下で目指すべきUI、UXとは、こういう形なのかもしれません。

竹田クニ
株式会社ケイノーツ
代表取締役
早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。






































