
2023.07.21
老舗から本質を学ぶワケ。
酒井慎平の物申す!!皆さん、こんにちは。今回で9回目のコラムとなりました。最近は連日猛暑が続き、夏バテ気味になっていませんか。 暑さのあまり室内で過ごす時間が自然と増えてしまいますが、 近所のスーパーに行くと少しずつ夏が旬の食材が並び始めていて、その彩りに目を奪われてしまいます。
今は一年中、美味しい食材が食べられますが、やはり旬の食材は張りがあって鮮やか、そして安い。そんな旬の食材を堪能しながら、日本の四季を感じてみるのも良いかもしれません。
私は老舗の飲食店が好きで、20代の頃は昼間から一人で老舗を巡ってはその奥深さを噛みしめるようにゆっくりと過ごしていたものです。老舗には最新のトレンド店には無い魅力があります。当時は同世代から理解されませんでしたが、ここ最近は、20代30代の若い飲食オーナーが老舗に興味を示しアテンドする機会が増えています。
今回は、「なぜ今、若き飲食オーナーは老舗から学ぼうとするのか」というお話。少し考察していこうと思います。
皆さんは、老舗酒場といえばどこのお店を思い浮かべますか。また、好きな老舗はどこですか。私の老舗偏愛を語り始めると本が一冊書けてしまうので、今回は触りの部分だけご紹介します。
東京の呑兵衛なかではすっかり浸透した「東京3大煮込み」。「居酒屋大全」(1990年大田和彦著書)で提唱した北千住「大はし」、森下「山利喜(やまりき)」、月島「岸田屋」の3店舗の煮込みを指し、東京では有名な老舗酒場となっています。どのお店も永く培ってきた独特の雰囲気があり、暖簾をくぐると別世界が広がる名店です。
1877年創業の北千住「大はし」、1924年創業の森下「山利喜」は、1990年代に建て替えられて店内は綺麗になっていますが、やはり永く愛される老舗の凄みを感じることができます。
1900年創業の月島「岸田屋」は、戦火にも地震にも耐えた中央区最古の酒場で、近年の月島のタワマン建設ラッシュで店を閉じた老舗も多いなか、当時の趣をそのままに今も営まれています。熱気で萎れた短冊メニューや、お客の肘で擦り減ったカウンター、そして圧倒的な煮込み他、飾らない料理とお酒。100年以上続く老舗の所以を垣間見ることができます。
ここに、立石「宇ち多゛」、門前仲町「大坂屋」が加えた5店舗の煮込みが「東京5大煮込み」と呼ばれ、東京の老舗酒場の代表格として、昼間から行列ができるほどの人気店になっています。
現在、私が拠点としている長野にも良い老舗がたくさんあって、特に今は、夫が先立ち妻1人で切り盛りする酒場やスナックが、常連に応援されながら営みを続けているケースが目立ちます。おそらく、日本にはそんな老舗がたくさんあって、今のままでは10年先は残っていないかもしれません。しかし、そんな刹那的な情緒を味わえるのも老舗の魅力です。
さて、話を戻しましょう。今、若手飲食オーナーが老舗酒場から学ぶことは何か。恐らく「永く愛される」ことではないでしょうか。それを「本質」と解釈する方もいます。
ここ何年かでフードビジネスのトレンドが大きく変化し、数年ほどで初期投資を回収して儲けたら業態転換を繰り返す高回転型から、1店舗を永く続けていく継続型のスタイルにシフトしつつあります。
高回転型は、その時に瞬間的に流行っているトレンド要素を模倣すれば良いのですが、継続型ではそうはいきません。むしろ、瞬間的に流行りのコンテンツをパクったとしても、人気が持続しなければ長期的に顧客の心を掴むことはできません。流行りというモノは、得てしてそうやって一気に拡大しては消費され、短期的に消えてなくなってしまいます。
老舗には「永く人に愛される」要素が詰まっています。
冒頭で旬の話をしましたが、お店の旬を決めるのも重要なマネジメントです。食材の旬は一瞬ですが、飲食店の旬は作り手次第です。人気の老舗をめぐると、時の経過と共に成熟し、あたかも今が最も旬であるかのように思わせてくれます。
「永く人に愛される」ということは、ずっと人を愛したお店の証明でもあります。それは酒場に限らず、さまざまな業態でも同じではないでしょうか。これからも、人を愛し愛されるお店が生まれ永く続いていく事を願っています。



































