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2026.07.28

「chooseability」~【消費者の選びやすさ】という死角~

竹田クニのインサイト

「もう一品食べ/飲みたい」「少しだけ食べ/飲みたい」「もう少し安いなら…」
こうしたお客様の声は届いているだろうか?
省力化・省人化や、SNS友達化によるPUSH販促など、店側のメリットに目が活きがちなスマホ/モバイルオーダーだが、細やかなお客様のニーズ・ウォンツを掘り起こせるチャンスでもある。
客単価UP、皿数UPにつながる、お客様の「選びやすさ」について考察します。

chooseability=「注文しやすさ」+「追加しやすさ」+「組み合わせやすさ」

聴いたことが無い言葉かと思います。
言葉自体はchoose(選ぶ)ability(能力)を組み合わせた造語で、外食業界で通常使われている言葉ではなく、筆者が様々なセミナーを聴講・自身の講演資料作成の中で考えついたものです。(単語として正式に辞書等に存在する訳ではなく、造語としては認識・理解可能なようです)

「注文しやすさ」+「追加しやすさ」+「組み合わせやすさ」に繋がる要素

まず、飲食店の単価アップ、皿数アップ→売上向上に繋がるテーマをまず列挙してみます。

①キラーコンテンツの魅力アップ・・・これは今回のテーマ外のため省略

➁皿数アップ・・・サイドメニューの充実、小ポーションメニューを増やす

オプション的に選択できる小皿メニュー、小ポーションの料理・ドリンクは「もうちょっと…」「一品追加」に繋がる。
価格は必ずしも量に比例しておらず、量半分→価格は半分+αでも受け入れられる。

③価格バンド拡大・・・これまでのラインナップに加え低単価メニューを追加、逆にプレミアムメニューを追加

それぞれ王将、丸亀製麺Webサイトより

丸亀製麺の小うどんはボトムライン追加でお得な選択を残し、王将の新極王シリーズは「せっかくだから」に応える。

④パーソナライズ・・・ソースやトッピング、ポーションの選択肢を広げ魅力を増す

焼鳥IPPON

個人ごとにタレ・ソース、トッピングやアルコール度数を選べることは、多様なニーズ・ウォンツに応えるだけでなく、体験価値向上にもつながる。

⑤プライシング・・・時間で価格が変わるダイナミックプライシングや、〇杯飲むと割引など

時間ごとに価格が変動する形はデジタルならでは。

いわゆる「UI、UX」との違い

スマホオーダーの使いやすさをUI、UIを含めた体験価値をUXと呼んでいますが、この使い分けは曖昧で、UXをざっくり「注文体験」などと呼び、スマホ上の画面のリッチさや情報量といった観点に行くことが多いですね。

情報量やシズル感、デジタルならではの説明というのは、それはそれで大切なものと考えられます。

それに足して「chooseability」は・・・

といった、カスタマーにある追加オーダーの隠れたニーズ・ウォンツを掘り起こし、応えるというメニューのラインナップ、価格構成、ポーションなどの在り方を改めて定義する試み。
コラムを読んでいただいている皆さんも、ご自身の外食経験を思い返してみて、こういうニーズ・ウォンツってあるのではないでしょうか?

デジタルによる「補完・拡張」としてのスマホオーダー

旧来のヒトによるオーダーテイク、チビ伝運用でこうした“小回り”“メニュー数の増加”は、オーダーミスの増加やオペレーション負荷増加に繋がる可能性が高いが、スマホ/タブレットオーダーであれば、人為的なオーダーミスの可能性はゼロに近い。ダイナミックプライシングやパーソナライズはデジタルツールであるからこそ実現できる取り組みと言えます。
一方、調理の負荷増加、食材・食器類の増加は懸念されるが、店によるし、皿数UPという意味では少なくともプラスのチャレンジではある。

「いかにお客様の選択を誘発するか?」・・・スマホオーダーによる売上UPの本丸

スマホオーダーシステムの特性を生かして、いかに売上をアップさせるか?というテーマに対しては、「いかに消費者の選択を誘発するか?」が戦略的活用の本丸であるべきだと考えます。
お客様が、♪あ、それ食べてみたい!♪ちょうどいいサイズだね♪お、その金額なら注文してみようか!
こうした選択を生むメニューの統合的な戦略の一環としてスマホ/タブレットオーダーシステムを位置づけるべきなのです。

これが「chooseability」=「注文しやすさ」+「追加しやすさ」+「組み合わせやすさ」という新概念です。

飲食店の“思い込み”からの脱却

これまでの市場で支持されてきた・・・

  • コスパの良いセットメニュー

  • 次回来店のためのクーポン

  • 来店回数ポイント、サブスク

どれも一定数効果は見込めるものであり否定はしません。
ただ、これらの施策には「コスパ」「お得」感が強く、カスタマの深いインサイトに基づいたニーズ・ウォンツをくみ取っているとは言い難い。

都市部のニーズ・ウォンツを反映したデニーズの新展開

デニーズが都市部で「ひとりメシ」市場や女性客のフォーカスした展開がニュースになっています。

デニーズが「働くおひとりさま客」に見出した“可能性”、広報に聞いた“女性の声から生まれた”メニュー (週刊女性PRIME) - Yahoo!ニュース

選択肢が限定的だった従来のメニューに対し、サイドメニューや量少なめ、トッピング、ソースを選べるなど、細やかなニーズ・ウォンツに対応した取り組みだ。

現在の市場は、日常消費に関する節約・出費に警戒感が強い一方で、以前より機会が減った外食で思い切って…という積極さが同居。また、EC、デリバリー…と多様化した食体験は、自分好みのチョイスをしたいという志向を育てた。
飲食店の過去の経験則や、思い込みによるセットメニューだけではなく、ターゲットカスタマのインサイトに基づいた、「選びやすい」「追加しやすい」「組み合わせやすい」=chooseabilityの高いメニューの実現は、スマホ/タブレットオーダーシステムによって進化できる・・・そう考えています。

竹田クニ

株式会社ケイノーツ

代表取締役

早稲田大学商学部卒業後、1988年株式会社リクルート入社。HR事業、旅行情報事業の営業部長、じゃらんリサーチセンターで地域活性事業のプロデューサー、経営企画部中長期戦略室などを経て2011年に飲食情報事業のシンクタンクHPGリサーチセンター(現・外食総研)の初代センター長に就任。計29年在籍の後、2016年に独立し(株)ケイノーツ設立。現在は外食マーケティングのスペシャリストとしてマーケティング、消費者の価値観変化、生産性向上などをテーマに記事執筆、講演活動、フードビジネス関連企業のアドバイザリー・顧問、食のビジネスマッチングなど活動中。

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